老人ホームにおける入居者(家族)からの訴訟 | 有料老人ホーム入居支援センター 代表理事 上岡榮信のブログ 「終の棲家通信」

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国内外合わせて1400箇所以上の施設を自分の目で確かめてきた「老人ホームの目利き」上岡榮信(うえおかしげのぶ)が、老人ホームのことはもちろん、国内や海外で出会った企業・組織・人などの印象深いお話を中心にお届けします。


 老人ホームにおける様々な不信感、不満、誤解、トラブルの結果は、事の深刻さ、重大さに関係なく、諦め、泣き寝入りがほとんどのようである。 


勇気?を持って重要事項説明書に記載されている苦情相談窓口に訴える入居者やその家族もいれば、消費者センターなどの外部の組織に出向いて不満や窮状を訴える人もいるのだが


 驚くのは苦情相談の担当者に入居しているホームの名称、住所はもちろん、自らの姓名、連絡先も明かさない方が多いと聞く。

何ともやりきれない気分に陥るのは私だけであろうか。 


 告げ口?をしたことがホームや関係者に知れて後々不愉快なことが起きたり、嫌がらせ、仕返し的なことを恐れる結果であろうか。 何とも救われない気持ちになる。 被害妄想ならばいいのだが当センターに片道3時間もかけて相談に見えて、別のホームに移られた男性の場合も


 ホームの担当者、その上司に事情を告げても何の改善もされず、自治体の窓口に出向いても契約当事者同士で交渉するように言われただけであったとのこと。


 たとえ後の祭りであっても真剣に傾聴し、何等かの対策、フォローをして欲しい。 実態調査なり事実確認なり、何か行動した上で、その結果を聞きたいのが消費者の本音であろう。


 改めて、ことが起きる前の対策、すなわち問題のあるホームには入らない、近寄らない予防が大切であることを痛感する。 実際、被害が起きたあとでの問題解決は現状回復に至る事は希であり、結果は期待したほどでなく、間違いないのは掛かった時間と費用は予想以上というのが実態ではなかろうか。 せめて溜飲が下がったとなればいいのだが。


 2010年の春から今日までに940回にわたりほぼあらゆる種類、グレードの老人ホームを見て、聞いてわかった事は、どんなに立派な経営者としっかり教育・訓練された職員が注意を怠らなくともホーム内外を含めて大なり、小なり、事故は起きているという現実である。


 どれほど手厚い人員配置をしても、24時間1対1でのケアや、見守りは不可能である事はお分かりと思う。


 しかしながら、事故が事件隣、訴訟にまで発展するか、否かは経営者の姿勢、考え方であり、その対応と日々の業務姿勢にあるということが分かった。 


 (余談だが、老人ホーム業界でも5%前後のモンスターファミリー?が存在するとも聞く)


 話は前後するが、訴訟の内容は件数的にはホーム内での転倒による怪我などが一番多く、ついで入居一時金とその償却と返還などの金銭問題と続くようだ。


 大抵の場合、事故直後にはその原因、理由にかかわらず、ホームの当事者,施設長などは不注意?を詫びるのだが、時間の経過とともに法人本部が対応することになるとホーム側の当事者は顔を出さなくなり、法務担当者や、弁護士が登場し、法律論議となり、被害者と家族の方はより感情的になり、時間、費用、結果にはお構いなく訴訟、裁判沙汰となる。



 その判決の例では、米国でも、日本でも入居者、家族側の勝訴の方が多いそうだ。心身の虚弱により、事故はおきても、訴訟に至らないホームも数多くあり、その共通点は普段の経営者、職員、全員が真剣に入居者、ご家族に向き合い、その声を傾聴し、手を抜くことなく、真摯に、遇直にお世話をされていると、何が起きても、裁判沙汰にはいたらないのである。



 本来、日本人は訴訟ごとなど苦手であり、避けたい民族だと思うが、そのためには君子危うきに近寄らずで、ホームの経営者と職員の日々の言葉、行動から慎重に探し、比べ、選ぶことが最善の策である。 



2614-3-06


 次回は、『 ここまでやってくれるホームもある 』