こんばんは、光です。
今夜はクリスマスのお話として描いた自著を投稿します。
数日程遅くなってしまいましたが、それではどうぞ!
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「はじめに」
この物語は劇場版 魔法少女リリカルなのは THE MOVIE 2nd A`sの二次創作かつ自著のようなお話です。
そして、これは前回の10 years afterの時に言うべきことでしたが……すみません、この場合は自伝と言うよりは自著の方が正しい表現だったようですね(汗)
と、まあそれはさておき、今回劇場版リリカルなのはA`sをチョイスしたのは「クリスマスのお話を描きたい!」と言うことで、クリスマスシーズンで物語が描かれた劇場版リリカルなのはA`sを題材にし、あの物語を見て感じたことをお話にしてみようと思い、描いてみました。
前回の10 years afterを読んでいなくても楽しめる内容にはしてありますが、予めそちらを読んでおくとより分かりやすくなっていると思います。
それではどうぞ、最後までお楽しみください!
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――12月24日、クリスマス。
かつて、その聖夜にて永遠の時を生きるロストロギアが目覚めた。
そこで彼女が地球で出会ったのは心優しい小さな勇者たちと、健気な主たる少女との交流。
闇の呪縛に蝕まれながらも、何かを諦めたくない一心が、その奇跡の邂逅を招いたのかもしれない。
やがて彼女は地球の少女たちによって呪縛から解き放たれ、ひと時の安らぎを得た。
そして、主たちの幸せを望んで夜空へと消えていった。
そして、それから2年後のクリスマス――祝福の風は、再び海鳴を包もうとしていた。
『銀色クリスマス~この街に祝福の風を~』
この僕、蒼空光は子供の頃から思い描いてきた物語であるツバサ・ストーリア~天空の勇者たち~を形にするため、そして、新しい未来を創るために様々なセカイを巡る旅を続けている。
その過程でツバサ・ストーリアのセルフリメイク版を描くことになり、僕の物語を描く日々は今、大きな転換期を迎えている。
そして今日は僕にとって――いや、「僕たち」にとって大切な約束がある12月24日その日に入っていたため、お出かけの準備をしていた。
「光、準備は出来たか? 僕とリアナはいつでもOKだよ」
セルフリメイク版を描くに当たって、ツバサは戦災孤児であることを感じさせないほど明るく前向きな少年に、リアナは何処か大人びた金色の長い髪の少女にそれぞれ成長していた。
彼らもまた僕と一緒にお出かけすることになっており、声をかけてくれたツバサに僕は微笑んだ。
「ああ、こっちも準備OKだ。後は柱時計をこうして……と」
少し大きくなったツバサとリアナと共に僕は部屋の後ろにある柱時計の針を指でゆっくりと動かす。
別のセカイに赴く時にはこの柱時計で行き先を指定して行くことになっているためだ。
そして、針を一定の位置に合わせると同時に鐘の音が鳴り、扉が開いた。
「よし、それじゃあ海鳴に出発だ!」
今日の行き先は第97管理外世界 地球の海鳴市――魔法少女リリカルなのはシリーズでお馴染みの街だ。
扉の向こうに広がっている見慣れた景色を前に、僕は親しい人たちとの再会を心待ちにしつつ、一歩踏み出した――。
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第97管理外世界 地球。
クリスマスを迎えた海鳴市は辺り一面が雪景色となっていた。
家族や友達、恋人……人々はそれぞれの大切な人たちと共に、クリスマスと言う特別な日を謳歌している。
そんな海鳴の片隅にある海浜公園が皆との待ち合わせ場所だ。
「おっ、来た来た! お~い、ガンダム坊や! 久しぶりだな」
「あはは……自分よりちっちゃい子に「坊や」って言われるのは、変な感じがするな」
赤い髪をおさげにした少女ヴィータちゃんの言葉に苦笑いしつつも、僕は心の何処かで納得しているのか苦笑していた。
彼女たちヴォルケンリッターは夜天の書と共に悠久の時を生きてきたのだ、年上の女性として認識するのも無理はない。
まあ、それを抜きにしてもガンダム大好き少年だった身としては、この呼び方は内心嬉しいものがある。
そう思いつつニコニコしていると――とても、懐かしい声がした。
「ありがとう、光さん。今年も来てくれたんだね」
ヴィータちゃんの後から歩み寄ってきたのは、栗色の髪を2つに結った少女、高町なのは。
魔法少女リリカルなのはシリーズの主人公で、僕にとってはこの中で一番長い縁の子だ。
「ああ。勿論だよ、なのちゃん。クリスマスは僕にとっても、大切な日だからね」
別の世界での呼ばれ方に慣れたからか、僕はなのはちゃんのことをそう呼ぶことがある。
ここでいう「別の世界」と言うのはまた別のお話になるので一旦置いておくが、どちらにしても僕にとっては大切なことを教えてくれた人であることに変わりはない。
一方のツバサはと言うと、長身の女性シグナムさんと何やらお話をしているようだ。
「久しぶりだな、フリューゲル。しばらく見ない間にさらに腕を上げたようだな」
「リアナの記憶探しの旅で、色々鍛えられましたからね」
奇遇なお話なのだが、ツバサの育て親であるルリア先生はクールビューティーな女性だ。
その関係か、ツバサはシグナムさんのことを頼れる先輩として敬愛しているらしく、時間がある時に剣を教えてもらっているらしい。
シグナムさんもリアナを助けるために頑張っているツバサを気にかけてくれているそうで、良き後輩として時々面倒を見てくれているようだ。
そして、もう一方のリアナはと言うとフェイトちゃんとお話をしているようだ。
「それで、どう? あれからリアナは自分のことで、何か思い出したことはあるかな?」
「ああ、ツバサと一緒に色々頑張ってみてある程度は思い出せたよ。まだすべてではないけれど、大切なことを色々思い出せたと思う」
やはり記憶となると思い当たる節があるのか、フェイトちゃんはリアナに親身に接してくれている。
リアナの方もフェイトちゃんを良き友人だと感じているようで、今でもメール等で定期的に連絡を取り合っているそうだ。
それぞれのやり取りに少し目を向けていると、なのはちゃんからあることを尋ねられた。
「そういえば光さん、はやてちゃんから見てもらいたいものがあるそうなのだけど、良ければ見てあげてもらえないかな?」
「はやてちゃんが? 分かった、どれかな?」
一体、何を見てほしいと言うのだろう?
