「さて、佐土原。」


洲矢に部屋まで案内させ、部屋に入ると、

ベッド借りるね、とベッドに腰掛けて、風丘は洲矢に向き直った。


「っ・・・ごめんなさい・・・」


洲矢は、風丘が何か言う前から、

素直にペコリと頭を下げ、謝った。
その表情はショボンとしている。


「うん。・・・何がいけなかった?」


「夜遅くに・・・ばあやに黙って出てったこと・・・」


「うん。それと?」


頷いて、更に聞く。やや間があって、


「それで・・・ばあやにも、先生にも・・・心配かけた?」


自信なさげに首をかしげて聞いてくる洲矢に、

風丘は苦笑しながら答える。


「何で疑問型なの。心配かけたんだよ。もうっ」


頭を軽くコツンッとすると、洲矢はまたショボンとする。
洲矢には、お説教もあまり必要ないだろう、と風丘は膝を叩いた。


「おいで。」


「はい・・・」


おずおずと風丘に近寄り、膝の上に乗る。
風丘は、ズボンと下着を下ろし、腰の辺りに手を添える。

小柄な洲矢は、本当に「ちょこんと」乗ってる、という表現が

ぴったりな感じだ。
同じくつばめも小柄だが、

つばめは自分から乗るなんてことまずなく、

暴れてどうしようもないから。

そんな洲矢に、思わず風丘はクスッとしてしまう。


「せんせ・・・い・・・?」


そんな風丘の様子に気づいたのか、

洲矢が首を回して見つめてくる。


「全く・・・こんなに素直に反省できるなら、

最初からもうちょっと考えれば良いのに。
佐土原は、意外と思い立ったらすぐ行動、って感じなんだから。」


バシィンッ バシィンッ バシィンッ


「んんっ・・・ごめんなさい・・・

ひーくん、いなくって、探さなきゃって思ってっ・・・」


「それなら、おばあさんや俺に言って欲しかったな。」


バシィンッ バシィンッ バシィィンッ


「いたぁぃっ・・・ぁっ・・・お、思いつかなくてっ・・・」


「うん。それなら、

これからはもうちょっと行動起こす前に考えるようにしよう。
何かあってからじゃ遅いでしょ?」


バシィンッ バシィンッ バシィィンッ


「いっ・・・ぅっ・・・ふぇっ・・・はぁいっ・・・ごめんなさいっ・・・」


洲矢は5人の中で、お仕置きされる頻度も少なく、

元来痛みに弱いのか、泣くのが早い。
しかも殊勝に反省しながらお仕置きを受けて

更に泣いてしまうため、風丘はたまに


(俺がいじめてるみたいな感じ・・・)


と苦笑い。


「今日だって、怖いおにーさんたちに絡まれちゃったんだって?
柳宮寺が間に合わなかったら大変だったじゃない。」


バシンッ パンッ バシィィンッ


「いっ・・・ふぇっ・・・ごめんっ・・・なさっ・・・」


「はい、じゃあ約束。

これから、後先考えない行動は慎むこと。

1回、落ち着いて考えるんだよ。いい?」


バシンッ バシィンッ バシィィンッ


「ふぇぇっ・・・いたぁぃっ・・・約束っ・・・約束するっ・・・」


「よし、良い子。」


「ふぇっ・・・」


風丘は、一度洲矢の頭をくしゃっと撫でる。
でも、最後はきっちりする。


「じゃあ、最後10回。我慢。いいね?」


「っ・・・はいっ・・・」


バシィンッ パンッ バシィッ バシッ バシィンッ

バシィンッ バシッ バシィンッ バシッ バシィィンッ


「いっ・・・・・・・ふぇぇ・・・」


「はい、おしまい。よく頑張りましたっ」


終わって、抱き起こして、頭をポンポンッと撫でる。
洲矢は、そうしてもらいながら、風丘を見て、


「先生・・・ごめんなさい。」


と言った。顔はまだ若干落ち込み気味。
風丘は、ニコッと笑って、


「いえいえ。もういいよ。お仕置きも終わったし。・・・
あぁ、この素直さが惣一君や夜須斗君たちにもあればっ・・・」


少し芝居がかった風に、大げさに言う。

すると、それを見て洲矢にも笑顔が戻る。


「クスッ・・・先生、それは無理かも・・・」


「だよねぇ。・・・洲矢君、お尻冷やす?」


悪さをした他の4人にするときほど

そんなにひどく叩いてはいないが、ほんのり赤くなっている。


「ううん。後で自分でやる。

先生、ひーくん連れて行っちゃうんでしょう?

お見送りしたい。」


「そう。じゃあ、少し落ち着いたら行こっか。」


「うんっ」




そして、数分後。仁絵の待つリビングに戻る。


「洲矢っ・・・」


心配していたのか、洲矢が入ってきた瞬間に駆け寄る仁絵。


「わり・・・俺のせいで・・・」


「別にっ、ひーくんのせいじゃないよ。
僕が何にも考えないで、出てっちゃったのが悪いんだし・・・」


「ほんと、ごめん・・・ 

ばぁちゃんにも伝えといて。

後で俺からも言いにいくけどさ。『すみませんでした』って・・・」


「うん。分かった。ひーくんも・・・えっと・・・そのぉ・・・」


仁絵の顔とニッコリ笑っている風丘の顔を交互に見て、

洲矢が困ったように笑って言う。


「頑張ってね?」


「お前なぁ・・・何で叱られんのに頑張んなきゃなんねぇんだよ・・・」


ちょっとずれてる洲矢の言葉に、仁絵は脱力。
自分でも少し変だと気づいたのか、洲矢はまた少し考えて・・・


「えーと・・・じゃあ・・・元気で帰ってきてね?」


「っ・・・プッ・・・ハハッ・・・それは正解だわ。

終わったらちゃんと報告の電話するよ。」


「うん。」


「ほんと・・・ありがとな、洲矢。」


「うん。」


「はい、じゃあ柳宮寺。行こうか。」


「・・・あぁ。」


「じゃあね、ひーくん。」


「おぅ。」


仁絵と風丘は洲矢に見送られながら、洲矢の家を出た。