認知症の父の下着を交換するという大業を成し遂げたわたし。
しかし、達成感に浸れたのも束の間、この後事件が起こるのでした。
下着を交換したその日。
トイレに行った後の父が、洗面台で長い時間、水を使っています。
珍しいなと思って見に行き「どうしたの?」と声を掛けると「何でもない!何でもないよ」とあわてた様子。
何かをじゃぶじゃぶ洗っているようなのでピンと来て、なるべく落ち着いて声を掛けました。
「下着、汚しちゃった?」
すると父は「何でもない、気にしなくていいから」と誤魔化そうとします。
お父さん。
わかる。
わたしにはわかるよ、お父さんの気持ちが!
こういう時、母ならカッとなって怒鳴るんです。
わたしにも覚えがあります。
あれは子供の頃…。
何歳の時だったか定かではないのですが、大きい方を漏らして、パンツを汚してしまったことがありました。
「お母さんにバレたら怒られる!」
そう思ったわたしは、汚れたパンツをベランダの物陰に隠しました。
しばらくしてから母がそれを見つけまして。
「何でこんなことしたの?」とおだやかに問われました。
今になれば即答できます。
『怒られるのが怖かったからだよ!』
でもその時のわたしは、モジモジして何も答えることができませんでした。
お父さんも怒られるのが怖かったんだと思う。
それに、認知症になったからと言って感情が消えるわけではないから、恥ずかしいという気持ちもあるし、知られたくないという気持ちもあるよね。特に娘に失態を見せたくはないと思います。
父は汚した下着を洗濯中の洗濯機に入れようとする素振りを見せたので「洗濯機の手前のカゴに入れてくれたらいいよ」と言うと、素直に入れてくれました。
その後、手洗いしてみたけど落ちないので(大きい方でした)捨てちゃいましたけど、今後も増えるならどうやったら落とせるのかちゃんと勉強しないといけない。
わたしだって赤ちゃんの頃、お父さんとお母さんに下の世話をしてもらっていたわけだから、自分が親に対してするのは、してもらったことを返すだけのこと。
変わっていくのは少し寂しいけど、何もかも変わらずに続くものなんて何もない。