朝、目覚めた父が言いました。

「みんなは◯◯県(母の故郷)に行ってるんだったな?」


父の問いに、わたしは答えました。

「誰も◯◯県には行ってないよ」


みんなが母の故郷に行っていると父がたびたび口にするのですが、誰も母の故郷に行っていないし、そもそもみんなって誰だという話なんですよね。


ただ、この話の根底にあるものについてわたしには仮説があります。


わたしが6歳の頃、母方の祖母がガンになり入院しました。余命いくばくもないということで、母はわたしを連れてしばらく帰郷していたのでした。


その間、父は一人で寂しかったのではないか。

その寂しさを思い出しているのではないか。


「みんなが◯◯県に行ったのは、むかしのことだよ」

とわたしが言うと、

「そうか、むかしのことか」

と父。


「むかし、お母さんのお母さんが癌で入院したでしょ。その時、お母さんが小さかった(わたし)ちゃんを連れてしばらく◯◯県に帰ったんだよ。

お父さんは、その時、寂しかったでしょう」


父は、

「寂しかった」

と答えました。


そして、落ち着いて寝床に戻っていきました。


わたしの仮説、合ってたのかも。