久々に。

信頼の浅田次郎。
けれど、あまりホイホイと手を延ばしたりせず、中原の虹の続編、マンチューリレポートの文庫化を静かに待っていたところ、こんな話を聞きました。

その人はもう定年近い年齢で、小説を卒業していたらしいんです。
けれど、ふとした事で読んでしまった浅田次郎で再び小説の世界に足を踏み入れたらしいのです。

その作品がこの天切り松 闇がたり。

書店で見かけるものの別に興味を覚えるでもなく通り過ぎていたこの作品。

けれど、そんな話を聞かされたら読まずにはいられません。

すぐに書店へ走り、一巻を購入。

読む時間が余り確保出来ず、暇をみては読みの繰り返しで二三週間かけてようやく読み終えました。


楽しみな小説はあらすじを読まないのでどんな話かもわからず、現代の日本で老人が牢屋に入れられるところから物語は始まります。

あとは作者の良いようにあしらわれ、心地良い小説世界へと旅立ちました。


古き良き時代と言いますが、今はもうないものへ対する憧れだけが、そう言わせるような気がします。

その時代時代に良いものがあるはずなのに、ノスタルジーにはなんとも言えない、そそられる匂いがあるように思えます。

要はその時代の苦い部分を包み隠さずあらわにしてしまい、それでもなお、今では失われてしまったようなものに自身の知らなかった心の琴線を見付け出す。

その発見に感謝と感謝したが故の手にとって確かめられないなにがしかをそっと心の余白において行ってくれる。

そんな物語。




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