何気に初夏目漱石です。
学校で一部を読んだ事はあるものの、そこからきちんと読み直した事はなりませんでした。

昔のものはなかなか読みにくくて手が出ては引っ込め、
引っ込んだらそのまま。という取り返しのつかない場所へ行ってしまいがちだったので、
ひたすらに敬遠していました。

しかし、
これまた恥ずかしながら、
『智に働けば角が立つ。
情に掉させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。・・・・・』
という文句がこの草枕の冒頭だとは知りませんでした。

しかも、こんな調子で明察が進んで行くもんだから、
はっきり言って戸惑ってしまいました。

しかし読み進めていくとこれがもう言葉の豊穣、氾濫。

絵描きの話だからそう思ったのか、
一文を読み進めるごとにキャンバスにざざっと一筆で色が付けられていく。
もう一文読むとそこにさらに一筆加わり、
一段落読み終える頃には鮮明な一場面として完成されている。

一文の切れ味、一段落までの形式が描かれていく過程、
そして、鋭い洞察が為せる一つ一つの言葉の推敲。

あらすじにあった『東洋趣味を高唱』というのを読み切る事は出来なかったが、
それでも十分衝撃的な内容だった。

パラパラとめくり、
目に付いた文章と戯れる。

そんな読み方にも適している本ではないだろうか。

本文でもそのような読み方をして戯れる場面は、
この草枕もそのようにしてよんで見てくれと言う漱石氏のメッセージなのでは
ないかと勘繰りたくなる程だった。


流石、千円札になるだけはある!と
なんだか見当違いのような感動の仕方をしてしまったが、
意外と顔は知ってても、小説は読んだ事がないという人が抱く感想は
こんなものなのかもしれないなと
あまり好ましくない納得をしてしまった。


草枕 (新潮文庫)/夏目 漱石

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