こんばんは、光です。
今夜は紅い瞳に映るセカイと真紅先生の10周年メッセージを聴いたことが切っ掛けで、突発的に描き始めた二次創作の自伝に近いお話をお見せしようと思います。
それなりに長い内容なので、時間がある時に見ていただけると幸いです。
なお、内容にいろとりどりのセカイ、いろとりどりのヒカリ、紅い瞳に映るセカイのお話の核心に触れる部分があるので、それらが気になる方はお気を付けください。
それでは、どうぞゆっくりお楽しみください。
「はじめに」
このお話は僕が精神的に立ち直ってから10年後の今の心情を元にしたお話です。
紅い瞳に映るセカイをプレイ完了し真紅先生の10周年メッセージを聴いてから、突発的に描き始めた二次創作かつ自伝のようなお話ですね。
そのため、ちょっといつもと違う描き方をしている部分もありますので、小説になっているかどうか怪しい部分はありますが、最後まで読んでもらえると嬉しく思います
それでは、どうぞ最後までお楽しみください!
〇
……10年前、僕はその戦争を体感した。
それは、言葉を兵器にした無益で悲惨な争いだった。
すべては、価値観の違いとそれの押し付けによる悲しい事故だった。
その当時から長い時間は経ってしまったが、僕はようやく立ち直って生きている。
紅い瞳の少女や魔法使いの女の子、月の光を宿したガンダムとそれに乗る我が道を行く少年たちとの再会が、僕に真っすぐ今を生きていく力をくれたのだ。
そして今、僕は新しい未来を創るための、新しい旅を始めようとしている。
だからこそ、10年の時が経過した今の僕の心情を綴ろうと思う。
新しい青空へ、新しい翼で羽ばたくそのために!
10 years after~新しい未来へ~
「……やはり、きついかぁ」
この僕、蒼空 光は今、色々なことで悩んでいる。
小学時代から思い描いてきたお話「ツバサ・ストーリア~天空の勇者たち~」を形にするために、小説家を志している関係で自立のことを考え始めたからだ。
だが、僕が今一番悩んでいるのは、そのツバサ・ストーリアのことだ。
だからこうして部屋の中で悩み唸っているわけだ。
「なあ、ツバサ。やっぱり、一部の登場人物の名前が不味いのかな?」
僕が声をかけたツバサと言う子は、空のような青い瞳の少年だ。
不思議な感覚だが、時折こうして自分が思い描いている物語の主人公である彼と、こうしてお話をすることも増えてきた。
これはクリエイターと言う生き物の本能なのだろうか?
そう思う一方で空のような青い瞳の少年ツバサは苦笑いを浮かべていた。
「う~ん、ぼくも色々考えてみたけど、やっぱり創作の先生が言うように参考にしたお話の登場人物と名前が同じなのは、首をかしげる人もいるんじゃないかな。変えたくない気持ちも分かるけどね」
「そっかぁ……そうだよな。クロノに関しては、名前の元ネタと性格は違うんだけどなぁ~……」
僕は髪を掻きむしりながら答えた。
今名前に出したクロノと言うのは、ツバサのライバルとなる少年のことだ。
彼の名前の元ネタ自体は「黒いライバルだからクロノ」と言うものもあれば、漫画版エレメントハンターのクロノ・ジルのことから由来している。
だが、どうも創作の先生からは魔法少女リリカルなのはの方のクロノと思われたらしい。
『光さんは他作品のキャラから名前を持ってくる癖があるよね』
……創作の先生から言われた言葉だが、否定は出来ない。
ツバサ・ストーリアと言う物語をより良い形で描き切るためには、登場人物の名前は一部変えた方が良いのかもしれない。
だが、中にはクロノのように変えたくない子もいる。
故に、だからこうして毎日のように思い悩んでいるのだ。
「ちょっと休憩した方が良いんじゃないかな。光はこのところ、ずっと悩みっぱなしで見ていて心配だよ」
「そうだな……ちょっと休むか」
まだ悩みに答えは出ない。
だが、ツバサの言葉にも一理ある。
昨日なんか身体の調子が悪くて横になったくらいには、悩みっぱなしだったのだ。
これではいつか、バッタリ倒れてもおかしくはない。
そうなる前に休もう、そう感じてお茶を汲みに行こうとした時だ――。
「――どうしたんだ? そんなに難しい顔をして」
――ツバサとは別の声がした。
凄く懐かしい声だ、聞き間違えるはずがない!
僕が振り向いた先には、制服の上から白衣を着た紅い瞳の少女が微笑んでいた。
「真紅先生、なのか……?」
二階堂真紅。それが、その少女の名前だ。
10年前に好きになったPCゲーム「いろとりどりのセカイ」シリーズのヒロインで、僕にとっては先生のような人だ、忘れられるはずがない。
僕が敬愛の想いを込めて「真紅先生」と呼んでいる少女は微笑む。
「ああ、その通りだ。お前が私と悠馬のお話を最後まで読み終えてくれたと聞いたから、こうして会いに来たんだ。久しぶりだな、光」
「そうだったのですね……。あ、ちょっと待っていてください、お茶淹れてきます!! ツバサはそこでテーブル用意しといてくれ!!」
「え? あ、うん。でも、そんなに慌てたら階段で――」
ツバサがそう言いかけた時には、もう手遅れだった。
「あ――いででっ!」
――急ぐあまりに、階段を踏み外して転げ落ちてしまった。
こんな初歩的なミスをしたのはいつぶりだろう?
