筋強直性ジストロフィーと妊娠・出産  一部改変

DM-CTG|妊娠・出産に関する注意事項 (dmctg.jp)

「筋強直性ジストロフィー」ってどんな病気?

 

筋強直性ジストロフィー(以前は「筋緊張性ジストロフィー」と呼ばれていました)は大人では最も頻度の高い筋ジストロフィーです。

主な症状は、筋強直現象(ミオトニア)と筋ジストロフィー(筋のやせや力の低下)です。

常染色体優性遺伝形式をとり、患者さんの割合は男女ほぼ同数です。

患者さんにより症状の重さや発症年齢はさまざまで、妊娠中・出生時から発症する先天型から、生涯症状に気付かない軽症例まで幅があります。

これまでに原因遺伝子が2つ見つかっています(1型:19番染色体DMPK, 2型:3番染色体CNBP)が、2型の頻度は人種によって異なり本邦ではほとんどが1型です。

主な筋肉の症状は、筋強直現象と筋力低下・筋萎縮です。

筋強直とは筋のこわばりのことで、手を強く握るとスムーズに手を開けない(把握ミオトニア)などの現象が見られます。本症の筋強直は繰り返し同じ運動をすると軽くなるのが特徴的です(ウォームアップ効果)。

筋力低下・萎縮の分布にも特徴があります。本症で早期に筋力低下が見られるのは、手指(ペットボトルのフタを開けにくい)、足(立位保持が困難、つまづきやすい)などの遠位筋(胴体から遠い位置の筋肉)、咬筋(堅い物がかみにくい)、頸筋(臥位で頭を持ち上げにくい)などの部位です。咬筋や側頭筋の萎縮が強いと顔の横幅が細くなり(西洋)斧様顔貌と呼ばれます。

筋強直性ジストロフィーは、筋ジストロフィーのひとつですが、多くの臓器の障害を合併する全身疾患であるという特徴があります。

代表的なものに、白内障、不整脈、呼吸障害、糖尿病、高次脳機能障害、消化器症状、良性・悪性腫瘍などがあります。

骨格筋障害の発症時期・重症度と合併症の発症時期・重症度は必ずしも相関しないため、本症に気付かずに合併症治療を受けておられる患者さまもおられます。

多くの合併症は早期発見、早期治療が重要であり、本症の診断がついた患者さまは定期的に全身の検査を受けることが大切です。

妊娠・出産に関する注意事項
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1.妊娠前に気を付けることは何ですか?

「妊娠をする前に」ご夫婦で遺伝カウンセリングを受けて頂くことが大切です。

この疾患では、50%の確率で、生まれてくるお子さんが同じ疾患である可能性があります。

お母さんからお子さんに遺伝する場合、お母さんよりも症状が強くなり、生まれてすぐに症状が出てしまう重症な場合(先天型)もあります(表現促進現象といいます)。

お父さんからお子さんに遺伝する場合は、お母さんからの遺伝の場合に比べて軽度の場合が多いですが、中にはお父さんより重症になる場合もあります。

お子さんが非常に重症な場合、妊娠途中で流産することがあります。

 

2.妊娠管理、出産をする病院を選ぶ場合に気を付けることはありますか?

妊娠・出産は通常よりも,様々なリスクが伴います。このため、自宅出産や新生児科のない産院などでの出産は避けるべきです。少なくとも神経内科、すぐに帝王切開の対応が可能な産婦人科、出生したお子さんを安全に管理してくれる新生児科(新生児集中治療室)の3つを備えた医療機関での妊娠管理、出産をする必要があります。

 妊娠中はお母さんの症状、筋痛、筋強直や高クレアチンキナーゼ血症などが悪化することがありますので、すぐ相談できる神経内科があると、産婦人科の先生たちも安心できます。

また、出産の時間が長引いたり、出血が多くなったりすると、お腹の赤ちゃんの具合が悪くなってしまうことがあります。この場合は、赤ちゃんとお母さんの命を守るために、帝王切開に切り替える必要があります。

赤ちゃんが予定よりずっと早く小さく生まれてしまったり、出産の時のストレスで赤ちゃんが疲れてしまったり、赤ちゃん自体が同じ病気である場合、症状が重く、呼吸が不十分な場合があります(先天型)。このような時に備えて、すぐ、赤ちゃんに対応してもらえる新生児科(新生児集中治療室:NICU)をそなえた医療機関で出産する必要があります。

3.病気が妊娠のしやすさ(受胎能力)に影響することはありますか?

