予想していた内容と違っていたので、
上巻を読み終え、下巻の途中まで
もの凄くしっくりこない作品でした。
しかし、物語が訴えていた部分は
私が考えていたものよりも
ずっと深く文章の隅々にまで滲みわたっているようです。
発酵食品の豪華本を作る過程で見えてきた
『発酵』の営み、
その奥深さがそのまま物語として成り立っている。
一言でいえば
『そうなるようにできている』
でしょうか?
確かこの言葉、さくらももこ氏の作品の題名だった気がします。
この題名を見た時とてもしっくりきた感触がして、
この『にぎやかな天地』を読み終えた後、
思いだした言葉です。
私が学生の頃、こんな疑問を抱きました。
『人に感謝するってどこまで行けばいいんだろう?』と。
例えば、もの凄く困っているときに助けになってくれた人がいたとする。
その人に恩返しをしたものの、その人が私を助けてくれたと言う事は
その人を産んだ親にも感謝しなければならないのではないか?
もっと言えば、その人を取りまいてきた環境、出会ってきた人々、
その感謝の螺旋はどこまでも際限なく掘り下げられ、
最終的には、『全て』に行きついてしまう。
しかし、そうはいっても『全て』に恩返しなんてとても出来ない。
ならば、私はその程度しかその人に感謝していないのだろうか?
と。
極端な考え方ですが、
この小説にはこれに対する答えの一つが書いてあるような気がしました。
私がこの本で一番印象に残ったのは
カメラマンの子供が産まれた後の彼の言葉です。
『ヌードになってるねーちゃん達がみな赤ん坊にみえる』
なるほど。
と膝を打ちました。
ヌード写真の大半が性的な意味合いを持っている。
けれど、赤ん坊は裸だ。
赤ん坊に性的な意味合いなんてない。
裸であると言う事は赤ん坊と同じであり、
性的な意味合いなど感じない。
まるで悟りを開いてしまうかの境地ですが、
実際、そう考えると性的な部分を感じないどころか、
むしろほほえましい気持ちにすらなってしまいます。
歳を重ねれば当然、
腹は出て、二の腕はたるみ、皮膚に張りがなくなってくる。
体に癖が付きどこかが歪んだり、どこかが痛んだり、
傷やシミが増えて行く。
けれど、見たいか見たくないかは別にして、
そういった体を持った全ての年代の人々の裸というのは、
美しさがあると思います。
けれど、お風呂上がりに自分の裸を見ると
やはり、鍛えてある人の腹筋などと比べてしまって
ちっとも格好良くない。
そんな体を持つ自分が少し恥ずかしさを覚えてしまいます。
でも、だからこそ、
『そういうふうにできている』
のだと思います。
何百年も続いている発酵食品を作っている会社であっても
その菌の動きを全て把握しているわけではない。
良く分からないながらも、気温を湿度を、その時々によって
調整しながら素晴らしい食品を作り続けています。
その良く分からない部分がまさにこの本の題名である
『にぎやかな天地』であり、
それは発酵食品だけではなく、この世の全てに当てはまるのだと
思います。
にぎやかな天地(上) (講談社文庫)/講談社

¥660
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にぎやかな天地(下) (講談社文庫)/講談社

¥660
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上巻を読み終え、下巻の途中まで
もの凄くしっくりこない作品でした。
しかし、物語が訴えていた部分は
私が考えていたものよりも
ずっと深く文章の隅々にまで滲みわたっているようです。
発酵食品の豪華本を作る過程で見えてきた
『発酵』の営み、
その奥深さがそのまま物語として成り立っている。
一言でいえば
『そうなるようにできている』
でしょうか?
確かこの言葉、さくらももこ氏の作品の題名だった気がします。
この題名を見た時とてもしっくりきた感触がして、
この『にぎやかな天地』を読み終えた後、
思いだした言葉です。
私が学生の頃、こんな疑問を抱きました。
『人に感謝するってどこまで行けばいいんだろう?』と。
例えば、もの凄く困っているときに助けになってくれた人がいたとする。
その人に恩返しをしたものの、その人が私を助けてくれたと言う事は
その人を産んだ親にも感謝しなければならないのではないか?
もっと言えば、その人を取りまいてきた環境、出会ってきた人々、
その感謝の螺旋はどこまでも際限なく掘り下げられ、
最終的には、『全て』に行きついてしまう。
しかし、そうはいっても『全て』に恩返しなんてとても出来ない。
ならば、私はその程度しかその人に感謝していないのだろうか?
と。
極端な考え方ですが、
この小説にはこれに対する答えの一つが書いてあるような気がしました。
私がこの本で一番印象に残ったのは
カメラマンの子供が産まれた後の彼の言葉です。
『ヌードになってるねーちゃん達がみな赤ん坊にみえる』
なるほど。
と膝を打ちました。
ヌード写真の大半が性的な意味合いを持っている。
けれど、赤ん坊は裸だ。
赤ん坊に性的な意味合いなんてない。
裸であると言う事は赤ん坊と同じであり、
性的な意味合いなど感じない。
まるで悟りを開いてしまうかの境地ですが、
実際、そう考えると性的な部分を感じないどころか、
むしろほほえましい気持ちにすらなってしまいます。
歳を重ねれば当然、
腹は出て、二の腕はたるみ、皮膚に張りがなくなってくる。
体に癖が付きどこかが歪んだり、どこかが痛んだり、
傷やシミが増えて行く。
けれど、見たいか見たくないかは別にして、
そういった体を持った全ての年代の人々の裸というのは、
美しさがあると思います。
けれど、お風呂上がりに自分の裸を見ると
やはり、鍛えてある人の腹筋などと比べてしまって
ちっとも格好良くない。
そんな体を持つ自分が少し恥ずかしさを覚えてしまいます。
でも、だからこそ、
『そういうふうにできている』
のだと思います。
何百年も続いている発酵食品を作っている会社であっても
その菌の動きを全て把握しているわけではない。
良く分からないながらも、気温を湿度を、その時々によって
調整しながら素晴らしい食品を作り続けています。
その良く分からない部分がまさにこの本の題名である
『にぎやかな天地』であり、
それは発酵食品だけではなく、この世の全てに当てはまるのだと
思います。
にぎやかな天地(上) (講談社文庫)/講談社

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