そう思いながらも、僕は痛む足を摩りながらリビングへと歩を進めた。
〇
「やれやれ、あわてんぼうなところは相変わらずだな。でも、お前がお前らしさを失わずに元気でいてくれて、良かったよ」
「あはは、恐れ入ります」
お茶を淹れて戻ってきた僕は、ツバサや真紅先生と机を囲んでお話をしている。
ツバサは初めて会った真紅先生を前に最初は緊張していたが、今は打ち解けてきたらしく、僕と一緒にいる時と同じ自然な雰囲気でいる。
「――と、言うわけで光は今、ぼくが主人公のお話のことで悩んでいるみたいなんです」
「なるほどな。光が難しい顔をしていたのは、そう言うことか」
そうこうしている間に、ツバサが真紅先生に僕が今抱えている問題のことをお話してくれている。
「すみません、本当なら僕が自分で説明するべきだったんですけど……」
面目ない気持ちでいっぱいだ。
僕が口下手なばっかりにツバサには手間をかけさせてしまったのだ。
柳眉を下げて頭を掻いている僕に、真紅先生は僕に顔を近付けてきた。
「なあ、お前はどんなお話を描いているんだ? 良かったら、私にも見せてほしいな」
「えっ、でも……」
「私はお前の先生で、私が大好きな悠馬が描いているお話もいっぱい読んできたんだ。何か、アドバイスも言えるかもしれないぞ」
そう言えばそうだった。
真紅先生の旦那さんであり、いろとりどりのセカイシリーズの主人公である鹿野上悠馬は今、紆余曲折あって小説家となった。
僕にとってはあのセカイを一緒に旅した親友である彼の描いたお話が完成した時、最初の読者になるのが真紅先生だ。
悠馬が描くいろとりどりの物語を読んできたこの人なら何か、参考になる感想をくれるかもしれない。
そう感じた僕は微笑んで席を立った。
「分かりました、ちょっと待っていてください!」
大急ぎでPCを立ち上げ、色々な人にこのお話を紹介する際に描いた文章と、今描いている第1章の本編の一部を僕は印刷し始めた。
そして、印刷が終わった文章を大急ぎで1階にあるプリンターへ取りに行き、部屋へと戻ってきた。
我ながら「普段面倒くさがりな癖に、こういう時には行動が早いな」と思いつつも、ツバサともう1人、真紅先生に資料を手渡した。
「ありがとうな、私のために急いでくれて。早速読んでみるよ」
その言葉は何よりも嬉しかった。
この物語は色々な人に読んでもらいたいと考えていたのだが、それを大好きな人に読んでもらえることは、物書きからすれば幸せなことだと思うからだ。
しばしの静かな時間の中でそう感じていると、読み終えた真紅先生は早速感想をくれた。
「そうだな、空の世界で冒険するお話は初めて見たけれど、興味深いものだったよ。形になると、今よりもっと面白くなると思う。続きが気になるけど、それは完成までの楽しみに取っておくよ」
「ありがとうございます。それで、僕が今悩んでいるのが、一部の登場人物の名前なのですが……」
僕はこのお話で悩んでいる部分である登場人物の名前を指差した。
何処でどういう風に悩んでいるのかを、真紅先生に説明する必要があるからだ。
「ふむふむ」と相槌を打ちながら、彼女は僕の悩みを聞いてくれた。
一通りの説明を終えると、真紅先生は再び僕と向き合った。
「なるほどな、光がこのお話を良い形にしたいと思う気持ちも分かるよ。だから、登場人物の名前のことで本気で悩んでいることが、伝わってきたよ」
「それで、光はこれからどのようにしてその悩みに答えを出せば良いのでしょう?」
真紅先生は僕の事情を把握してくれた。
ツバサは僕に助け船を出してくれた。
では、これから僕はどうすれば良いのだろう?
