リノベーションを進めるにあたって、ほころぶさんとパートナーの方との間では、話し合いを重ねる中で自然と役割分担が生まれていきました。「私がデザインや空間の雰囲気を重視するタイプで、パートナーは実用性や導線、暮らしの機能に目が行くんです」と話すほころぶさん。お互いが得意なこと、気になるポイントを尊重しながら進めた結果、デザインと実用性のバランスがとれた空間に仕上がりました。
たとえば、ほころぶさんは色のトーン、壁の素材感など空間の印象にこだわり、「直感で気持ちよく感じることを大事にしたい」と考えていたそう。玄関の洗面台に取り入れたアクセントカラーにも、そのこだわりが感じられます。
一方で、「どこに何を収納するか」「日常の動きに無理がないか」といった暮らしの中のリアルを設計に丁寧に反映させていったのがパートナーの方。
コンセントの位置一つとっても、たとえばテレビ台の下には、ゲーム機を使うことを見越してあらかじめ配線が目立たないように設置。
さらには、「このドアは引き戸より、開き戸にしたほうがスペースの無駄がない。」「ウォークインクローゼットは引き戸の位置を変えた方が使いやすい」といった提案も。毎日を過ごす空間だからこそ、動きやすさと快適さを重視した、合理的で具体的な視点が反映されていました。
実際、設計担当の方に会うときは基本的に二人で参加。「もちろんその場で即決せず、いったん持ち帰って話し合うことも多かったですね」と語るように、意思決定のタイミングにも「対話の時間」を意識的に取り入れていたのが印象的です。主張しすぎず、でも譲れない部分は伝え合う。そして、気になるであろうことは、最初から提案しない。たとえば、ほころぶさんはアクセントカラーを選ぶにあたって、パートナーに好まれないテラコッタカラーは、あえて口にしなかったといいます。
そうした関わり方の背景には、前の住まいでのちょっとした不安がありました。「前の家では特に意見が食い違ったことはなかったけれど、「なんとなく分かり合っている」と思っていただけで、ちゃんと言葉にしていなかったんです。だから、いざこだわるとなったときに違っていたらどうしようという不安はありました」。今回のリノベーションでは、お互いの考えを丁寧にすり合わせることを大切にしながら、信頼と尊重を積み重ねていった様子がうかがえます。
設計や素材選びはもちろん、家具の配置や予算配分まで、すべてにおいて共に暮らす視点を持ち続けた結果、完成した住まいにはふたりの価値観が心地よく同居していました。そしてその空間には、「人を招ける家にしたい」「余白をあえて残したい」という、これからの暮らしを想像しながら描いた未来のイメージも、さりげなく込められているようでした。
【ボトルルームメンバーコメント】
(Junさん)
「二人の意見をどう尊重し合うか・擦り合わせるか」は二人暮らしをする上で誰もが考えることかなと思います。悩んでしまいがちなポイントでありながら、ほころぶさんとパートナーの方はそれぞれご自身や互いの得意なこと/大事にしたいことをきちんと理解された上でリノベーションのプランニングに取り組まれていたのが印象的でした。役割分担はされていながらも完全に分業というような感じではなく、互いのアイデアが絶妙に組み込まれて一つの空間が生まれているようで、コミュニケーションを大事にされて、互いをすごく信頼されているお二人の関係性が見えてくるお部屋だなと思いました!
(naokoさん)
誰かと暮らすということ。
色や素材の心地よさと、暮らしやすさの工夫が重なり合う空間から、「共に暮らすうえで大切にしたいこと」に気づかされました。住まいは、日々の会話や気づきの積み重ねで育っていくものなのかもしれない─
そんなことを、あらためて考えさせられました。
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【取材先プロフィール(取材時)】
お名前(職業): ほころぶさん(会社員)、パートナー(会社員)、リッくん(愛犬)
場所: 東京都
面積: 1LDK 73㎡
築年数: 築11年
住宅形態:マンション(持ち家)
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