男性不妊に関しては頻度が高く、男性の患者さんの2/3が精巣萎縮や、精子の数が少なくなると報告されています。

子宮外妊娠が一般の5~10倍多いことが最近報告されています。

 

4.赤ちゃんへの実際のリスクはどのくらいですか?

妊娠中、出生後の赤ちゃんの死亡率は15%と通常の10倍以上高いと報告されています。しかし、これは赤ちゃんが重症な先天型にかかっている場合です。その場合、赤ちゃん自体の筋力が弱く、呼吸ができないなどの理由で助からないことがあります。もし、このように赤ちゃんの筋力が弱い場合でも、新生児科やNICU(新生児集中治療室)が早期に対応することができれば、リスクを軽減することができます。

赤ちゃんが同じ病気でも軽症な場合や、病気にかかっていない場合は、赤ちゃんへのリスクはそれほど高くないと言われています。

5.自然流産や早産のリスクは高いのでしょうか?

自然流産は13%程度と、一般の12~15%とそう変わりがありません。

早産は非常に多く、50%が早産(37週より前の出産)になってしまいます。早産になってしまった例の6割は比較的安全な35週以後の出産ですが、4割は危険が伴う35週前(27週から34週)の早産になってしまうとされています。赤ちゃんが重症な先天型の場合に多くみられます。早く生まれてしまった場合に備えて、新生児科のある医療機関で妊娠管理を行いましょう。

 

6.妊娠中の合併症で気を付けることは何でしょうか?

妊娠中毒症の合併は通常と比べても、それほど多くはないと言われています。

最近注目されているのは尿路感染症で、報告では13%ものお母さんが合併したとされています。中には、重症化して手術で腎臓を摘出する必要があったり、血液に菌が入ってしまって、敗血症という重症な状態になったりすることもあり、注意が必要です。

前置胎盤が通常の10倍以上起こりやすいこともよく知られています。これは、子宮内の胎盤(お母さんとお子さんをつなぐもの)ができる場所が通常よりも下側、出口に近い側にあるため、出血を起こしやすく、出産も通常分娩による出産は危険であるため、帝王切開による出産が必要となります。前置胎盤が多い理由は、お母さんの子宮がうまく動かないことや子宮の中の膜がうまくつくられないためと考えられています。

妊娠中に羊水過多といって、子宮の中にある水が多くなる異常が10~20%にみられると言われていますが、これはお母さんの問題ではなく、赤ちゃんが先天型である場合にみられます。羊水過多の症状が出てきたら、医療機関で赤ちゃんの状態を注意深く診てもらいましょう。

妊娠中に糖尿病が発症したり、悪化したりすることも知られています。

気分の落ち込みやマタニティーブルーが強く出てしまうこともあるので、よくご家族やかかりつけの先生に相談にのってもらうようにしましょう。

7.妊娠中にお母さんの病気の症状は悪くなりますか?

30%のお母さんが、筋痛や筋力低下、筋強直の症状が妊娠中に悪化したと言っています。

同時に高クレアチンキナーゼ血症が指摘されることも度々あります。

多くの場合は急激に体重が増えたことなどが原因になると言われており、一過性で症状は改善します。

極一部のお母さんの中には、筋痛、筋力低下の症状が急激に悪くなってしまうこともあります。

 

8.妊娠や分娩の管理で,他に気を付ける点はなんですか?

