ね
60分一本勝負の中に、相当の分量の歌が入っているので、
正味はかなり短い。
事実、複雑なストーリーはまるでないし、
イベントも事件も全く起きない。
ただ、
とにかく内向きで面倒くさい少女という群像。
それらの存在の殆ど全てが思っているであろう、
自分は特別である、
自分は特別でありたい、
という思い込みや思いが、
キリキリと胸に刺さって来て抗えない。
田舎の田んぼ道を、
先生と少女が二人で下校するシーン。
夢の話。
大好きなことの話。
何でもないこの一瞬が、
実は人生のすべてのような気がする。
どうしても先生目線になって見てしまうのだが、
先生の振る舞いや言動から、
その秘めたる気持ちが良く分かる。
それは自分の思いと同じ形をしていた。
だからその気持ちを見抜いている少女が、
ストレートに言葉をぶつけてくるシーンが、
痛く切ない。
きっとこんなやり取りが、
世界中にあるんだろうと想像する。
そして先生は、
みんなこんな風に、
身を捩っているに違いない。
少女はやがてそんな先生に失望して大人になる。
その瞬間の美しさと生々しさがたまらない。
エンディングの街を舞台にしたダンス、
そして先生の心の内を映したエンドロール。
短い尺の中で、
少しサービス過剰かも知れないが、
ストーリーを絞った分、
それほど慌ただしくは感じなかった。
山戸結希監督の『溺れるナイフ』が、
とっても楽しみになった。
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