伊勢神宮と言うよりもこの著者がすごい。


常に己の立ち位置を見定めるような切り口にはゾッとさせられるものがあります。

知性のキレとでもいうんでしょうか。
気づかないうちに次に書かれている事を想像してしまうようにリードされている気がします。

下手に伊勢神宮を聞きかじった人間の書いたものよりもずっと広く深い洞察がこの本では得られます。

モダニズムと伊勢神宮の簡素さ、清潔さ。

時には、みすぼらしいとまで言われた建物が時代を経る事によって、その解釈が180度変わってくる。

こうやって、伊勢神宮にまつわる歴史を俯瞰すると、だれも何にもわかっちゃいないんじゃないのかと
疑いたくもなります。

何よりも、ブルーノ・タウトによってその価値を再発見したというのには、見事なまでの西欧への憧れとというか、なんというか・・・。

それを構成の人間がしたり顔で日本の誇る建築だと二番煎じに恥じることなく声高に叫ぶ。

だが、振り返ってみると、なんとなく違う。なんとなく、時代に合わせて解釈しているだけ。

つまり、伊勢神宮の本質には届いていない気がする。

茶室と伊勢神宮の関わりを見ていくと、共通するものが見受けられる。
そこで著者は素晴らしい余韻を残して、過ぎの話へと話題を変えてしまう。

逃げられた。
それが正直な感想。

伊勢神宮たるものがあってこそ、茶室=数寄屋建築というものが出来上がったという見方があるが、
本当は逆なのではないか?

そう提起する。

恐ろしい。
世界は広すぎる。

伊勢神宮 魅惑の日本建築/井上 章一

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