中学を卒業して40年近く会っていない友人と再会した。

彼は中学時代は「ユニーク」を絵に描いたようなキャラクターで面白くて変わった男子だった。

ソビエト連邦を歌にして全部暗記したり、鉄道唱歌を覚えるんだと全て暗唱したり、般若心経も暗記したり、作文もクスリと笑える作品を書く中学生だった。

私は入学した中学に誰も知り合いがいなかった。

周りは小学校からの同級生がいて、中学のクラスにも馴染んでいたが、私は知り合いがいないこともあり、入学した頃は居場所がなくて、休み時間は教室の外に隣接していた中庭に出て過ごしていた。

毎日、知り合いもいない心細い私に、庭に出てきて彼が当時流行していた笑えるCMを彼の幼馴染じみと繰り返しマネして、私に笑いを提供してくれた。

私が思わず笑ったことが彼にとっては嬉しかったのだろう。それをきっかけに話しかけてくれて、気づいたら私は女子からも話しかけてもらうようになっていた。

私にとって初恋でも惚れていた訳でもないのだが、彼は私の恩人だったし、何やらいつも奇妙なことをしながらも頭が良くて、当時の私は面白い動物を観察しているような気分だったのだと思う。

大人になり、入学シーズンになると、時々、彼はどうしているかな、あの時の御礼がしたいと思っていた。

その話を、年に3、4回会う中学の同級生男女4人の集まりの際に話したところ、その中の男子が彼と連絡を最近取りゴルフに行ったという。

その男子に頼んでみんなと一緒に再会することになったのだった。

40年振りに再会した彼に私はかなり舞い上がってしまい、彼がよく歌っていた彼オリジナルのソビエト連邦の歌の話をしたら、彼は得意気に歌ってくれた。まさかライブで聴けるとは思わなかったので感動してしまった。

彼は彼のまま50代になっていた。

休みの日は、玄関出た門の段差に腰掛け、家族に批判されながらも、下着とパンツ一枚で煙草をふかしながら近所の皆さんと談笑する昭和の親父をやっているそうで、言われてみればどこから見ても昭和にいそうな親父になっていて、それが彼らしくて嬉しかった。

懐かしい話も沢山できて楽しかった。

でも、何故だろう。

帰り道、無性に淋しくて悲しくなってしまった。

また会うことはないだろうなと思った。

私が一方的に懐かしくて会ってもらったからだろう。40年も会わなかったのだ。

今さら会ったところで共通するモノは中学の思い出しかない。

それも一年生の時だけの思い出しかない。

「今さら会ってどーなんだ、だから何だ」

という気持ちになってしまったのだ。

きっと20代や30代なら違ったかもしれない。

50代の自分の感性が枯れていることを痛感した。

長すぎる空白を経た再会は、再会した瞬間だけが楽しいのだろう。

それと同時に中学のあの頃からやり直せたらと思ってしまったことも私を虚しくさせたように思う。


@辻井坂