そう考えていた時に、答えは出てきた。
「そうだな、光は難しく考えてしまう部分があるから、もう少し簡単に考えて良いと私は思うな。変えたくないところはそのままで良い……でも、どうせならその子に似合う素敵な名前を付けてあげたらどうだろう?」
「その子に似合う素敵な名前……」
その言葉を聞いた瞬間、僕はきっとマヌケとさえ形容出来るような、ハトが豆鉄砲を食らったような、そんな感じのきょとんとした顔になっていたと思う。
そんな僕に真紅先生は言葉を続けた。
「ああ、そうだ。そのツバサ・フリューゲルと言う子のために、素敵な名前を考えてあげた時と同じだよ」
ああ、そうだった……僕は少し前、まだ名前だけだったツバサのために、素敵なフルネームを創作の先生と一緒に考えていた。
そして、創作の先生のアイデアを取り入れる形で、彼にツバサ・フリューゲルと言うフルネームを与えたのだ。
最初は「それだと名前の意味がツバサ・つばさになってしまうのでは?」と疑問の声を挙げたのも、今となっては懐かしいことだ。
そんな僕に創作の先生は「比翼連理のようなもの。フリューゲル一族そのものと言う意味だよ」と説明してくれたことで、僕は納得した。
これが、ツバサ・フリューゲルと言う青い瞳の少年の名前が決まった経緯だ。
要は彼のために真剣に素敵な名前を考えたように、今度は他の登場人物にも同じことをしてあげれば良い。
真紅先生が僕に伝えたいことは、そう言うことだ。
「はは、やっぱり貴女は凄いですね。ずっと解けなかった問題が解けたような、そんな気持ちですよ」
きっとこの時、僕はツバサと真紅先生の前で和らいだ笑みを見せていたと思う。
僕が抱えていた問題に解決の光明が見えた。
それを確信したのか、真紅先生は微笑んで僕の頭を撫でてくれた。
「そうでもないさ。私の物語を最後まで読んだ光なら分かると思うけど、私は凄くなんかない。悠馬がいないと何も出来ない泣き虫だ……」
知っている……あの物語を最後まで読んだ僕は、そのことをよく知っている。
悠馬と離れ離れになってしまった時、真紅先生はいつも悲しい顔で泣いていた。
そんな先生のために僕がしてあげられたことは、少しでもお話を早く読み進めて悠馬と再会させてあげることだけだった。
そのことにも申し訳なさを感じていた時に、真紅先生の言葉は僕の心に光を灯してくれた。
「だけど、私を慕い大好きだと言ってくれる生徒であるお前の力になれたのなら、嬉しいよ。こんな私でも少しは強くなれたんだって、そう思うな。ありがとう、お前のおかげだよ」
「真紅先生……僕の方こそ本当に、本当にありがとうございます! 貴女のおかげで、やるべきことが分かりました!!」
すぐに名前が思い浮かぶわけではないけれど、だからこそツバサ・ストーリアと言う物語の登場人物たちには、彼らに似合う素敵な名前を与えてあげれば良い。
それを教えてくれた真紅先生には、感謝の気持ちでいっぱいだ。
涙を必死に堪えている僕に、ツバサはふとある疑問を先生に告げた。
「そう言えば、真紅さん。その悠馬さんは今はどうしているんです? 今日は一緒じゃないようですけど……」
そう、そのことは僕はあえて口には出さなかったけど、この場には真紅先生がこの世界で一番大好きな人、鹿野上悠馬その人は何処にもいない。
まさか、また何かあったんだろうか? 心配している僕だったが、その不安はすぐに杞憂に終わった。
「あぁ、そうだった。実は私がお前とツバサをある場所に連れていくことになっていて、悠馬は先にその場所で私たちを待っているんだ。良かったら、今から私と一緒に来てくれないか?」
「それは良いのですが……何処に行くと言うのです?」
そうか、悠馬がここにいない理由はそう言うことだったのか。
事情を理解した僕は一安心したが、今から何処へ行くと言うのだろう?
怪訝な顔を浮かべる僕に、先生は答えてくれた。
「そうだな、一言で言い表すのなら……そう、お前がずっと行きたいと思っていた南紀白浜だ」
「何ですって……!? それは本当なのですか!?」
南紀白浜……それは、和歌山にある南の海の街で、僕が子供の頃に夏の家族旅行で毎年行っていた場所だ。
真紅先生たちが住んでいる風津ヶ浜に似ている場所もあることや色々な思い出がある海の街であることから、いつか皆であの場所に行きたい。
そう夢見ていた矢先にその夢が叶うかもしれない時が来たことで、動揺していた僕をツバサは落ち着かせてくれた。
「光、1度落ち着くんだ。とりあえず、旅の準備をしよう」
「そ、そうだったな。真紅先生、少し待っていてください。すぐにツバサの分も一緒に準備してきますね!」
今日は何だかドタバタが続いているなぁ……でも、そんな1日も悪くはない!
大急ぎで準備をしている僕の後ろで、真紅先生はツバサとお話をしていた。
「ごめんな、急にお前や光を旅に誘って。だけど、どうしてもお前たちに来てほしかったんだ。私が光と出会ってからもう10年だから、何か特別なことをしてあげたい。そう思ったから、こうして声をかけに来たんだ」
「そっか、そう言えば光も真紅先生たちと出会って10年後の今に何か、特別なことをやりたいって言っていたから、良いタイミングですね」
10年……? そうか、真紅先生や悠馬たちと出会って、もう10年も経つのか。
なるほど、そりゃあ僕にも思うところはあるわけだ。
ましてや、ようやく立ち直って前を向いて真っすぐ今を生きていけるようになったんだ。
立ち直ってから最初の夏である、今年の夏は何か特別なことをやりたい……よく、口に出していた言葉だ。
その特別なことをツバサや真紅先生たちと一緒に出来る……それが、僕は凄く嬉しく感じていた。
「これで、よしと! ツバサ、真紅先生! 準備出来ましたよ!!」
旅行用の大きめのカバンを担ぎながら、僕は2人に笑顔を見せた。
勿論、土足で行くわけにはいかないから、靴だってちゃんと手にしている。
いよいよ始まる、夏の旅に胸を高鳴らせている一方で、真紅先生は両手を広げた。
「よし、さあ行こう! いつか見たあの夢を掴む旅を始めるその前に、私たちの10年を振り返った上で、次の10年と言う新しい未来への思いを馳せる旅。その始まりだ!!」
真紅先生の言葉と共に眩い光が広がっていく。
上手くは言えないのだが、この光が僕たちを目的の場所へと導いてくれているようだ。
不思議だ……僕は前にも、この光を見たことがある気がする。
アムロさんが言っていた人の心の光にも似ている気がするけど、あの時と違って色々な人達の生命の鼓動と心の光を感じる……幻ではない、確かな暖かさを感じるのだ。
その光をしっかりと見つめているツバサは、何を感じているのだろう?
