さすが東野圭吾。

まったくもって暑さが気にならないほど面白かった。

主人公の一人を見ていると、『徹底』とはこういう事なのだと思ってしまう。

それがたとえ犯罪だろうと、目的のためならば手段は選ばない。

法治国家であるが故にそれは秘密裏に行わなければならない。

一見華やかであったり、退屈であったりする日日の中に一体

幾星霜の思いが錯綜している事か。

自分がのんびりと平和?に暮らしている事は

ほぼ間違いなく奇跡であるだろう。

その奇跡を怠惰に過ごしてしまっているのはもはや罪であるし、

その罪とは自分を台無しにしていることに他ならない。


仮に縁が眼に見える糸であったなら、彼女はその糸を操る

蜘蛛なのだろう。

そして、交尾が終わったら頭を食らう

カマキリなのだろう。

その先になにがあるのだろうか?

彼女の全てが満たされた時

彼女は一体何者なのだろうか?

自分が自分として完成した事に満足を

覚え、それを維持していく事なのだろうか?

いや、そうとも思えない。

きっとこの先彼女は自滅に近い形で、

人生を終えてしまう。

しかし、東野圭吾の事だ。

最後の最後で、彼女は人を愛してしまうのではないだろうか。

いや、そんなチープな展開にはならないか。笑。



幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))/東野 圭吾

¥1,000
Amazon.co.jp