不整脈に気を付けて、定期的に心電図をとる必要があります。

筋力低下に伴って、呼吸筋力の低下、飲み込みのしにくさ、胃から腸への排出の遅れなどの症状が強くなると、肺炎を起こすことがあるので注意が必要です。

9.分娩のリスクはどんなものがありますか?

分娩第I期(始まってから、子宮口が全開大するまで)の時には、子宮の動きが悪く、陣痛が弱かったり(微弱陣痛)、長引いたりしてしまうことがあります(遷延分娩)。

II期(赤ちゃんが出てくるとき)にも同様に、陣痛が弱かったり、お母さんのいきみが弱いために、分娩が長引いたりしてしまうことがあります。

この時に注意しなければならないのが、なかなか出てこられないことにより、赤ちゃんが疲労してしまい危険な状態になってしまうことです。赤ちゃんの心臓の動きが悪くなったり(胎児心音低下)、時に胎児仮死と言って、酸素が足りなくなったりする重症な状態になってしまうことがあります。そんな時には、ためらわず帝王切開で赤ちゃんを助けてあげる必要があります。

III期(出産後から胎盤が出るまで)には、子宮の収縮が悪いために大出血を起こしてしまうことや、胎盤の位置やくっつき方が異常でやはり大出血してしまうことがあるので、注意が必要です。

 

10.産後に気を付けることはありますか?

子宮の収縮が悪いため、後陣痛(拡張した子宮が産後にもとに戻ろうとして強く収縮する)が長引くことがあります。

妊娠中に悪化した、筋痛や筋力低下が持続することもあります。

疲れやすさがあり、疲労回復にも時間がかかるため、時に日常生活や育児をするほど体力が戻らないこともあります。お父さん、ご家族は、この点をよく理解して頂き、お母さんを精神的にも支えてあげてください。

11.妊娠中、分娩時に使ってはいけない薬はありますか?

早産を起こしやすいのが特徴のひとつですが、早産防止目的の子宮収縮抑制薬には注意が必要です。日本でよく用いられる子宮収縮抑制薬は、硫酸マグネシウム(マグネゾール)と塩酸リトドリン(ウテメリン)があります。塩酸リトドリンでは、横紋筋融解といって、筋肉が壊れてしまい、異常に血清のクレアチンキナーゼ値が上昇する病態を起こしやすいため、投与は注意が必要です。一方の硫酸マグネシウムも、呼吸を抑制してしまう重大な副作用があり、こちらも慎重投与が必要です。

帝王切開時の麻酔薬、筋弛緩薬は必要最低限とすることが基本です。特に、バルビツール酸系の麻酔薬で、呼吸が抑制される重篤な副作用が知られています。また、脱分極型の筋弛緩薬を使うことにより、筋痙攣や筋強直の増悪が知られており、あらかじめ、これらの薬の使用に関しては、主治医の先生と確認をしておく必要があります。

筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020

?? (neurology-jp.org)

筋強直性ジストロフィー女性が周産期(妊娠中・産後)に気をつけることは何か

 

妊娠中、母体の骨格筋症状が増悪することがある。自然流産、羊水過多、早産、胎位異常や遷延分娩、弛緩出血の頻度が高いためNICU(neonatal intensive care unit)施設のある周産期センターなどでの管理が望ましい。

 

切迫早産の管理で子宮収縮抑制薬を使用する場合には、以下の点に注意する。

 ・塩酸リトドリンの投与は母体の横紋筋融解症をきたすリスクがあるので、やむを得ず使用する場合には血清CK値の著明な上昇、筋力低下の増悪などの症状に十分に注意する。

 ・硫酸マグネシウムを使用する際は、呼吸抑制症状や筋力低下症状の慎重な評価が必要である。

 

緊急帝王手術などの対応を含めた円滑な母児管理のため、周産期カンファレンスで関連部門(産婦人科、新生児科、麻酔科、遺伝子診療部門、脳神経内科)・多職種の間での情報共有を図る。羊水過多、早産や緊急帝王切開にも対応できる周産期センターでの対応が望ましい。

 