初めて見る景色に戸惑っていないだろうか?
そう思っていると、彼は僕に笑顔でピースサインを見せてくれた。
「ぼくなら大丈夫だよ。だから、光も怖がらずに行こう!」
「ああ、任せとけ!」
青空のように晴れ渡る笑顔。僕や真紅先生も自ずと笑顔になっていた。
僕はツバサ・フリューゲルと言う青い瞳の少年に、心優しい勇者になってほしいと願っていたが、その願いの通り彼は少しずつ成長して行ってくれていることに、安堵するのだった。
「――ほら、見えてきたぞ!」
眩い光のその先を見つめる真紅先生の前に、見覚えのある景色が広がり始めていた。
それは、僕にとって新しい故郷になるかもしれない最果ての港町だ。
さあ、いよいよ魔法のような素敵な時間が始まる。
そう胸を高鳴らせていた時――僕たちは、その地へと降り立つのだった。
〇
――眩い光から飛び出した先に広がっていたのは、白い砂浜と青く輝く空と海。
間違いない、僕はこの場所が何処なのか、すぐに理解出来た。
「……本当に南紀白浜だ……」
子供の頃と変わらぬ美しい景色を前に、僕は感極まって涙が溢れてきていた。
ずっと会いたかった人に会えた上に、ずっと行きたかった場所に来られたのだ。
やはり、思うところもあったのだろう。
そんな僕の前に見覚えのある人影が現れた。
「――真紅、お疲れ様。俺の友達を連れてきてくれて、ありがとう」
「悠馬! 悠馬も、準備の方で頑張ってくれたんだよな。本当にありがとう」
悠馬――間違いない、鹿野上悠馬だ。
真紅先生と同じように、ずっと会いたいと思っていた親友のような存在だ。
しばしの間、彼の元気そうな姿を見ていると、ツバサが僕の裾を引っ張っていた。
「行ってあげなよ。悠馬さんにも会いたかったんだろ?」
ありがとう、ツバサ。僕の想いを汲んでくれたんだな。
何も言わずに笑顔で頷くと、僕はゆっくりと砂浜を歩き始めた。
そして、同じように僕の方へと悠馬も歩み寄ってくれる。
お互いに手が届く距離まで歩を進めると、自然と悠馬に手を差し伸べていた。
「――こうして会うのは久しぶりだな、悠馬」
「ああ、本当に久しぶりだ。光も元気そうで何よりだ」
がっちりと交わす握手。
サムズアップと握手は敬愛の証として大切にしてきた僕が、こういう時に親友と交わすことと言えば、これに限るだろう。
そう考えていた時に、真紅先生と一緒にこちらへ歩み寄ってきたツバサへと、悠馬は視線を向けていた。
「お前と一緒に来たその子が、ツバサか?」
「ああ、そうだ。僕の頼もしく掛け替えのない相棒、ツバサ・フリューゲルだ」
自慢の我が子――とも言えるのだが、一言でツバサを言い表すのなら、間違いなくこの言葉だろう。
僕は隣まで来てくれたツバサの肩に、優しく手を添えた。
流石に照れ臭かったのか、顔を赤くしているツバサの視線に合わせるように、悠馬は腰を低くした。
「えっと……初めまして、鹿野上悠馬さん。ぼくはツバサ・フリューゲルです」
「ああ、こんにちは。そして、初めまして。君のことは朝に、リアナと言う子から聞いたよ。お話で聞いた通り、頑張り屋さんのようだな」
「えっ、リアナちゃんがここに来ているのですか?」
リアナ・セリシール。僕にとってはツバサと同じように馴染み深い名前だ。
ツバサ・ストーリアを描くに当たって、ツバサのために最高のヒロインを登場させてあげようということで、生み出した女の子だ。
朝から姿が見えないと思いきや、すでにこっちに来ていたのか。
そう合点が行ったところで、真紅先生が砂浜の方を指差していた。
「ああ、光を元気付けてあげたいということで、少し前から私に連絡をしてくれてな。今は向こうで青空たちと一緒に準備をしてくれているよ」
「そうだったのですね。ところで、今は何の準備をしているのです?」
そう、それは先ほどから気になっていた言葉だ。
悠馬やリアナ、青空たちはここで何の準備をしているのか、それが気がかりなのだ。
「なぁに、行ってみればすぐに分かるよ。ここで立ち話も何だし、早く行こう」
――なるほど、「貴方自身が、確かめて」と言うことか。
そう言うことなら、善は急げだ。
真紅先生に頷くと、僕たちは皆が待っている場所へと歩を進めた。
一体、向こうで何が待っていると言うのだろう?
