羊膜索症候群と四肢体壁複合体

羊膜索症候群とは

 

胎生早期の羊膜の損傷とそれに続く索状物の形成により、多彩な奇形をきたします。なかでも、頭蓋顔面や腹部に異常を伴ったものは重症で、四肢体壁複合体と呼ばれます。

発生は1200例に1例程度と報告されています。

致死性が高いうえ、単胎の場合には妊娠初期に人工妊娠中絶となることが多く、満期まで妊娠継続されることは稀です。

四肢体壁複合体(LBWC)とは
Limb Body Wall Complex (LBWC) (isuog.org)

 

LBWCとは、赤ちゃんの臓器が赤ちゃんの体の外にあり、胎盤に付着している重篤な異常です。赤ちゃんは正しく動いたり成長したりすることができず、臓器も損傷してしまいます。LBWCはまれで、約15,000人の妊娠のうち1人がかかるといわれています。

 

左の画像は、羊水中に自由に浮遊している正常な赤ちゃんと臍帯を表しています。赤ちゃんの手足は自由に動き回り、内臓はすべて体の中に収まっています。右の画像では、赤ちゃんはLBWCです。お腹の穴から赤ちゃんの内臓が出てきて、内臓が胎盤に張り付き、へその緒もとても短くなっています。位置が固定されているため、赤ちゃんが成長し続けるにつれて、背骨や手足の姿勢に異常が生じます。

超音波検査時に臍帯が短いか無い場合、赤ちゃんが検査中ずっと固定されたぎこちない姿勢の場合、顔やお腹に異常があるように見える場合、LBWCが疑われます。

LBWCの原因は不明ですが、妊娠初期の発達の仕方に問題があるためと考えられています。胚が適切に折りたたまれたりねじれたりしない場合、あるいは重要な臓器への血液供給が中断された場合、これが一連のステップとなり、重度の胎児異常が発生する可能性があります。ほとんどの場合、赤ちゃんの顔やお腹の中にあるはずの臓器が胎盤に付着しています。

LBWCの診断は、早ければ11-13週目に超音波検査で行うことができます。場合によっては、さらに写真を撮るために、小さな超音波プローブを腟に入れることを医師から勧められることもあります。

残念ながら、LBWCに罹患した多くの赤ちゃんは生まれる前に亡くなってしまいます。これらの赤ちゃんが持つ問題の重大性から、ご両親が希望される場合、そしてこの選択肢が法的に可能である場合、妊娠を中断する選択肢があります。両親が妊娠を継続することを選択した場合、胎児の成長を評価し、胎盤を評価するために、さらなる超音波検査が指示されます。LBWCは、胎盤が子宮の壁にしっかりと張り付いていたり、子宮頸部に低く密着していることと関連しており、妊娠中や出産時に出血するリスクが高くなる可能性があります。    

出産まで生き延びたLBWCの赤ちゃんは、生きて生まれることもあれば、分娩中に死亡することもあります。多くの場合、赤ちゃんは胎盤と一緒に生まれ、出生時にはかなり醜い姿をしていることがあります。生きて生まれてきた赤ちゃんは、少しの間だけ生き延びることができます。出産後に赤ちゃんを介助する医師は、赤ちゃんがより快適に過ごせるよう、いくつかの方策を提示することがあります。このような対策について、出産後に赤ちゃんを介助するチームと事前に話し合っておくとよいでしょう。しかし、このような取り組みを行っても、ほとんどの赤ちゃんは生後間もなく亡くなってしまいます。

次の妊娠でLBWCが再び起こる可能性は非常に低いです。

母体血清アルファフェトプロテインを用いたスクリーニングにより出生前診断された Limb Body Wall Complex の1例
digidepo_10694517_po_ART0002203981.pdf (ndl.go.jp)

 

LBWCの診断は、

 1.顔裂や脳ヘルニアの頭部奇形

 2.重度の腹壁破裂

 3.四肢奇形

      の3項目中2項目が認められたものとされています。

本疾患は予後不良とされ、ほとんどが死亡し、生存しても重篤な障害を残すとされています。

発生機序

 

胎生期の異形成である外胚葉板の障害によるとするもの。外胚葉板は外胚葉の表面に存在し、中胚葉部分に細胞を供給している特殊な部分で、神経管、腹壁、四肢等の形成に大きな役割を占めているとされる。この種々の外胚葉板の異常によって本症例において認められたような内臓奇形、四肢の奇形、腹壁欠損が同時に生じ得るとしている。

Limb Body Wall Complex と思われる1例
_pdf (jst.go.jp)

 

発生病因につき、血管造影の結果等に基づき胎生早期の血管障害による可能性が強く示唆されました。

コメント

 

「羊膜索症候群」と「四肢体壁複合体(Limb Body Wall Complex)」という稀な疾患があります。

例え、流産や死産となるにしても、解剖や染色体検査を受け、この子が残そうとした弟や妹へのメッセージに目を向け、耳を傾けましょう。