本日は中編:お部屋を撮影しはじめたきっかけ
「お部屋という住み手の作品に魅せられて」
海外から帰国後、進学をきっかけに縁のある京都に戻って
観光の記念写真に七五三、サプライズのプロポーズにイベント撮影
空いた期間ができたら個人の作品づくりととにかく毎日のようにシャッターを切っていた。
人の出入りが多いまちで、ものづくり、場づくりの文化もある
ポートランドとの共通点も感じつつ、人の想いに関われる毎日が刺激的だった。
撮影以外にもポートランドで出来た縁もあり、帰国後半年はイベントで話したり
現地の様子を記事として書いたりすることも多く。
そのうちの1つのイベントでゲストとしてお会いしたのが
ポートランドにゆかりのあるライフスタイルWEBメディアの編集長。
イベントから数ヶ月経った後、東京を訪れている様子をSNSに載せていたら
お茶に誘っていただき、フラフラと着いていったのが幡ヶ谷のオシャレな某コーヒーショップ。
コーヒー良い香りも酸味も分からないくらい浮足だった中で
かけてもらったのが「うちでも書いてみない?」というお誘いだった。
場の雰囲気もあって、ペーペーだった当時の僕は内容もあまり理解しないまま
「トウキョウでメディアの編集長にスカウトされた」とルンルン気分で即座に了承した。
最初のうちは、海外にいた頃と変わらず、関西のお店やホテル、興味を惹く取り組みについて
個人で探しては取材、撮影、執筆していた。
毎日がビュッフェのように新しく、新鮮な情報に溢れていて
情報や景色を切り摂っては、伝える。その楽しさややりがいを感じるとともに
それが好きなものなのか、消化不良を起こしてないかという一抹の不安を感じつつ
そんな日々を変えたきっかけが、新企画の連絡メール。
「お部屋の連載企画を始めたい、関西で取材可能な人はいないか。」
目に見える場所は調べようがあっても、流石にプライベートな空間なんて、撮る以前に知るきっかけがない。
当時はinstagramが盛り上がる前で、Facebookが主流だったが、流石にお部屋を知る手段ではなかった。
最初から諦めるのももったいないと、定期的に訪れていたコワーキングスペースで偶然出会ったのが
当時デジタルの仕事とともに本屋を営まれていた方だった。
今考えると、恐ろしさすら感じる、その場での取材依頼。
「部屋を撮らせてもらう」ということのイメージを自分自身が持っていなかったことと
その相手が取材慣れしていたことの奇跡が重なり、すんなり決定。
(その後、しばらく取材先を探すことに難航する時期を経験した身からすると本当に奇跡としか言いようがない。)
京都特有の脇道を通って辿り着いたのは、外観はいたって普通、寧ろ古さを感じる一軒家。
事前にお部屋の中でをみる機会もなかったために、少し不安を覚えたほどである。
戸建でリノベーション済みの賃貸には、仕事柄、たくさんの本は収納された本棚だけのお部屋。
自身の感性でつくりお気に入りを集めたディスプレイ棚。
仕切りも全て外されていて開放的な空間は、僕のそれまでの知見で描ける想像のイメージを超えていた。
「面白い」目に入るものの全てが刺激的で、お部屋づくりの背景を聞くと
より一層、その空間に深みを感じた。
「このお部屋自体が作品だ。」住み手の思考が反映された、その人にしか作れない作品。
「これまで撮っていたものと違う。」誰かのために、整えられたものや場所ではなく
好きなものへの愛や情熱、几帳面さやズボラな性格など
本当の自分がありのままに表現される空間、それがお部屋だと実感した。
あの日から、たくさんのご縁をいただき、もう数え切れないくらいのお部屋に伺ってきた。
それでも今だに、玄関のインターホンを押して、住まいに入る瞬間
ドキドキとワクワクから来る気分の高揚がなくなることはない。
お部屋という住み手の作品に魅せられて。
今日もその空間を目に、想いを脳に、感じたものを心に
大切に残しながらお部屋を巡り続ける。