分娩を契機に母体の筋力低下、易疲労、気分の落ち込みなどが増悪し日常生活や育児が困難となることがあるため、各科連携し産後も母体の管理を要する。保健師やソーシャルワーカー、認定遺伝カウンセラーなどの多職種による家族の支援体制を確立することが望ましい。

先天性筋強直性ジストロフィーの病態が成人型と異なるところは何か

 

先天性筋強直性ジストロフィーは、狭義には出生時に重度の筋緊張低下、筋力低下を呈し、半数が呼吸障害を伴う最重症型で、筋強直性ジストロフィー1型のみに認められ、2型での報告はない。

 

CTG繰り返し配列回数の著しい増加(1,000回以上)、DNA過剰メチル化、未熟性が強い筋病理像などの特徴を有する。

 

全身筋緊張低下、筋力低下、関節拘縮が強く、乳児期には筋強直現象は認めない。

 

知的障害は成人型より重度であることが多いが、白内障、糖尿病、心合併症などの成人型の主要な合併症が小児期に問題になることは少ない。

先天性筋強直性ジストロフィーの予後を規定する因子は何か

 

CTG繰り返し配列数が多いほど重症になる傾向があるが、絶対的ではない。

 

呼吸不全による新生児期死亡、周産期脳障害の合併が多く、新生児期に長期間人工呼吸管理を要した例のほうが、知的・運動発達、予後が不良である。

 

合併頻度は少ないが、不整脈による突然死は生じうるため、定期的に検査が必要である。

先天性筋強直性ジストロフィーの骨格筋症状はどのように経過するか

 

周産期、新生児期が最も症状が重く、全身性筋緊張低下、筋力低下に伴う呼吸障害、哺乳障害をきたす。


全身性筋緊張低下や筋力低下などの骨格筋症状は発育とともに改善するが、思春期以後に再び筋力低下が出現し進行する。

 

筋強直現象は乳児期には認めず、幼児期以後に出現する。


内反足をきたしやすく、重度の場合立位や歩行が困難となるため、装具や手術介入が必要である。

先天性筋強直性ジストロフィーの教育で気をつける点は何か

 

知的障害、発達障害や行動異常および情緒障害が問題になることが多い。

疾患の特性に配慮し、神経心理検査結果を参考にして、個々に適した教育環境の調 整、サポートを行うことが望ましい。

 

遠視、乱視などの調節障害、視力低下、中耳炎合併による難聴により学習が障害される場合があり、幼児期に眼科、耳鼻咽喉科医による評価を受けることが望ましい。

「筋強直性ジストロフィーと妊娠・出産」に関する論文や報告

 

妊娠・分娩1 妊娠中に診断された筋強直性ジストロフィーの2例 | 一般社団法人関東連合産科婦人科学会 (jsog-k.jp)

(症例1)25才、1経妊0経産。父方の叔父が重症筋無力症。妊娠33週時に羊水過多。胎児エコーでは羊水ポケット41cm、明らかな形態異常(-)、四肢は伸展し胎動が乏しかった。クレアチンキナーゼ7784、自己抗体(-)、75g経口糖負荷試験正常。筋電図では急降下爆撃音(+)、遺伝子診断で約900回のCTGリピートを認めたため筋強直性ジストロフィーと診断した。37週4日自然陣痛発来、新生児科医立会いのもと経腟分娩に至った。児は2712gの男児、Apgar scoreは3/4、ぐにゃぐにゃ乳児の状態であった。児も約1900回のCTGリピートを認め先天性筋強直性ジストロフィーと診断された。

(症例2)25歳、0経妊。父方従姉妹が筋萎縮性疾患。妊娠14週より大腿部の筋力低下が出現、28週に全身筋肉痛と筋力低下増悪。上腕と大腿筋の把握痛、頚部の前屈不良(+)。クレアチンキナーゼ35332、筋電図所見、CTGリピート約700回から筋強直性ジストロフィーと診断した。羊水過多は認めなかった。40週6日に自然陣痛発来、吸引分娩にて児を娩出した。児は3405gの女児、Apgar scoreは8/9で、呼吸障害なくCTGリピート延長もなかった。子宮内反ならびに胎盤遺残を合併し2880mlと大量出血したため輸血を施行した。

