【凶悪】 | ついてる男たち〜きっとリターン〜

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イサオの脱鬱コラム・映画批評&アツシのイラスト。きっと週1更新。

監督: 白石和彌
製作年度:2013年  製作国・地域: 日本  上映時間: 128分



【※ネタバレ含みます。知りたくない人は右上のバツを押すべし。】


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ある日、ジャーナリストの藤井(山田孝之)は、
死刑囚の須藤(ピエール瀧)が書いた手紙を持って刑務所に面会に訪れる。

須藤の話の内容は、自らの余罪を告白すると同時に、
仲間内では“先生”と呼ばれていた
首謀者の男(リリー・フランキー)の罪を告白する衝撃的なものだった。

藤井は上司の忠告も無視して事件にのめり込み始め・・・。




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「ぶっ込んじゃいましょ!」

事実を元にした作品って・・・恐ろしいですね。。
まさに凶悪な内容でした。

R15指定ですが、韓国ノワール映画にどっぷりな自分としては、
残酷さやグロ描写はそこまでキツくなかったな~というのが本音。

それでいて、作品の重さを際立たせたのは
メインキャストの3人によるところが多いでしょう。

リリー・フランキーのふわふわとした
サイコパスおじさんっぷりもさることながら、
この作品はやはりピエール瀧が秀逸。

本業はアーティスト【電気グルーヴ】にも関わらず、
この人が作中で発揮する存在感は毎度抜群。
良い人役でも悪い人役でも、とにかく顔が訴えかけてくるというか。

“顔で間が持つ”役者って、日本の男優には少ないと感じるんだけど、
「いい顔系の役者だなぁ~」と本作でまた実感しました。

で、映画好きなら彼を嫌いな人はいないんじゃないか?という
日本が誇るカメレオン俳優・山田孝之ね。

感情をあまり表に出さないジャーナリスト役。
こういう演技も出来てしまう。素晴らしい。
この藤井って役がなかなかクセがある人物で・・・

なんというか一言で表すなら「危うい」。

この危うさこそが、この映画の主題とリンクしているように感じました。
「凶悪」とは誰のことなのか??
これは須藤・木村だけを指しているのだろうか??

事件を追う中で、徐々に藤井の目的意識は揺らいでいく。

ジャーナリズムよりも自我が優先されていき、
上司の指示にも従わず、家庭を省みることもせず、
木村(リリー・フランキー)の家に不法侵入、さらには公務執行妨害。

「社会の為!」「正義の為!」

いつの間にか言葉とは裏腹に『自分の為!』の行動が続く。
須藤と木村を追い込むことが、アイデンティティ化していく狂気の中。
努めてポーカーフェイスを気取ってみせるも、
ラストに面会中、木村からそんな心の奥底を見透かされる・・・


「オレを一番殺したがっているのは・・・」トントンッ☆


面会室の間を隔てるガラスに、
木村の顔と、藤井の顔が重なって映る。
これは考えさせられる演出だなと重いました。

動機はともかく、自分の中に芽生えた確かな殺意。

また、無自覚にも家庭を押し付けた嫁の存在も、
彼は放置することで“殺して”いたようなものだと思う。

突き付けられた現実を、この後 藤井はどう処理していくんだろう?

ゴォーーーーーーンと山田孝之の顔面から画面が引いていく。
その表情からは“黒い意志”を感じました。

きっと彼は木村に死刑が求刑されるまで、追い続けるだろう。
社会の為でもなく、正義の為でもなく、自分の為に。
凶悪な意志に委ねて。


・・・さて。


柄にもなくYahoo映画のレビューのように
簡潔にまとまってしまったので、
ここからは完全なる蛇足レビュー。

この映画を観てると、きっと日本には見つかってない死体とか
沢山あるんだろうな~と怖くて哀しい気持ちになりました。

漫画【闇金ウシジマ君】の世界だよ。
でも絶対、これは都市伝説でもなんでもなく、
闇の世界ではさもありなんという感じなんじゃないでしょうか。

そして改めて考えさせられる死刑制度。

冤罪の可能性を考えると、慎重にならざるをえない問題だけど、
明らかに殺人罪が立証できた場合に限っては、
被害者の人数関係なく、死刑が求刑されて然るべきだと
個人的には思います。

これまた漫画【森のアサガオ】を読んだばかりの自分は、
色々思うところあってやるせない気持ちでいっぱいです。

・・・ということで、
いつもと同様にまとまりがなくなったところを見計らって
本文を閉じたいと思います。

わぁ~わぁ~言うております、お時間です、さようなら。


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次回、更新予定の映画タイトルは
【ビッグ・フィッシュ】です。



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すでに観た人、観てない人、
これきっかけで観てみ。