原子炉級プルトニウムを使用して原子爆弾を製造する際に、障害となるものを列挙して、その解決方法を考えてみた。
・不完全核爆発(フィズル)の問題
まず、プルトニウム240の自発核分裂によって、超臨界に達する前に核分裂が起こってしまう不完全核爆発(フィズル)だが、残念ながらプルトニウム240の自発核分裂を止める方法は無い。
そのため、それ以外の方法を使って、なるべく自発核分裂の影響を少なくする方法がとられる。
・発熱の問題
原子炉級プルトニウムは、原子炉の中に長時間ウラン燃料を入れているので、中性子が多く吸収され、プルトニウム240の他にプルトニウム241、プルトニウム242などの同位体を多く含んでいる。
これらのプルトニウムの同位体は半減期が短く、エネルギーを放出して安定した物質に変わろうとする。このエネルギーが熱や放射線となって放散する。
プルトニウム239の含有量が多い兵器級プルトニウムでもごく僅かに発熱するが、原子炉級プルトニウムは白熱電球よりも高温で、周囲の爆薬や機器類を損傷する危険性がある。
また、原子炉級プルトニウムは自身の熱で発火する危険性が高くなる。原子炉級プルトニウムを加工・成型・設置する際は空気に触れない方が望ましい。
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プルトニウムの同位体 |
半減期 |
放射線 |
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プルトニウム238 |
87年 |
アルファ線 |
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プルトニウム239 |
24000年 |
アルファ線 |
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プルトニウム240 |
6563年 |
アルファ線 |
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プルトニウム241 |
14年 |
ベータ線 |
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プルトニウム242 |
376000年 |
アルファ線 |
・放射線の問題
原子炉級プルトニウムの同位体が出す放射線が、プルトニウムを抽出・成型し原子爆弾に組み立てるまでの作業を困難にする。手作業で近づいて原子爆弾の組み立て作業を行うと被曝する危険性がある。ただし、プルトニウムの同位体が出す放射線のほとんどは貫通力の低いα線であるため、あまり心配する必要はないのかもしれない。
これらの問題を解決するための方法をいくつか考えてみた。
・解決法その1・・・インプロージョン(爆縮型)にする。
超臨界に達するまでの時間の短縮。ガンバレル型(砲身型)に比べてインプロージョン(爆縮型)の方が、超臨界に達するまでの時間を短縮できる。これによって兵器級プルトニウムでも起こるプルトニウム240の自発核分裂を抑え、不完全核爆発(フィズル)が起こるのを防ぐ。
・解決法その2・・・ダンパーを重く厚くする。
閉じ込め時間の延長。プルトニウム239の核分裂連鎖反応を1世代(10ナノ秒)伸ばすだけでも威力は倍くらい違う。つまりプルトニウム239が高熱で飛び散ってしまうのを少しでも抑えれば、不完全核爆発(フィズル)を抑えることができる。これはプルトニウムを包む外側のダンパーをウランやタングステンなどで重く厚くすれば可能である。最適なのは天然ウラン(ほとんどウラン238)だろう。
現在の核兵器の多くはベリリウムを使って中性子を反射させて、リフレクターやダンパーの重量を減らしているが、あまり軽く作ると核連鎖反応が持続せず、不完全核爆発(フィズル)を起こす可能性がある。
また、ウラン238は中性子で核分裂を起こす以上に吸収してしまい、連鎖反応を起こさず臨界が起きない。だが、高速中性子の衝突による核分裂(反応は増殖しない)は起こすことができる。ゆえに、核連鎖反応で大量に発生した高速中性子がウラン238に当たることで威力の増幅が期待できる。水素爆弾の一種の3F爆弾の外側がウラン238なのは、核融合反応で発生した高速中性子を衝突させて威力を増強させるためである。