そう思いつつ僕の前に姿を見せたのは、はやてちゃんと彼女の手の上に佇む小さな女の子だ。
その女の子、リインフォースⅡちゃんはあの夜天の書の表紙に付いていた十字の装飾のそれと同じ紋章が着いた箱を持っている。
「実は昨日、マイスター・はやての部屋から見つかったものなんです」
「見た目からして多分、夜天の書と関わりのあるものなんやろうけど、私らには分からんくて……。それで、光さんやったら分かるかなって思って、聞いてみたんよ」
なるほど、これは確かに謎だ。
正直に言えば、僕にも心当たりはない。
だが、この場にそれを解き明かすことが出来る者はいる。
「う~ん、僕には心当たりはないけどツバサなら何か分かるかもしれないね。ツバサ、良かったらこれを調べてみてくれないか?」
「ああ、任せてくれ。ちょっと借りるよ」
ツバサは古代文明のオーパーツを調べることが得意だ、こういうことには打ってつけだろう。
慣れた手つきで箱を調べること1分後、その謎は解けた。
「う~ん……簡単に言うと、何かの映像や音声を記録して再生するための装置みたいだ。それも、かなり昔の物みたいだよ。この場ですぐに再生出来るみたいだけど、どうしよう?」
箱の正体は分かった今、再生するべきかどうかをツバサははやてちゃんに聞いてみると、彼女は笑顔で頷いていた。
「ほな、お願いするわ。もしかしたら、大切なものかもしれへんからな」
「うん、分かった。じゃあ、再生するからちょっと下がっていて」
かくして、記録されているであろう謎の映像を再生することになるとツバサは箱に付いている紋章に触れ、映像の再生を始める。
すると、箱は微かな音を立ててゆっくりと開き――宙に銀色の髪の女性の姿が映し出された。
それは、この場にいる皆にとって馴染み深い人物であった。
「リインフォース……!」
はやてちゃんがその名を呼んだのは、この場にいるヴォルケンリッターたちは勿論、はやてちゃん自身が馴染み深い夜天の書の意志と言うべき女性・リインフォースだ。
だが、彼女はもうこの世にはいない……はずなのだ。
『お久しぶりです、主はやて。このメッセージは私が消える少し前に、残しておいたものであり、来るべき時まで再生機能を封印した上で貴女のお部屋に保管しておいたのです』
なるほど、それで誰にもこれの正体が分からなかったわけだ。
僕がそう納得していると、在りし日のリインフォースは言葉を続ける。
『未来の貴女と私の名を受け継いだ者、そして、小さな勇者たち――皆、元気にしていますか? これを聞いている頃はおそらく、私は夜空を翔ける祝福の風となっている頃でしょう』
「リインフォース、さん……」
やはりなのはちゃんにも思うところはあるのか、何処か悲し気な表情を浮かべながら彼女の映像を見ていた。
ツバサとリアナもまた、自分たちも知るべき内容だと感じたからか、目を逸らすことなく映像を見続けている。
『ですが、どうか悲しまずに前を向いてください。目を開いて周りを見れば、そこに祝福の風となった私はいます。そして、未来の我が主と騎士たち、小さな勇者たちは勿論、これから出会うことになる新たなご友人たち、私の名を受け継いだ魔導書を見守っております』
「……ありがとう、ありがとうな、リインフォース……」
リインフォースさんが残していったメッセージ、それは未来への希望と願いを込めたものだった。
瞳に涙を浮かべるはやてちゃんにヴォルケンリッターの皆が寄り添う中、メッセージは終盤に差し掛かろうとしていた。
『そして――私は主はやてと出会ったことで世界で一番幸せな魔導書となれたことを、誇りに思います。私に素敵な名前を与えてくださり、本当にありがとうございます。さようならは言いません。どうか、いつまでもお元気で――』
――映像はそこで終わった。
僕たちはしばらくの間、思わず泣き始めたはやてちゃんに寄り添い続けた。
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「堪忍な、皆。私のために寒い中で待っててくれて」
「そんな、とんでもない! 落ち着いたようで何よりだよ」
あの後、僕たちははやてちゃんが落ち着くまで待ち続けた。
そしてそれなりの時間を経て、ようやく落ち着いてきたと言うわけだ。
