読み終えたとき、抱いたのは


冒頭から至るところで記述された、アフリカの大地の鮮明さが
この物語の全てであったと。

『一度アフリカの手に抱かれたものは、
それからどんなに遠くに行っても生きている間に
必ずもう一度アフリカの地に戻ってくる』

という言葉が示すのは一体何なんだろうと、
その土地についてのイメージを、空気を、音を想像する。


ノンフィクションの部分もあるこの物語は
この先はどうなるんだろう?と途中でやめにくいし、
それは面白いと言う事になる。

けれど、読み終えたときに残るものは
その結末に至るまでの人間ドラマの成果
と言うわけでもないような気がする。


それはあまりにもアフリカの景色が原初的であり、
私たちの祖先がやってきたという遥かな土地に対する望郷の念であり、
宇宙に浮かんでいる地球、その地球の『始まりの場所』としての力強さ。

そういったものが、物語を食うほどに印象的だ。


だから、私の中で後半のある時期から物語は、主人公の態度は
アフリカと溶け込んだような気がして、筋自体はそれほど気にしなかった。

筋を気にしない小説なんて小説ではないと言う事にも
なりかねないが、そういう読み方も出来る小説なんてあるんだと
素直に自分の抱いた感想に驚いたりもした。


広大な大地の中でもがく人間達は滑稽に見えてもいいはずなのに
そう見えない。
気候に、金策に、同じ人間に翻弄されながら、一歩、せめて半歩、
時には歩みを止める事で物語は進む。


非常に多くの事が詰め込まれていて、
そのどれもが考えさせられるものを持っている。


それは『遊び』の考え方であったり、
人との付き合い方であったり、
外来の植物を根付かせることであったり、
部族間の対立、
建築作業の過酷さ、
酒の飲み方であり、
自分の立ち位置だったり。


今回はたまたま旅熱がぶり返してきていたところからの
本書だったので、アフリカに行きたい!!!
という強い願望がそんな感想を抱かせたのだろう。

けれど、これが他のタイミングだったら、
またきっと全く違う感想を抱いているに違いない。

恐らく私はまだアフリカには行けない。

だから、本書をかりそめのアフリカとすることにした。

だから、私はこの本にいずれ戻ってくるだろう。

その時どんな感想を抱くのか。
それが楽しみ。



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以下のリンクは凄いネタバレの可能性を秘めていますのでお気を付けください。笑。
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