バシィィンッ バシィィンッ
「いってぇっ!」 「いったぁぁぃっ」
「もう・・・2人とも余計なことにばっかり頭使って!」
惣一とつばめ、仲良く2人並んでソファの後ろに立って座面に手をつき、
お尻を出して叩かれる。
さんざん手を煩わせたせいか、風丘の平手は心なしかいつもより強め。
お仕置きが始まってはや10分。
2人のお尻はだいぶ赤くなってきたが、
まだまだお仕置きの終わる気配はない。
バシィィンッ バシィィィンッ
「ってぇぇぇっ」 「いたぁぃっ・・・だってぇっ!」
「だって・・・何?」
涙目になりながらそう叫んだつばめに、ふと風丘が平手を止める。
つばめは、肩で息をしながら、俯く。
「だっ・・・だって・・・」
惣一が、「余計なこと言うな」と言うような目でつばめを見るが、
一歩遅かった。
「だってっ 風丘がお尻叩くからじゃん!
風丘がお仕置きしなきゃ逃げる必要だってなかったのにぃっ」
「つばめ!」
惣一が声を上げるも時すでに遅し。
数拍おいて、つめたーい風丘の声が降ってきた。
「ふーん・・・で?」
「・・・え?」
「じゃあ、何?
新堂と太刀川が今お仕置きされてるのは、俺のせいなの?」
「え・・・」
バチィィィンッ バチィィィンッ
「うぁぁぁっ」 「あぁぁぁんっ」
「ねぇ、お返事は? 俺のせいなの? 新堂。」
バチィィィィンッ
「いってぇぇぇっ・・・か、風丘のせいじゃ・・・ねぇ・・・よ・・・」
「でしょ? じゃあ、誰のせい? 太刀川。」
バチィィィィンッ
「いたぁぃっ~~~~」
「・・・太刀川。泣いたってダメ。
質問に答えて。誰のせいなの?」
バチィィィンッ
「うぁぁぁんっ 僕と惣一ぃっ」
「そう。ねぇ、新堂。
もともと何でお仕置きされることになったんだっけ?」
バチィィィンッ
「うぅぁっ! テストっ・・・さぼったよっ・・・」
バチィィィンッ
「ぎゃぁっ!!」
「もう何回言っても聞かないし・・・ねぇ、太刀川?」
ベチィィィンッ
「あぁぁんっ・・・い~~~たぁ~~~~いぃぃっ」
「痛いのは当たり前。反省してるの?」
ベチィィィンッ
「ふぇぇんっ・・・したしたしたぁっ・・・したからぁっ・・・」
泣きながら、必死でつばめはうなずく。
それを見て、風丘はため息を一つつくと、こんどは惣一に問い掛ける。
「まったく・・・新堂は?」
バシィィィンッ
「ってぇぇっ・・・したっ・・・したよっ・・・」
つばめはもう叩いてなくても泣いているし、
惣一の声もだいぶ涙混じりになっている。
そろそろか、と、風丘がお決まりの質問をする。
「新堂。ごめんなさいは?」
バッシィィィンッ
「うぁぁぁぁっ・・・ごめんなさぃっ」
「太刀川は?」
バッシィィィンッ
「あぁぁぁんっ ごめんなさぁぃっ」
「・・・よし、じゃあ仕上げ。」
「「え?」」
てっきり終わりだと思いこんでいた2人が、間の抜けた声をあげる。
すると、風丘はしれっとした顔で、とんでもないものを手に取った。
「げっ・・・」「ふぇっ・・・」
どこからともなく出てきたそれは、竹の物差しだった。
惣一は顔を引きつらせ、つばめの目からはさらに涙があふれる。
「籠城作戦なんておバカなことしたお仕置き。
それに、俺の可愛い妹をまんまと利用してくれたみたいだし?」
そう言って、にっこり恐ろしい笑顔が2人に投げかけられる。
「クスッ 大丈夫、そんなに打たないよ。2つの罪で、2発だけ。」
何が大丈夫なものか、
1発だって、いやむしろ触れられるのだって
勘弁して欲しいぐらいなのに。
その思いから、惣一は不意に口走ってしまった。
「このシスコンっ・・・」
「・・・まぁ、それは言われ慣れてるけど。
でも・・・この状況で言うのはやっぱりおバカだね。新堂1発追加。」
そして、グイッと上体を押さえつけ、風丘の手がスッと動く。
ビシィィンッ ビシィィンッ ビッシィィンッ
「ぎゃぁ~~~~~っ」
惣一は絶叫すると、そのままソファから転がり落ちた。
風丘はそんな惣一は放置で、手早くつばめに2発与える。
つばめも惣一に負けず劣らずの大絶叫で、
こうしてようやく2人のお仕置きは幕を閉じた。
手当をして貰って、やっと落ち着き、惣一がふと口を開いた。
「・・・めっちゃ綺麗だったよな、風丘のいもーと・・・」
「うんうん。アイドルとか、女優さんみたいだったー」
つばめも賛同する。
「あれだったら、シスコンになるのも分かるかも・・・」
「あんまりシスコンシスコン言わないでよね。
そりゃ言われ慣れてるけど、
からかわれるのは光矢たちからだけで十分。」
風丘は少しうんざりしたような顔をして、
それから上手く話題をすり替える。
「それから、怒った仁科先生が
『これ、放課後捕まえたらやらせてください』って言って置いてったんだけど・・・」
ピラピラ風丘が振っているのは、数学の追試の問題。
2人が顔をしかめる。まさかこの状況でやれと!?
何とか懇願して先延ばしにして貰おうと惣一が口を開きかけた時だった。
「まぁ、そのお尻じゃかわいそうだね。明日の昼休みにしてあげるよ。」
「えっ・・・」
「大丈夫。仁科先生には上手く取り繕っておくから。
それより、俺に花月が置いてってくれたお菓子あるみたい。一緒に食べよ?」
風丘はそう言ってウインクした。
結局、お仕置き後はいつも以上に甘くなってしまう風丘なのだった。