2000年 9月
夏休みが明け、久しぶりに登校すると、みんなの肌はこんがり小麦色になっていた。茜も変わらず、毎朝自転車通学戦争と戦いながら登校していた。白いワイシャツから下着が透けるほど汗をかいてしまう真夏を越え、風が涼しく気持ちよかった。
新学期が始まってすぐ席替えをした。
茜は、前から2番目、窓側から2番目の席にいた。あまりうまくサボることの出来ないポディションだ。大好きな高花くんは、もう同じクラスにはいない。近くの席になりたいとか、中学生の時のようなワクワクは何もなかった。
勉強が嫌いな茜は、授業中はよく、後ろの席の夏菜(なつな)とメモを回して、時間を過ごして楽しんでいた。夏菜とメモを回して会話している恒例の時間と、同じくらい恒例になっていた事が茜の心をドキドキさせた。
授業が終わるチャイムが鳴る頃、いつも教室の前の入口に咲が立っていた。
授業から解放されるのは、その時のクラスの授業内容によって多少の誤差がある。
たまたまなのか、隣のクラスの、咲の授業は少し早く終わる時なのか、茜のクラスの授業が少し遅く終わる時なのか。
そんな事は考えたこともなかったけど、1日の中で咲を見つける機会が増えた。
その日も、そろそろ授業が終わる頃、夏菜からメモが回ってきた。
「ねえ茜!また咲田君きてるよ、茜に会いに来てるよねー♡♡」読んだ瞬間、ついつい後ろを振り向いて夏菜を見たら、満面の笑みで笑った後に目線を咲に向けた。茜も思わず咲を見ると、咲もまた、満面の笑みでこっちを見て手を振っていた。
まさかっと思いながらも夏菜の言葉が恥ずかしくて動揺が隠せなかった。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴って、休憩になったとたんクラスの皆が席を立って動き出す。
茜もトイレに行こうと教室を出た、その時ドアに立っていた咲に声をかけられた。
「手出して」
ドキッとしてしまった。
あの体育祭の時のキラキラの笑顔。
あっまたこの笑顔だって思って手を出すと
「ハイ、あげる」
ミルキーを1つ手に乗せてくれた。
茜は、気がつけば、咲の些細な行動にドキドキするようになっていた。