これもつい錯覚してしまいやすいことですが、

センター試験や大学入試試験などで測れる能力は、
じつは、人間の能力のうちの、ほんのわずかだけです。
氷山の一角と言っていいでしょう。
そんなごく一部の優劣だけで、人生は決まりません。

試験の結果がよかったからといって、
自分が優秀であるかのようにうぬぼれるのは危険なことですし、
試験の結果が悪かったからといって、
自分が劣っているかのように落ち込むのも、
不必要に自分いじめることになってしまいます。

私の兄は、神童と言われた人でしたが、
最初の大学受験のときには蓄膿症の手術をしなければならなくなり、
当時の手術は顔の皮をめくって骨を削るというすさまじいものだったため、
入院となり、受験できませんでした。
翌年は、インフルエンザで高熱を出し、また受けられませんでした。
さらに浪人させる余裕は家になく、
けっきょく二次募集で不本意な大学に進学しました。
建築家になるという夢も、かなわないものとなりました。
その後、高校の数学の教師になるというふうに気持ちを切り換えましたが、
当時、高校の先生の数がとても多く、飽和状態で、
小学校の先生という、またしても自分の希望とは異なる方向に人生の流れが変
えられました。
せっかく大学で学んできた数学もあまり生かせなくなります。
それでも、再び気持ちを切り換え、小学校の先生として頑張り、
最年少で校長になるという記録を作りました。

身内自慢をするわけではありませんが、
そんなふうに、試験で失敗する人は少なくありません。
そのせいで、自分の夢までこわれてしまう人も少なくありません。
それでも、なお、
「これが本当の自分の人生だった」と言える人生を
新たに築いていくことは可能なのです。

死に急ぐのは、自分の人生を見くびりすぎです。
落ち込みすぎるのは、自分を見くびりすぎです。
繰り返しになりますが、
「試験で測れるのはわずかなこと」
ということを、
決して忘れないようにしてください。