またひとり
昭和の気骨ある親父が
他界しちまった。
新聞のお悔やみ欄で朝イチに知り
昼前にはと急いで支度し
親父の家へ。

奥さんの顔は悲しみでやつれ
その悲しみは嫌でも判るほど
日が陰っていた。

葬儀までは時間が空いている

ベッドに横たわり
痩せちまったけど
今にも眼を開けて
ムクリと起き上がりそうな
その亡骸に今迄の思い出と
これからの決意を誓ってきた。

遺族に
マレットゴルフの時の
親父の事を話した。

過去
幾多の遺族とも話をしたが
異口同音
マレットゴルフ時の
故人の動向は
知らないものだった。

口伝でも遺族の
癒やしになればいいかと…


自分も思い出を辿りながら
親父を語り偲んだ。



去り際に
親父のスティックを
どうするか聴いた。

棺に入れたいと言う。

金属類は基本
NG
スティックは無論
金具がついているものは
駄目なことを知らせた。




それを見越して
木製のスティックを
差し上げた。

遺族の皆さんは
喜んでくれた。

このとき不思議な
経験をした。

親父のスティックを
手にした瞬間
「このスティックは
カミさんに使ってもらいたい
荒聖、グリップを
直してやってくれ」

頭の中に閃光のように
声が響いたんだ。

以前 これと似たような
まだ 薄ぼんやりだけど
経験をした事があった。

だけど 今回は
こんなにハッキリと
意思が伝わって来たのは
初めてだ。

霊感なんて持ち合わせて無い

親父の強く家族を
思いやる意思が
伝わったのだろう。


悲しくも
強く、熱い
想いを感じた日だった。






親父さん やすらかに。

合掌

荒聖