銀座四丁目交差点にひっそり佇む竹葉亭。

そこの二階の座敷で生ビールをチビリチビリと呑みながら、まぐ茶をつつく。

ぼんやりと銀座の街並みを眺める。

私の至福の時だ。


社会人になった時、「世の中にこんな美味いもんがあったんかーい!」と思った一つが「竹葉亭の鮪茶漬け」。

通称、「まぐ茶」である。

学生時代には足を踏み入れることがなかった店。

私が社会人になった頃は携帯電話はなかったし、今のようにスマホで検索すれば美味い店の情報がいくらでも出てくる時代ではなかった。

私の実家は家族で鰻屋の名店に行くような家柄でもなかったからから本当にその美味しさに感動したのである。


確か社会人一年目の初出勤の日のランチタイムだったと思う。

職場の先輩がご馳走してくれたランチが竹葉亭の「まぐ茶」だった。

鮪の刺身に胡麻ダレが絡めてあり、一緒に運ばれてくる米飯の上に載せていただく。

半分くらい食べたら今度はお茶漬けにして食べる。

何度食べても美味しい。


今年の夏は訳あってどこにも旅行には行かない。

今週、夫と息子は遠征で旅気分を味わっている。

私は今週、仕事も家事も頑張った。

だから今日は会社帰りに「銀座の竹葉亭に行こう」と、思いついた。

生ビールとまぐ茶を目の前に夜の銀座を眺めながら、社会人になって初めて竹葉亭の2階の座敷でビールとまぐ茶を頼んだ日を思い出した。

「大人になったなー。私」と思ったことを思い出した。

会計時のレジ近くに「銀座百点」の8月号が置いてあったので貰う。

無料で配布されている冊子である。

銀座の和風タウン誌とでも言おうか。

この冊子に掲載されているエッセイを読むのもまた私の至福の時なのだ。

いつか「銀座百点」に私の文章を掲載してもらうことが私のささやかな夢である。


@辻井坂