舌がんの再発、というか首のリンパに転移して

首を切除したのは前回も書いた通り。

一生残る傷が首にできたことは、とても恐ろしいことに思えた。好きな服も着られないんだなと思ったり、好きな人にどう見られてしまうのだろうとか、初対面の人は私の顔より先に首の傷に目がいくんだろうなとか考えた。

何度も書いたけど、命が危うい訳でもないし、日常生活に戻れるんだから、大したことないじゃん!と、この程度で助かったのだから感謝しなきゃと頭ではわかっていたし、受け入れなきゃと思っていたけど心がついていかなかった。

術後、食欲はなかったし、こんな傷ができるなら死んだ方が良かったんじゃないかとか考えたりして、そんな自分も情けなくて、気がつくと泣いていて。

日に日に落ちていく私を心配した先生が臨床心理士の先生を手配して下さって臨床心理士の先生が病室に来て私の話をただただ聴いてくれた。

私は淡々と話していたと思う。

自分の手術は大したことはないこと。

日常生活に支障はないのだから感謝しなくちゃいけないこと。傷もがんも受け入れなくちゃと思っていること。

話してる間はやけに冷静で泣くこともなく他人事みたいに話していた。

その時。先生が静かに私に話したこと。

「無理に受け入れなくていいんですよ。受け入れる前に受け止めることが必要なんです。でも受け止めるのもすぐにできなくていいんです。ゆっくりまずは受け止めていきましょう」

無理に受け入れようとしてたから苦しかったんだと思った。

気づいたら涙が止まらなかった。

健気に受け入れなきゃと頑張ってた自分を楽にしてあげようと思った。

苦しい状況を無理に受け入れなくていい。

無理に前向きにならなくていい。

焦らなくていいのだ。

まずは受け止めること。そこから始めよう。

そう思ったあの日の夜のことを今でも時々思い出す。


@辻井坂