「政策仕分け」によって政治に「余裕」を | 辻雅之のだいたい日刊オピニオン
なかなか更新できなくてすみません。元来、身体がよくないのですが、最近はとみに調子が悪くて困っています。

さて、

第2弾の「事業仕分け」が行われていますが、見ている分には、もちろん賛否両論あるでしょうが(渡しとしても、一部のものについての「仕分け」に納得がいかないものもあったりするものの)、おおむね評価できることをしているな、と思っています。

そのあたりは世論調査などにも反映されているように思いますが、確かに「~だと思う」という説明しかできない事業を国のお金でするべきではないでしょう。議会・市民に対する行政の「アカウンタビリティ(説明責任)」をしっかり求めていく方向で行われている今回の「事業仕分け」は、一定の評価をしていいと思っています。

もし、民主党政権がこの「事業仕分け」を重視し、当面の政策課題を「事業仕分け」一本に絞っていたら、今日の民主党政権に対する国民の見方もかなり変わっていたのではないでしょうか。

官僚の抵抗もあって、当初は3兆円の財源が捻出できるといわれていた「事業仕分け」の効果ですが、実際にはその3分の1にも及ばない状況。この成果を国民に提示して、「とりあえず捻出できたこの財源の範囲で、子ども手当や高速道路一部無料化をやっていく」という手順にしていればどうだったのでしょうか。

もちろん、「もっと仕分けをしっかりやれ!」という批判は出たでしょう。しかし、おおむねの国民は納得し、「よりいっそうの仕分けをして財源確保に努めてほしい」と考え、民主党政権を支持する方向に回ったのではないでしょうか。そしてその範囲で整備された子ども手当ならば、多くの国民はそれほど反対しなかったでしょう。

そして、民主党の人的資源をまずは「事業仕分け」に集中させることで、より成果は上がったかもしれません。しかし、一方で「事業仕分け」、他方で目玉政策の実現、これを一挙にやっていく、民主党政権はこちらを選択してしまいました。その結果が、「余裕」のない政治状況といえます。

民主党政権は、いまこれをしなければ日本がだめになる、というわけではない政策課題まで、「マニフェストの実行」ということを掲げて強引に解決しようとする。確かに1つ1つはそれなりに大事なことなのですが、それをすべて実現していこうというのには無理があります。

こういうことがあって、対決はすれども協調はしない与野党の状況が生まれ、そして機能しない国会。じっくりと一つのことに腰を据えることができずその場しのぎの対応に終始する政権。「余裕」のない政治プロセスは、政治そのものの機能不全につながっているように思えます。

外には世界的な経済危機、内には口蹄疫の蔓延、さらには韓国艦船の撃沈事件も重なり、これら多くの状況に対して鳩山首相は「余裕」をもった判断をしていけるのでしょうか。政権には今一度、いま何をすべきで、何は後回しにしてもいいのか、「余裕」ある政治環境を作るための「政策仕分け」をしてもらいたいところです。