そんな予想を膨らませながら、この真っ白な砂浜を歩いていくのだった。
〇
「――あ! パパとママだ!」
リアナと夕方の海辺で一緒に遊んでいる少女、二階堂青空は真紅先生と悠馬の娘さんだ。
ちょっと泣き虫な部分はあるけれど、青空ちゃんが頑張り屋さんでもあることは、僕はよく知っている。
リアナと一緒に駆け寄ってきたその子を、真紅先生は優しく受け止めた。
「おぉ~、青空! お母さんがいない間、良い子にしていたか?」
「うん! リアナさんと準備をした後で、一緒に遊んでいたの」
本当に不思議だ。あの子を見ていると、こちらも自然と笑顔になっている。
真紅先生や悠馬が幸せな日々を過ごせているのも、頷けるというものだ。
「……良いな」
真紅先生と青空ちゃんの幸せな雰囲気を見ていてついつい本音が出たのか、僕はそんなことを呟いていた。
「ああ、本当に良いものだ。だけど、真紅や青空には手は出すなよ?」
――独り言は聞こえてしまっていたらしい。
僕の耳元で苦笑交じりにそう言う悠馬であったが、僕は凄い勢いで首を左右に振った。
「お、おいおい! 冗談は止してくれ! 僕は真紅先生と悠馬が青空ちゃんと幸せにしていることを望んでいるんだ! そんなことは絶対にしないよ!!」
あぁ、そう言えば悠馬は鈴さんから「めんどくさい親父になりそうだ」と言われていたんだっけ。
いや、それを抜きにしても僕の言葉は本音だ。
頼む、信じてくれ悠馬。
そんな切実な想いを汲んでくれたのか、真紅先生はジト目で悠馬に顔を寄せた。
「こらこら、冗談が過ぎるぞ。光が困っているじゃないか」
「あ、ああ。すまない、ちょっとからかい過ぎたよ」
「いやいや、分かってくれたならそれで良いんだ」
とりあえず、一安心したところで僕はここでやるべきことを思い出した。
早速青空ちゃんに視線を合わせ、それを実行する。
「初めまして、青空ちゃん。僕は蒼空 光。かつて、真紅先生の生徒だった男だ」
「うん、初めまして光さん! 私は二階堂青空って言うの。よろしくね、光さん!」
「ああ、よろしく!」
そう、僕がこうして青空ちゃんと会うのは初めてだから、自己紹介の挨拶は必要なのだと思ったのだ。
本当に不思議な子だ、色々な人に笑顔をくれる力をこの子は持っている。
僕がそう感じていると、青空ちゃんと一緒にいたリアナとツバサはお話をしていた。
「お待たせ、リアナちゃん。とりあえず、光と一緒にここへ来たけど、これから何が始まるんだい?」
「うふふ、それはね。今から分かることだよ、ツバサ君。ほら!」
リアナがそう言うと同時に――花火が打ちあがり、夕陽に照らされつつある白浜の空にいろとりどりのヒカリを灯した。
なんだなんだと言わんばかりに僕があたふたしていると、今度はクラッカーの音が鳴り響いた。
「蒼空 光! 精神の回復と10年ぶりの再会、おめでとう!!」
あぁ! そう言えば、そうだった。
真紅先生と出会ったのも10年前、僕が精神をやられたのも10年前。
今こうしてここに集まっているメンバーの殆どは、僕が10年前に物語を通して出会った人達だ。
真紅先生たちのお祝いの言葉を耳にした僕は、嬉しさのあまりに涙を浮かべていた。
「ありがとう……! 皆、本当にありがとう!!」
この10年の間、辛くて悲しいことが積み重なったことから、生きることを投げ出してしまいそうになったこともあった。
だけど、諦めたくない一心でここまで頑張ってきて、本当に良かった。
10年の時を越えて皆にまた会えて、本当に嬉しい。
色々な想いが光り輝いたその時、僕が皆に伝えられる気持ちはその言葉だ。
そして、その言葉はこの花火を打ち上げてくれている人にも伝わったようだ。
『いや~、GXで花火の打ち上げを手伝ってくれと頼まれた時は驚いたけど、気に入ってもらえて良かったぜ!』
その言葉と共に空から舞い降りてきたのは、GX-9900 ガンダムXだ。
僕が初めて見た時と違って色は所々がライトブルーに変わっているが、その時から変わらずの美しさと精悍さを誇っている。
降り立ったGXから姿を見せてくれたのは、機動新世紀ガンダムXの主人公である少年、ガロード・ランだ。
相変わらず、彼が大好きな女の子であるティファ・アディールも一緒だ。
2人がGXから降りてこちらに歩み寄ってきてくれた際に、後に続くように空からも何人かが舞い降りてきた。
皆、僕にとって馴染み深い人達だ。
「ガロードにティファ。なのはちゃんたちも……あの花火は、君たちが?」
「はい。花火の打ち上げと準備は悠馬さんたちが進めてくれて、打ち上げは私たちがやりました」
「光さんはこの10年の間、私たちの物語に触れてここまで頑張ってきたって聞いたから、これは私たちからのお礼でもあるんだよ」
