割球喪失が妊娠および新生児の転帰に及ぼす影響

The impact of blastomere loss on pregnancy and neonatal outcomes of vitrified-warmed Day3 embryos in single embryo transfer cycles | Journal of Ovarian Research | Full Text (biomedcentral.com)

はじめに

 

割球喪失は凍結保存後によく起こる現象です。

現在までのところ、割球喪失が妊娠転帰に与える影響については、相反する結論が得られています。

また、割球喪失胚の新生児安全性に関する情報は限られています。

全移植の特性

 

原発性不妊症患者は、無傷の胚群の方が割球喪失群よりも低値でした(51.00%対58.70%、p = 0.003)。

無傷の胚群では体外受精の割合が割球喪失群より明らかに高く(64.53% vs 55.56%、p < 0.001)、顕微授精の割合が低値でした。

割球喪失の有無にかかわらない胚移植後の妊娠転帰

 

着床率は無傷の胚群の方が割球喪失群より顕著に高値でした(31.56% vs 21.01%、p<0.001)。

生化学的妊娠(34.97%対24.64%、p<0.001)、臨床妊娠率(30.67%対21.01%、p<0.001)、継続妊娠率(25. 63%対15.70%、p<0.001)、胚移植1周期あたりの生児出生率(24.92%対14.25%、p<0.001)、臨床妊娠1周期あたりの生児出生率(81.23%対67.82%、p=0.003)でした。

早期流産率は、無傷の胚群の方が割球喪失群よりも有意に低値でした(16.44%対25.29%、p = 0.039)。

生化学的妊娠率、子宮外妊娠率、後期流産率、死産率、単胎妊娠の割合に関しては、両群は同等でした。

一卵性双生児率は無傷の胚群で1.78(26/1463)であったのに対し、割球喪失群では認められませんでした。

割球喪失の有無にかかわらず移植胚から出生した単胎児の転帰

 

記載された指標はすべて、両群間でほぼ同等でした。

割球喪失率に関連する妊娠転帰

 

一般的な傾向として、割球喪失率が高くなるにつれて、生化学的妊娠率、臨床妊娠率、継続妊娠率、胚移植当たりの出生率、臨床妊娠当たりの出生率は著しく低下しました。

無傷の胚群と割球喪失率25%未満群との比較、無傷の胚群と割球喪失率26~50%群との比較では有意でしたが、その他の一対比較では差が検出されませんでした。

早期流産率は、割球減少率の異なる3群間で同等でした。

割球喪失数の異なる初期胚の妊娠転帰

 

凍結保存時の細胞数ごとに、融解時の割球減少数が増加するにつれて、1周期あたりの臨床妊娠率、継続妊娠率、出生率が徐々に低下する傾向が確認されました。

特に、凍結保存時の細胞数が6個の胚の場合、たった1個の割球喪失でも臨床妊娠率はゼロになり、凍結保存時の細胞数が7〜10個の場合、融解時に1個の割球喪失で臨床妊娠率は50%以下に低下します。

8細胞胚や10細胞胚で、融解時に割球が1個喪失した場合の臨床妊娠率は、無傷の胚と同程度でした。

臨床妊娠当たりの出生率に関しては、割球喪失数が増えてもほぼ同じでした。

8細胞胚について詳しくみると、割球減少数が0,1,2,3の場合、臨床妊娠当たりの出生率は97.28%(787/809)、94.22%(17/18)、100%(3/3)、100%(2/2)でした。

結論

 

割球が喪失した初期胚は、着床率、生化学的妊娠率、臨床妊娠率、継続妊娠率、胚移植当たりの出生率、臨床妊娠当たりの出生率の点で発育能に障害を示し、さらに早期流産率も上昇しました。

母体の高年齢化、胚質の低下、割球喪失の増加は、出生と負の相関があることが判明しました。

注目すべきは、25%未満の割球の喪失でさえも有害である可能性があることです。8細胞胚や10細胞胚では1個の割球喪失の影響は無視できるのに対し、6細胞胚では致命的であることです。

割球喪失胚と無傷の胚に由来する新生児の状態は同等であり、割球喪失は新生児有害転帰のリスク上昇と関連していないことから、割球喪失胚を移植することの安全性が確認されました。

原発性不妊症と顕微授精は、割球喪失の危険因子です。