岡本太郎とそのパートナーだった敏子の自伝的小説。

とは言っても、言われなければ気付かなかったかもしれません。
ただ、読んで行くうちに主人公からみた恋人が著者からみた岡本太郎なのだと腑に落ちた。

二人が交わる場面が生々しく描かれているので、ただの愛の物語かと思いきや、そこは流石の二人。

何度も描かれるその描写を読んでいると、ただ事ではなくなってくる。
惰性だとか快楽だとか愛とかはあるだろうけど、そうじゃない。
生命力のぶつかり合い。
事後の状態を「果てた」と言うが、その果てがまるで見えない。時間的な長さではなくて、原始的なエネルギー、体力とかではなくて気力、魂の力は漲るばかり。

が、それも長くは続かない。
恋人は死んでしまう。

けれど、主人公の悲しみはそれまでのやりとりからは想像も出来ないほどカラリとしている。
死んだだけでいなくなった訳ではないから。

正確ではないがこんなセリフがある。
「あの人は今もきっと私を見つめている。でも、私からは見えない。だから、しゃんとしてなくちゃいけないの」と言う主人公から清々しい程の笑顔がこぼれているのが容易に想像できる。

恋人がいなくなってからの彼女の姿勢、そして、それを取り巻く人々、そして、もはや大空の価値と等しく、存在の純度が昇り詰めてしまった彼。

巻末のよしもとばななとの対談で著者は言う。

若い女性に読んで欲しいと。


読み終えても、相手がいない、そんな性格じゃない、こんなのただの淫乱じゃあ?と思う人も少なくは無いと思う。
であればこそ、その反発心は行動となり自身に対して素直であり、死と向き合う準備が出来たと言ってもいいのでは無いかと思う。


仮に手に取る事があれば、本文はなんなら読み飛ばしても構わない。
その代わり、対談の後に書かれたよしもとばななが思い出す著者の逸話を読んで見るのが手っ取り早い。

まずはそこから。
かもしれません。






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