・解決法その3・・・強化原爆(ブースト型原爆)にする。
プルトニウムコア(ピット)を中空にして、重水素(D)とトリチウム(T)の混合ガスを入れる。臨界による高温高圧でDT反応が起き、そこから出る高速中性子で、中性子を増倍させて、核分裂反応を促進させる。
・解決法その4・・・不活性化ガスを循環させて冷却する。
まず、プルトニウムはダンパーやリフレクターで覆われているので、直に爆薬に熱が届くことは無い。プルトニウムコアとダンパーの間に隙間を設けて熱を遮蔽し、不活性化ガスを循環させて熱を外部に逃がす仕組みを作る必要がある。ガスとして最適なのは中性子を吸収しにくく冷媒に使われる二酸化炭素だと思われる。
・解決法その5・・・プルトニウムコア(ピット)を回転楕円体にし、中身をスカスカのスポンジ状にする。
プルトニウムは様々な結晶体があり密度も異なる。一番密度が高いのはα相の19.8g/cm3だが、これでプルトニウムコアを作ってしまうと、超臨界まで爆縮するのは難しい。なので、一番密度の低いδ相の15.9g/cm3でコアを作成し、爆縮でα相の19.8g/cm3にして超臨界にさせ核連鎖反応を起こさせる。
また、臨界とは前のブログ「進化する核兵器 3.核分裂爆弾(原子爆弾)の原理②」で説明したように、中性子の発生量が放出量を上回る状態のことを言う。表面積を大きくすると中性子が多く放出されるので、プルトニウムを多く詰め込んだコア(ピット)を作成しることができる。
なので、プルトニウムコア(ピット)は、内部を中空、スポンジ状、δ相、回転楕円体にして表面積を確保すれば、プルトニウムを多く詰め込むことができ、それを球体に爆縮すれば容易に超臨界にすることができる。
本来、核兵器はベリリウムなどの中性子反射材を使って、少ない量のプルトニウムで超臨界にさせるのが望ましい。しかし、原子炉級プルトニウムは不完全核爆発(フィズル)を起こしやすいため、量を減らすと核連鎖反応が起きない可能性がある。また、原子炉級プルトニウムは核連鎖反応に必要なプルトニウム239の含有量が低く(60~70%)それを補う量を確保しなければならない。
参考に、アメリカが制作した核砲弾(W48)は砲弾内の爆縮レンズが大きくできず、爆縮が不足するためプルトニウムが通常の倍の13kg装填されていた。プルトニウムコア(ピット)を回転楕円体のリニア・インプロージョン方式にして臨界が起こらないギリギリの量を6㎏から13kgに増やしてある。
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・解決法その6・・・爆縮レンズの爆薬を熱や衝撃に強い、低感度爆薬にする。
爆縮レンズに使用される爆薬を熱に強い低感度爆薬にする。爆薬にはTATBやアマトールがあるが、爆縮レンズは速度の違う2種類の爆薬または、空気による衝撃波(エア・レンズ)を使って爆縮させるので、低感度の爆薬が伝達するのか調査が必要である。
また、回転楕円体を球形に圧縮する爆縮レンズの構造は複雑になると考えられる。リニア・インプロージョン方式やSWAN方式に近くなると思うが、コンピューターシュミレーションで最適な形状を考えなければならない。
・解決法その7・・・ロボットアームを使い、原子爆弾を製造する。
原子炉級プルトニウムを加工・成型して、原子爆弾を組み立てる時に発生する、放射線による人体の被曝と、プルトニウムの発火を防ぐために、施設を不活性ガス(アルゴンガス)などで密閉し、ロボットアームを使って遠隔操作で組み立てる必要がある。
以上のことを考えてできる、原子炉級プルトニウムを使った原子爆弾は、以下の図のような感じになると考えられる。このモデルは私の完全な想像だが、通常の原子爆弾に比べて大きく重くなるが、どの程度の重さなのか?どの程度の威力になるのかは残念ながら実験してみないと分からないであろう。
本の紹介・・・再掲出・・・ロシア・ウクライナ戦争で核恫喝が行われているが、核恫喝に核の傘は無意味だということを10年前に指摘している。