精子DNA断片化指数検査(DFI検査)
1.異常を持つ精子が、受精卵の発育と赤ちゃんに及ぼす影響
父親の遺伝情報DNAは精子の中に、母親のDNAは卵子の中に入っており、精子と卵子が融合して赤ちゃんのDNAを形成します。
異常なDNAを持つ精子が卵子と受精すると、受精卵の発育や赤ちゃんに良くない影響を及ぼす恐れがあります。
2.精子DNAの断片化
DNAは二重のらせん構造をしていますが、これが損傷している状態を「DNAの断片化」と言います。
精子のDNAの断片化は、高温や低温、その他の物理的損傷や、活性酸素による酸化ストレスなどによって引き起こされるとされています。
精液検査所見が正常の場合や、顕微鏡で正常形態の精子でも、DNAの断片化が起こっていることがあります。
3.精子DNAの修復機能
ヒトの細胞はDNAの断片化を修復することができるとされ、DNAが断片化した精子が卵子と受精しても、卵子の修復機能により受精卵のDNAは修復されると考えられています。
しかし、機能が低下している卵子では、断片化した精子のDNAを修復できないおそれがあります。
また、精子にはDNAの断片化を修復する機能がありません。
4.精子DNAの影響は、胚発生の3日目以降に出現
精子のDNAは、受精後3日目以降の受精卵の発育に関係します。
そのため、精子のDNAが断片化していると、3日目以降の受精卵の発育に悪影響を与え、胚盤胞到達率や妊娠率の低下、流産率の上昇に関連します。
5.精子DNA断片化指数検査(DFI検査)
男性の隠れた不妊のリスク要因がみつかる可能性があります。
次のような男性にお勧めします。
・原因不明の精液所見不良
・体外受精や顕微授精の反復不成功
・繰り返す流産
損傷したDNAを持つ精子の割合を調べます。
精子クロマチン構造検査;精子を染色します。
精子DNAの断片化率が22%以下の場合に、パートナーの妊娠率が高くなるというデータがあります。
また習慣性流産では、精子DNAの断片化率や活性酸素値が高いという報告もあります。
6.DFIが22%以上の時(1)
1.抗酸化サプリメント
精巣で作られた精子は、精巣上体や精管などの精路へと運ばれ、射精まで待機します。
その間、精子は活性酸素にさらされますが、活性酸素が抗酸化力を上回ると酸化ストレスが発生し、抗酸化力を上げるためには、抗酸化物質を摂取する方法があります。
6.DFIが22%以上の時(2)
2.生活習慣の改善(例)
喫煙
高温の環境(サウナ、膝上のパソコン等)
発熱
過度の有酸素運動
生活習慣の乱れ(肥満、睡眠不足等)
精索静脈瘤
会陰部刺激(長時間の自転車等)
長い禁欲期間
禁煙
通気性の良い下着
予防接種
適度な運動
肥満や睡眠不足の解消
抗酸化サプリメント服用、手術
長時間の自転車を避ける
禁欲期間を短くする
6.DFIが22%以上の時(3)
精子分離装置(スパームセパレーター)
約30分で運動性精子を回収する装置です。
高温や低温、その他の物理的損傷や、活性酸素による酸化ストレスなどによって引き起こされるDNAの断片化の危険性を低減します。
回収した精子のDNA断片化率は低く、顕微授精で胚盤胞到達率、着床率、妊娠率などが向上したとする報告があります。
DNAの断片化のない精子を選別することで、治療結果が改善される可能性があります。