舌がんがわかった時は職場にも親にも言わなかった。

同情されたり心配されたりが嫌だったから。

でも上司には言わざるを得なかったから舌がんになり手術することを伝えたら「大丈夫だよ」と開口一番に言いやがったのにはびっくりした。

まるで雨が降ってる日に「今日は晴れるよ、傘なくて大丈夫だよ」と言うみたいに軽かったし何の根拠があって大丈夫って言ってるのかと腹立たしかった。

舌がん経験者とか、癌を患っていた経験があるならまだ許せるが、もともと浅いというか会社の電話で子供の学校の先生に電話したり、保険会社にクレームするようなレベルの人だったから仕方ないとは思ったけど。

人間性ってこういう時に出る。

トンチンカンな人ってこういう人。

今、思えば彼なりに励ましたかったのかもしれないけど親友でもなく家族でもなく、私を昔から知ってて理解してる訳でもない人からの「大丈夫だよ」は無責任だと思う。

がんを宣告された時に思ったのは自分と周りの間に見えないカーテンが引かれたみたいな感覚だった。

自分が見えてた世界が周りが見ている世界と何かが違うような感覚。

元気になればカーテンを開けてもとの世界に戻れるのは今はわかるかのだけど、当時の私にはカーテンの向こうには二度と戻れないような気がしていたのだ。 

そしてカーテンに仕切られた空間で考えていた。

なぜ私はがんになったのか?

私の何がいけなかったのか?

これは天罰なんだろうかと。


@辻井坂