そう、なのはちゃんの言う通りだ。
ガンダムXにリリカルなのは、いろとりどりのセカイ……この10年の間で触れてきた物語に勇気付けられたからこそ、僕は頑張って生きてこられた。
彼らがいてくれたからこそ、ツバサ・ストーリアを最後まで描くという夢も諦めずに、頑張り続けることが出来るんだ。
あっという間のような10年だったけど、こうして振り返ってみると、凄く長い旅をしてきたんだなと思う。
「だからさ、光。今度はお前が俺たちに、お前が描いたツバサとリアナの物語を見せてくれよ。俺たち、ずっと待っているからさ」
「ああ……ああ! 約束だ、皆!!」
涙はそのまま、だけど最高の笑顔で僕は皆と約束を交わす。
いつ実現するか分からない夢だけど、それでも僕は諦めずに夢への旅を続けていこうと思う。
幸い、僕にはツバサ・フリューゲルとリアナ・セリシールと言う名の、頼りになる最高の相棒が、いつもいつでも傍にいて一緒に頑張ってくれる。
だから、もう少し頑張ってみよう。
そう決意を新たにしている時に、真紅先生が優しく声をかけてくれた。
「さあ、皆。お腹が空いただろう? そろそろ皆でお夕飯にしよう」
「ええ、そうしましょうか! 行こう、皆!!」
僕たちは悠馬たちが準備してくれていたパーティー会場へと歩を進めた。
すると、いつの間にか用意されていたステージには、僕にとって凄く馴染み深い顔の青年が、青い髪の少女2人と共に佇んでいた。
「お、おいおい、まさか!」
「はい、無論そのまさかですよ、光さん!」
ステージの上にいる3人はスポットライトで照らされると同時に、何かのヒーローの真似でもしているのかと突っ込みたくなるような決めポーズを見せた。
「今夜のメインディッシュ、マグロ料理の調理はこの僕、ヴァイスとリア先輩、ヘレナさんの3人にお任せあれ!」
――久しぶりに直接会った僕の親友、ヴァイスさんは板前さんのようなカッコで爽やかな笑顔を浮かべていた。
数か月前、ヴァイスさんは南紀勝浦に移住して精神のリハビリを始めた。
海が綺麗で静かな場所なのだ、きっと彼は元気になれるだろう。
そう思いつつも、僕はヴァイスさんのリハビリが上手く行くことを望んではいた。
いたのだが……それにしても、か、彼はいつの間にこんなに逞しくなったんだ!?
劇的ビ〇ォーア〇ターにも程があるんじゃないのか!?
そう突っ込む暇さえ与えないと言わんばかりに、彼ら3人は僕たちの前でマグロの解体ショーを披露し始めた。
「ほあたぁっ! 奥義! 百烈斬ッッ!!」
いやはや……見事な腕前である。
この直後に間違えて照明1つを両断してしまった時はどうなることかと思ったが、無事に成功したようで僕は一安心した。
……この時のマグロの味はどうだったのかって?
素晴らしいものだった、この一言に尽きるだろう。
だが……こんなにワイルドで逞しくなったヴァイスさんの姿は、色々な意味で忘れられない思い出となった。
〇
時刻はすっかり夜だ。
空には月と星が光り輝き、この南紀白浜を優しく照らしてくれている。
僕たちは後片付けをした後、ヴァイスさんが予約しておいてくれていた宿泊施設に移動するその前に、今度はここで開催される花火大会を見ていくこととなった。
「何だか、不思議な気持ちだね。1日に花火を2回も見るのは」
「うん。でも、私はそう言うのも良いと思うな」
ツバサとリアナは良い雰囲気になっているようだ。
良かった、あの2人がここを気に入ってくれて。
そのことを嬉しく感じていると、僕の隣に真紅先生が座ってきた。
「どうだ? 光。私たちとの特別な夏は楽しめているか?」
「ええ、最高です! 本当に嬉しくて楽しいですよ!!」
真紅先生が呼んでくれて、皆と過ごす南紀白浜の夏だ。
最高としか言いようがない。
10年の時を越えて揃った皆とまた会えただけでも嬉しいのに、こうして楽しく過ごせていることが、幸せに思う。
だけど……その前に、真紅先生にどうしても伝えたい言葉があった。
「でも……ずっと、貴女に伝えたい言葉があったんです。ごめんなさい……真紅先生があんなに苦しんでいた時に、僕に出来たことは、貴女の物語を最後まで読み終えることで、ハッピーエンドに導いてあげることしか出来なかった……本当にごめんなさい……」
そう……いろとりどりのヒカリ完結編で真紅先生が苦しんでいた時に、僕はあの物語を最後まで読み終えてハッピーエンドに導いてあげることでしか、真紅先生を助けることが出来なかった。
それをずっと悔やんでいたからこそ、僕はそのことで真紅先生に謝りたかった。
笑顔から打って変わって、今にも泣き出しそうな顔をしている僕をどう思うだろう?
