まいった。突然消えた。

でも、まぁ、仕方ない。

違う感じで書こう。

パイロットという職業はより死に近い気がする。
それは当然と言えば当然だろう。

人ならざるモノを駆使し、異常な速度で天空を駆る。
怒る全ての事柄が重力に比例して、全てが大事になっていくのではないだろうか。

地に足を付かず、飛ぶ事で安定を得るという極めて異常な状況下で
彼らは境界線を引いている。生きる事と死ぬ事に。

その濃い線引きは恐らく彼らには見えない。
感じながらも見ない。

しかし、一度降りかかった何事かがそれを目の前に突きつける。

そして、逃げられない。


最終章の遭難した場面が一番印象的だった。

どんなに乾いても、私には
『舌が石膏のように』は感じないだろう。

昔、インドで脱水症状になりかけたのが最大の乾きだったのではと思いだす。

あの時はコップ一杯に水で人を殺せると思うほどの元気はあったのだ。

けれど、著者は砂漠のどこかも分からないところで、
残りの水もなく、どこへ行けばよいかもわからない中で、
発狂もせずに自分の死を見つめている。

その理性の強靭さに私は恐怖すら覚えた。
おそらくこれが、『畏敬』という感情なのだろう。

言葉では知っていたけれど、
対象を持って使ったのは初めてかもしれない。


紹介が遅れたが、この著者について。


誰もが聞いたこと位はある『星の王子様』
その著者がサン=デグジュペリだ。

この本はパイロットである著者の思い出をつづった短編からなる。

しかし、全編にわたって感じられるのはただの思い出ではなくて、
人間賛歌ではないだろうか。

そして、言葉にされた宮崎駿アニメと言ったところだろう。

歯車に蒸気、油にシャフト、顔に付いた汗を拭えば油が伸びる。
たいていの機械はオンボロだけど、愛着と信頼に守られて、
ギリギリで息を吹き返す。

その雰囲気がこの小説?から感じ取れる。

表紙も宮崎駿だし、解説にも出てきている。

けれど、宮崎駿の解説は読んでいない。
だって彼はこの本から受け取ったものを間違いなく映画で表現しているのだから。

読む場所と、読む時間が違えばまた違う表情を見せてくれそうな気がする。



人間の土地 (新潮文庫)/サン=テグジュペリ

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