 

筋強直性ジストロフィー合併妊娠および顔面肩甲上腕型筋ジスロトフィー合併妊娠の2症例 (jst.go.jp)

異なる病型である筋強直性ジストロフィー(myotonic dystrophy;DM)および顔面肩甲上腕型筋ジスロトフィー(facioscapulohumeral muscular dystrophy;FSHD)の2症例の周産期管理を経験した。

DM合併妊娠の症例は羊水過多で経過し、胎児機能不全を認めたため妊娠34週2日に帝王切開で児を娩出した。出生後、新生児は呼吸循環動態の増悪をきたし、日齢123日で死亡した。

一方、FSHD合併妊娠の症例は子宮内胎児発育不全、羊水過少で経過した。妊娠39週1日、経腟分娩を試みたが分娩進行停止したため帝王切開で娩出した。新生児のFSHD罹患の有無は不明であるが、良好な状態で退院した。

2症例とも切迫早産の治療において、リトドリン塩酸塩に比べ横紋筋融解症の発症リスクが低い塩酸イソクスプリンを投与した。横紋筋融解症の発症や原疾患の増悪を伴わずに妊娠管理することができ、FSHD合併妊娠の患者は生児を得たが、DM合併妊娠の児は乳児死亡した。

小児期発症の筋強直性ジストロフィーの臨床とケア

臨床神経学雑誌第52巻第11(neurology-jp.org)

 

経過は二相性で、出生直後がもっとも不良で死亡例もあるが、その後は改善する。新生児・乳児期を乗り切れば、ほとんどが独歩獲得までに運動機能は回復し、筋力低下は軽度にとどまる。一方、精神遅滞は必発である。青年期を過ぎると退行が始まり、成人型DMと類似の経過をたどる。当科の症例20例中2例は新生児期死亡、1例は幼児期に気道感染にともない死亡した。

原因不明の羊水過多の場合は、CDMの可能性を考慮すべきである。

CDM をうたがう根拠として、四肢と呼吸筋・嚥下筋のアンバランスな筋力低下と両親罹患の有無が重要な鍵となる。

母親は軽症例が多く、妊娠・出産を契機に顕在化する例もある。把握性・叩打性ミオトニアを検出できないこともあり、詳細な病歴聴取と診察が必要である。

「長時間沈黙後の発声困難」「寒い日の喉の違和感」「雨天での傘の開閉困難」などの病歴が参考になることもあり、強いマタニティーブルーをみとめることも多い。

 

帝王切開後に診断された筋緊張性ジストロフィーの1例:関東連合産科婦人科学会誌オンラインジャーナル (kyorin.co.jp)

筋緊張性ジストロフィー合併妊婦では切迫流早産、羊水過多、遷延分娩、高クレアチンキナーゼ血症などの合併症が多いとされ、塩酸リトドリン使用により横紋筋融解症を起こすことも知られている。児の呼吸管理が必要となる可能性もある。

妊娠37週5日 羊水ポケット36.7cmと羊水過多を認め、横位であったため脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔下での同日緊急帝王切開術となった。2,432 gの女児、Apgar score1分値1点、5分値4点、出生直後からの全身筋緊張低下を認め気管挿管後、高次医療機関へ転院搬送となった。母体は術前検査にてクレアチンキナーゼ468 IU/Lと軽度高値を認めていたが、自覚症状および家族歴において明らかな運動障害を指摘されず、顔面頸部を主体とした筋力低下を認めるのみでMDに典型的とされる筋萎縮、筋強直、多臓器障害は認められなかった。術後1日目、クレアチンキナーゼ15,733 IU/Lと高値、針筋電図において筋強直性放電を認め、MDと診断された。母体は軽症であったが児は転院後も人工呼吸器からの離脱は困難で、母体の診断から児は先天性筋緊張性ジストロフィーが最も疑われた。

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