そう思っていると――。
「光、顔を上げてくれ」
――変わらず笑顔の真紅先生は、指先で僕の涙を拭ってくれた。
「私はお前に感謝している。お前が私や悠馬たちのために本気で思い悩んでくれて、一緒にハッピーエンドへ進んでくれたこと、本当に嬉しいんだ」
目じりに涙を見せながらだが、真紅先生は笑顔だ。
悲しかったことや嬉しかったことも、紛れもない真実なのだ。
優しい笑みで僕を見つめている真紅先生の姿が、それを物語っている。
「そして、最後まで私たちの物語を読んでくれて、本当にありがとう。お前が私たちの物語を最後まで読んでくれたおかげで、私と悠馬、青空たちは凄く、凄く幸せだ」
「真紅先生……」
正直、紅い瞳に映るセカイをやるまで凄く不安だった。
だけど、ある人の言葉が切っ掛けで僕はこの物語を最後まで読む決意が出来た。
その決意が今、あの時自分自身にかけてしまった呪いを解く力になった。
僕はこの時……ようやく、真紅先生と悠馬、青空ちゃんたちに笑顔を届けることが出来たと言う実感を得たのだ。
「それに、私たちの物語を読んでから、光が立ち直って前を向いてくれるようになったと聞いた時、凄く嬉しかったよ。だから、どうか光も前を向いて元気でいてほしいんだ。私たちが今、そうしているようにな」
「ええ……ええ、勿論です! ツバサとリアナたちのためにも、出来る限り前を向いて生きていこうと思います!」
ずっと心残りだった僕の想いは、真紅先生に伝えることが出来た。
そして、これからは出来る限りは前を向いて元気でいよう。
そう考えていた時に、青空ちゃんが空を見上げた――。
「あ~! 見てママ、花火だよ!!」
「あぁ、本当だ。すごく綺麗だな!!」
この南紀白浜の夏のお約束と言える花火が、夜空にいろとりどりのヒカリを輝かせた。
皆それぞれ、花火を見上げて満面の笑顔を見せている。
かくいう僕も笑顔でそれを見上げていた。
やはり、白浜の花火はいつ見ても綺麗だ。
そう思っていた時のことだった。
「こうして花火を見ていると、私と悠馬とお前とで、花火を見ていた時のことを思い出すな」
「ええ! 確か、商人の町と風津ヶ浜で見ましたね」
そうだ。場所は違えど10年前も僕はあのセカイで、このように花火を真紅先生たちと一緒に見上げていた。
不思議な気持ちだ、先生と白浜の花火を見るのは初めてなのに、懐かしさも感じる。
ある種の感慨深さを僕は感じていた時に、真紅先生は問いかけてきた。
「私たちもそうだけど、次の10年後の光は、どうなっているんだろうな」
「僕、ですか? 僕は真紅先生が悠馬や青空ちゃんと一緒に元気でいることや、ツバサとリアナのお話を最後まで描くことを祈っていましたが、僕自身のことは……すっかり、忘れていました」
10年後の僕がどうなっているのか。
それは、この時初めて意識したかもしれない。
僕はニュータイプでもなければ、魔法使いでもない。
だから、未来のことは何も分からない。
だけど、それでも確かな願いはあった。
「でも、願うことなら次の10年先も僕は元気でいたい。そして、ツバサとリアナのお話を描いて大切な人達に見せてあげたい。その未来を実現させたいです」
そう、これが僕の次の10年は勿論、ずっと続いていく未来への願いだ。
それを幻で終わらせないために、出来ることはやりたい。
そして、形にした物語を大切な人達皆に読んでもらいたい。
それが、僕の変わらぬ願いだ。
「そうか、光にも良い夢があると分かったから、私は嬉しいよ。もしそのお話が完成したら、私や悠馬たちにも読ませてくれるだろうか?」
「ええ、勿論です! 真紅先生と悠馬はここにいる皆と同じように、僕にいろとりどりのセカイとお話を見せてくださりました。今度は僕が、真紅先生たちに色々なセカイや物語を見せてあげたい! そして……」
感情の高ぶりからか、自然と体が立ち上がる。
次の10年、次の未来へ想いを馳せながら、僕は想像力を働かせる。
そして、夜空に輝く花火に手をかざした。
「そして、真紅先生が教えてくれた「生きるとは、自分の物語をつくること」を、僕なりにやってみたい。それが、今の僕の夢です」
無限に広がるこの世界の片隅で見つけた、僕の夢。
今は小さいかもしれないけれど、いつかはビッグバンの如く大きな夢になる可能性だってある。
そんな想いを込めて、僕は自分の夢を言葉にした。
「うん、元気があってよろしい。光がツバサやリアナたちと一緒に思い描いていくお話、私は楽しみにずっと待っているよ。そして――。」
悠馬と青空ちゃんが見守る中で、真紅先生は僕の手を優しく包んでくれた。
暖かくて優しい気持ちが、僕に伝わってきた。
そして、真紅先生は僕に魔法の言葉をかけてくれた。
「――お前は独りぼっちなんかじゃない。私たちはいつもいつでも、光と一緒にいるってことを、覚えていてほしいな。そのことを、次の10年後も覚えていてくれると、嬉しいよ」
「ありがとう……本当にありがとう、真紅先生! ツバサ・ストーリアが形になったら、必ず見せに行きますからね」
それは、涙を流しながら交わしたひと夏の約束であり、新しい未来への想いを馳せた言葉だ。
その言葉がきっと、僕が望んだ未来への道しるべになってくれる。
