2011年締めを飾った一作。

良くも悪くも目に付く感想に力があったので、
面白そうだと思って読んでみた。


ストーリを追うことで全体が見渡せるようになってくるのが
小説のひとつの魅力であることは言うまでもない。

この作品にあるのはそれだけだと言ってもいいかもしれない。

目を覆いたくなるほど凄惨な場面が脳裏に焼き付き、
その空気が作品全体に充満している。

息子の失踪から始まるこの物語ではからりと乾いた太陽の匂いはしない。

それで嫌な気持ちになる人も多いだろう。

けれど、嫌な気持ちになってしまうにはこの小説は惜しい。

物語が面白いのではなくて、
物語を紡いでいるその方法そのものが面白いのだと思う。

と言っても、別に難しい読み方を期待されているのではなくて、
ただ読んでいるうちになぜだか引き込まれていく。

内容に心痛める場面が出てきたとしても、
それはスパイスでしかない。

そこに狡猾な著者の罠がある気がする。

解説にも書かれているが、
最後のシーンの解釈だけは私は同意ができなかった。

その部分での解釈をどうするか、
それこそがこの著者が問いかけたかった部分なのかもしれない。

パラパラとめくっていて思ったのが、
この本の表紙。
古い?ダサい?
いや、違う。
多分・・・・・。


そう思うと、すごいなっておもう。



九月が永遠に続けば (新潮文庫)/沼田 まほかる

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