後継者はどこに?

あくまでも彼の歴史を追いながら、政界との関わりとに焦点を置いたドキュメント。

現在の年号も彼の意志如何にかかわらず、彼が産み出したものである。

政界の黒幕と言われ、この本の副題からもわかるように『教祖』として、

表舞台に立つ事を選ばず、人を育てることに専念した大人物。

ただ、彼の学識の高さ、教育と言うのは活かされているのか活かされていないのか、

現在の政界を見ているとさっぱりわからない。

鳩山一郎などは彼との接触をあまり行わかったらしいが、

それが先の首相の危機感の無さにつなげてしまうのは浅はかだろうか。


この本の中ではあくまでも安岡その人の生きてきた道をたどっているにすぎない。

数年前TVに出ていた細木和子と晩年に置いて大恋愛をしたと言うが、

それは真に連らいだったののか、それとも、堕ちてしまったのだろうか。

だが、彼の持つ言葉と言うものは現在も生きている。

それを実践していくのは生半可ではないが、

教育と言うのはそういうものではないかという考えには厳しさと優しさの両立が見事に相まっている。


けれど、安岡はとても優しい人間だったのではないだろうか?

なんとなく本書では、その人物像にむなしさを読ませるが、

教育者として徹底できなかった部分があったのではないだろうか。

彼の残した言葉の数々は本当に素晴らしい。

けれど、その本当の意味をわからないまま、弟子と称し、懐に入り、『お札』の代わりとして

扱われていた部分も否めない。

所詮、政治家には憂国の士はいないと言う事なのだろうか?


それにしても、角栄は良い。

本書で語られている角栄の安岡に対する態度はなんとも角栄らしい。

意外とあの世じゃ二人して酒でも酌み交わしているんじゃないかとも思ってしまう。




安岡正篤―昭和の教祖 (文春文庫)/塩田 潮

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