だから、もう少し頑張ってみよう。
生きるとは、自分の物語をつくること。
それを教えてくれた真紅先生や物語を通して出会ってきた人たちの想いに答えるためにも、そして、小学時代から思い描いてきたお話であるツバサ・ストーリアを形にするためにも。
その夢に向かって、羽ばたいてみよう。
僕はそう強く決意した。
「勿論、出来たら俺にも見せてくれよ。お前が描いたお話がどんなものなのか、俺も読んでみたいんだ」
「あはは、あったり前だろ! 任せとけ、悠馬。最高に面白いやつを描いてきてやるよ。青空ちゃんも、楽しみにしていてくれたら、嬉しいな」
「わ~い! ありがとう、光さん!!」
勿論、悠馬と青空ちゃんにもツバサ・ストーリアは読んでもらいたい。
僕の近くで仲良く花火を見ているツバサとリアナが、これからどんな未来を探し求めてそれを掴み取るのか、作者である僕もそれを確かめてみたい。
そう言う意味では、僕はツバサとリアナたちと一緒に旅をしていると言えるだろう。
そうだ、「いつか見たあの夢」を目指す僕たちの旅は、まだ始まったばかりだ。
このひと夏の旅で、僕はそれを学んだと思う。
そう考えていた時だ――。
「お~い、皆! 花火が上がっている間に記念写真撮ることになったから、一旦集合だ! さっさとしないと、花火終わっちゃうぜ!!」
――ガロードの呼び声を耳にした僕は、笑顔で頷いた。
ゆっくりと立ち上がる真紅先生もまた、優しく微笑んだ。
「そうか、それは良いな。悠馬、青空、光。私たちも早く行こう」
「ええ、勿論です! ツバサ、リアナ! 今から記念撮影するぞ!!」
「あ、うん! すぐ行くよ」
ツバサとリアナにも声をかけると、僕たちは駆け足で集合した。
ヴァイスさんがカメラの準備をしていてくれていたらしく、僕たち皆が揃った時にはもう準備が完了していた。
「よ~し、皆揃いましたね! それじゃあ、撮りますよ~!!」
三脚で固定したカメラの撮影を数秒後に設定したヴァイスさんは、僕たちの下へと駆け寄って僕の隣に立った。
刻一刻と迫る撮影の瞬間を前に、僕は笑顔で宣言した。
「はい、それでは皆さんご一緒に! いちたすいちは……」
「じゅういち~!!」
花火を背景に映し出された一枚の写真に、僕たち皆の笑顔が写った。
ツバサとリアナ、真紅先生と悠馬に青空ちゃん、ガロードとティファ、なのはちゃん、ヴァイスさんとリア先輩にヘレナさん。
そしてこの僕、蒼空 光。
皆それぞれ、明るくて最高の笑顔を見せていた。
この日、僕たちに忘れられない大切なひと夏の思い出が出来たのだった。
10年の時を経た今、1つの時代は終わりを迎えた。
そして、僕たちは新しい未来に向かって羽ばたき始めた。
僕たちはこの先も生命の炎を燃やして、いつか見たあの夢を目指して旅を続ける。
過去には戻れないし、未来は見えないけど……これだけは確かに言えるだろう。
僕たちには、いろとりどりの空を翔ける翼がある。
そして今、子供の頃に思い描いた夢を掴むために――僕たちはここにいる!
~Fin~
Thank you all~蒼空 光より、今まで出会ってきた大切な人達みんなへ~
「あとがき」
はい、「10 years after~新しい未来へ~」はいかがだったでしょうか?
このお話は数日前にプレイ完了した紅い瞳に映るセカイと、真紅先生の10周年メッセージを聴いていて、「上手くは言えないけど、何かお話を描きたい!」、「今年の夏は何か特別なことをやりたい!」と感じたことから、急遽描き始めたものです。
最近の僕のツバサ・ストーリアに関する心情及び10年前から今に至るまで大好きになった作品であるいろとりどりのセカイやガンダムX、リリカルなのはの登場人物たちも交えて描いた結果、2日間で形になりました。
もしかしたら、「内容がカオスじゃないか?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが……ほら、「物語は多少カオスな方が面白い」って言うじゃないですか、所謂それです!(僕という奴は、ま~た誰かの受け売りをする!)
ただ、真紅先生に伝えたい想いの部分や、ツバサとリアナや2人のお話に関する部分は、かなり力を入れて描いたのは、本当のことです。
そう言う意味では、このお話は二次創作であると同時に、ある種の自伝的なお話と言えるかもしれませんね。
他にも、「1度自分の可能性を信じてお話を一本描いてみよう!」と思い立ったことも、このお話を描き始めた切っ掛けなのですが、「何が何でも形にするぞ!」と気合入れて描いて本当に良かったと思います。
もしかしたら、またちょくちょく手直しするかもしれませんが、それでもこのお話を読んで「良い!」と感じてくださった方には、感謝の気持ちでいっぱいです。
このお話を読んでくださった皆さん! 10 years afterを最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
そして、いろとりどりのセカイとガンダムX、リリカルなのはに携わってきた皆さんと、僕の大切な人達皆さん、本当にありがとうございます!
では、また!