「ツバサ君、これを再生してくれておおきに。来てくれへんかったら、下手したらお祖母ちゃんになっても見れへんかったかもしれへんな」
「そっか……リインフォースさんのことは光からお話は聞いていたんだけど……凄く優しい人だったんだね」
「そうやな~……私らのために本気で色々悩んでくれた泣き虫さんやったけど、本当に優しい子やった……」
そう、それはあの物語を見てきた僕にも分かることだった。
幾百、幾万、幾億……それどころか、永遠の時を生き続けてきたロストロギア、夜天の書。
彼女はいつしか闇の呪縛によって、禁断のロストロギア・闇の書となってしまった。
だが、その意志までは浸食されることなく、現代まで無限転生を続けてきた。
そして、2年前――八神はやてと言う心優しい主と出会ったことで、その呪縛から解き放たれたのだ。
それは、何かを諦めたくない一心が引き起こした、必然の奇跡だったのかもしれない。
「このような形でアインスに会えるとは思わなかったので、驚きましたが……それでも、会えて本当に良かったと思います」
そして今、そのリインフォースさんの生命は、今こうして生きている新たな魔導書であるリインフォースⅡちゃんへと受け継がれた。
そのことに思うところはあるらしく、リインちゃんは言葉を続けた。
「そして――今なら胸を張って言えます。私は生まれたその日から愛されている存在です、と」
「リイン……リインも、ありがとうな」
はやてちゃんは優しくリインちゃんを抱擁しながら感謝の言葉を言うと、僕も何か言いたくなってきたことから、空を見上げた。
「リインフォースさん――本当なら、もっと色々なことを貴女とお話したかった。だけど、今からでも間に合うのなら聞いてほしい」
雪が舞う空、一切の返事はない。
だが、それでも――僕は伝えたい気持ちを言葉にした。
「僕は――いや、僕たちは貴女のことをずっと忘れない。貴女が教えてくれたことを胸に、限りなく続く未来に向かって進み続けるよ。いつか見た夢を掴むために――」
――想いが伝わったのかどうかは、誰にも分からない。
そう思っていた、その時だ――。
『――ありがとう。皆の旅路に祝福の風が吹くことを、祈っている』
「――えっ?」
風と共にその聞き覚えのある声は聞こえてきた。
間違いない、今のはリインフォースさんの声だ。
最初は僕の気のせいかと思っていたが、どうやら他の皆にも聞こえていたようだ。
「えっと、もしかして私の他にもリインフォースさんの声、聞こえた?」
「なのはも? 私にも確かに聞こえてきた……」
集団幻覚と言うわけではない……では、今のは一体?
その場で議論を重ねる僕たちだったが、はやてちゃんには一切の疑問はなかったようだ。
「――きっと、届いたんよ。今の光さんの声が」
――なるほど、流石は皆の主だ。
これは一本持っていかれたと言うところか。
僕がそう感じていると、そこにリンディさんがクロノ君と一緒に駆け寄ってきた。
「遅くなってごめんなさい! 寒かったでしょう? クロノと一緒にパーティー会場を準備したから、案内するわね」
「あ、はい! ほな、行こか皆!!」
そして、はやてちゃんの言葉に続く形で僕たちはパーティー会場へと歩を進めた。
この日――12月24日、祝福の風は確かに海鳴市を優しく包んだのだ。
今なら自信を持って言える――リインフォースさんは祝福の風となり、夜空から見守っていてくれているのだと。
Fin
「あとがき」
いかがだったでしょうか?
僕自身が精神的に不安定気味だったため、今回は少し短めの内容になりましたが……「悔しい!」、まずはこの一言からですね。
と言うのも、リインフォースさん自身が作中で消えてしまったため、どのようにして本編に出そうかと悩んだ結果、クリスマスに間に合わなかったことですね。
本来ならもっとじっくり描いてあげたかったのですが……まあ、形になっただけ良かったと思います。
人には上手く言葉に出来ない思い出と言うものがありますが、今回の一件でそのことを痛感しつつも「次はもっと上手く表現出来るようになりたい!」と思います。
余談ですが最後のリインフォースさんの声なのですが……ここは一応、僕の中で答えはあるのですが、あえて考察の余地を残す終わり方にしておきました。
何はともあれ、最後まで読んでくださりありがとうございます!
次回ありましたら、またよろしくお願いします。
では、また!