昨日は朝からてんやわんやの大騒ぎ。水のせいで。
2月に入ってからフランスは雨続き、南西部と北部で水害が発生した。私の家から20kmほど西を流れるロワール河も増水し、堤防ぎりぎり、あと5mほども水位が上がれば氾濫しそうな勢い。パリでもセーヌの河岸の道路が水没したとか。
幸い私が住む田舎は土壌が粘土質で雨が続けば靴底にこびりつく欠点はあるものの、水害の危険はないと安心していた。
私の村をロワン川という小さな川が流れている。この川はヨンヌ川の支流で、ヨンヌ川はパリの60km上流でセーヌに合流する。
ヨンヌは県の名前にもなっているが、セーヌより水量が多いので本来パリを流れる川もセーヌでなくヨンヌ川と呼ばれるべきと言われている。
ロワン川は数年前下流で氾濫したが、私の村は水源地に近く川幅は5mにも足りない。水位が増して泥で濁った水が勢いよく流れてるが氾濫の気配はない。
近年になりフランスは気候変動の影響をもろに蒙り、冬も暖かい南仏、地中海沿岸のコートダジュールなんか憧れの的だった土地に水害が増えている。
少し内陸部に入った山の多い土地では土砂崩れが頻繁に起こっていて、うかうかとこの辺の家を買うと大変な目に遇いかねない。崖っぷちに立ってる家なんかは朝起きてドアを開けたら足元が空中に浮いてるなんてことがたびたび起きてる。
また大西洋岸では海の水位の上昇で波が海岸の土砂をどんどん削り、あと何年かすると敷地面積が数十平米減るなんて悔やんでる人が増えた。
ここは、水の被害からは免れてる。危ないのは原発だけか、と思ってた。ところが……。
数日前から壁を隔てて水の流れに似た音が聞こえ始めた。
家の中に水漏れの個所はないので、すぐに対処はしなかったのだが、朝まだ寝てるうちから音が激しくなった。さらさらという流れの音に混じってゴツンゴツンと個体がぶつかる音がする。ぼこぼこと湯が沸騰する音にも似ている。もしかしてボイラーの異常か? それとも、熱くなり過ぎと感じてた温水器の異常か? 円筒形の電気温水器が沸騰して破裂したらおおごとだ。
万一を考えてバスタブに温水を流し水温を下げ、朝風呂に入ることにした。カミサンは毎朝シャワーを浴びるので、私が風呂に入ると温水が足りなくなり途中で冷水に変ってしまう。緊急だからと納得してもらって風呂に入った。
ところが水が流れる音は相変わらず続いている。しかたなく裸の上にガウンだけまとって地下室にある水道の元栓を閉めに降りた。外気はマイナス7℃で長時間は耐えられない。
水漏れがないかもう一度、台所と洗濯場を確認したがどこにも漏れた形跡はない。元栓を閉めて風呂場に戻り、熱い湯に身体を漬けた。洗うか洗うまいか? 蛇口をひねっても水は出ない。結局洗うことに決め身体と頭を石鹼で洗い、バスタブの湯を両手で汲んで濯ぎ洗いをした。
風呂からあがって耳を澄ますと水の流れる音は止んでいる。やっぱり元栓を閉めたのがよかったのか、とほっとした。
ところが5分と経たないうちにまた流れの音がしだした。ゴンゴン、ゴツンと個体がぶつかる音も混じっている。
いったいなんなんだ? この音。10年以上この家に住んでるけど、こんな音初めてだ。下水管が台所から公園まえの県道に向って走ってるので、どうやら下水管に流れ込む音のように聞こえる。
路地の太い水道管からウチの敷地内に引き込む細い管があって元栓に届く間で漏れてると面倒だなと思う。工事が大掛かりになるし、責任は市にあるのかウチにあるのか? 保険は元栓から下流の家の内部だけに掛かっている。
壁に耳を当てると音がよく聞こえる。どうもこの音は上水道管から地中に漏れ出てる水の音じゃないな。もっと太い下水管に流れ落ち、石ころや土の塊を押し流してそれら固形物が下水管の壁に当たってゴツン、ゴトンと音を立ててる様子だ。
カミサンはロワン川から流れ込んでるんじゃないか、と言う。水流が激しくなって排水管を逆流してるんじゃないか?と。ただロワン川はウチより低い所を流れてるし、ここまで逆流するとは考えられない。
ウチより高い位置から流れ込んでる筈。とするとウチより高い位置にある道路、その両側に並ぶ民家、最近工事したばかりの家が4・5軒あるのでそこからかも。あるいは500m位もっと遠くで上にあるシャトーの池と小川が増水したので堰を開けて流してるのかもしれない。ときどき止まるのは堰を閉めるからじゃないか?
まてよ、あることを思い出した。4・5年前、お隣さんと会話を交わしてると、ウチの庭にシャトーと繋がる地下道が通ってるの、と言うのを聞いたことがある。とても興味深い話だった。
もしかすると、この水音はその地下道へ流れ込んでる音かもしれないな。
