ふとこんな世界を思いついた。

少しだけいつもより『足りない』世界。


いつもあるはずのものがいつもの場所に無い。



例えば、ある女性がいつもの朝、同じようにホームに立って、いつもの電車を待つ。

でも今日はなんか違う。

いつもと同じ場所が分からない。

目の前の看板も眼に映る歯医者のものだったような、その左の古美術買い取りの目の前だったような。

いつもあるはずの扉位置が今日は無い。

しばらくして、電車がやってくる。

やはり、少しだけずれて、乗る順番が遅くなった。

一番に乗り込んだのは眼鏡をかけたサラリーマンだった。

次の日も次の日も、ずっと扉位置の表示は戻らなかった。

彼女はいまいち気にしなかったせいか、いまいち乗車位置がずれていた。

一月も過ぎると、あのサラリーマンの後ろに列ができていた。

彼女もここ最近彼を見つけることにしている。


不定期に3/4の世界は訪れる。


その日の朝、扉位置の表示が戻っていた。

でも彼女はサラリーマンを探した。

でも、彼は見つからなかった。