「イヤやぁぁぁっ!! 毒手はイヤぁぁぁっ!」


「何言うてんねん、あんだけ迷惑かけといてっ!!」




試合後、ミーティング・反省会の為に一度レギュラー全員で学校に戻り、

部室で解散となった時、
白石は帰ろうとする金太郎を呼び止めた。

が、さすがに何をされるか察した金太郎は逃げ出そうとした。
それを何とか阻み、白石は金太郎の腕を掴んでいる。


「白石ぃぃっ 離してやぁぁっ」


「あかん! 今日は見逃したりせぇへんでっ!」


一時は開き直って「どうにでもなれ」などと言っていた金太郎だったが、

実際その危機に直面すれば話は別。
盛大に暴れ、必死で抵抗している。それだけ、お仕置きは辛くてイヤなのだ。


「うぅ~~~ 千歳ぇ~~」


「金ちゃん、白石にあんな強く大丈夫って言ってたんに

迷子になりよったんやし、しょうがなかばい。
今日はちゃんと叱られるんやね。

まぁ、終わったらたこ焼き買ってやるから、頑張んな。」


「イヤやぁぁぁぁっ!!! 

たこ焼きなんていらんから助けて!!!!!」


いつもなら助けてくれる千歳も、今回はそう言って立ち去ってしまった。

金太郎は本気で焦り、誰彼お構いなく助けを求めるが・・・。


「謙也!! 代わってやぁ・・・」


「なんでや! 迷子になったんは俺やなくて金ちゃんやろ。

ちゃんとけじめつけなあかんやろ?
反省すんのは、金ちゃん。 な? ほな、俺は行くで?」


「まぁ、ワイらがおってもじゃまなだけやね。ほな、ユウくん、ワイらも行こか。」

「おぅ。金ちゃん、頑張れや。」


「俺も帰りますわ。」


「金ちゃん、白石も大変なんやで?・・・まぁ、ほどほどにな。」


と、次々と部屋を出て行くレギュラーたち。


そして、結局金太郎は白石と二人きりで部室に残されてしまった。

すると、白石は金太郎が逃げられないように

一つしかない部室のドアの前に立ち、やっと金太郎の腕を放す。
そして、左手の包帯の結び目に手をやりながら、金太郎に低い声で問いかける。


「さぁて金ちゃん・・・・覚悟はできてるやろ?」


「か、かくご? で、できてへんできてへん!! 

せやから白石毒手は・・・ぎゃーーーっ!! 包帯とらんといて!!」


金太郎の必死な制止をよそに、
白石は左手に巻いていた包帯を解き、机に置くと、

金太郎の腕を再度つかみ、
自分は部室のパイプ椅子に腰掛け、その膝の上に金太郎をのせた。
そして、間髪入れずに履いている物を全て下ろしてしまう。


「さぁ、いくで。しっかり反省するんやで?」


バシィィィィンッ


「っぎゃぁぁぁぁっ! 痛いぃっ」


「当たり前や! どれだけ心配かけたと思う?」


バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィィィンッ


「痛い、痛い、痛い、いたいぃぃぃぃっ」


「だいたい、俺は最初から千歳に迎えに行ってもらい、て言うてたやろ!」


バシィィンッ バシィィィンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ


「うぁぁぁぁんっ! い~たぁ~いぃぃぃぃっ!!」


早々に泣いて騒ぎ出す金太郎だが、

白石は慣れたもので、全く動揺しない。


「せやのに金ちゃん、大丈夫やって駄々捏ねて。

その結果迷ったんはどこの誰や?」


バシィィンッ バシィィィンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ


「あぁぁぁんっ!! 白石ぃっ もうイヤやぁぁぁぁっ」


「俺は誰や、って聞いてるんやけど?」


バシィィィィンッ


「いぃぃぃぃっ!! わ、ワイ・・・・」


「せやろ? せやから、悪いんは誰?」


「で、でもワイはそんときは大丈夫やって・・・・」


バッシィィィンッ


「ぎゃぁ゛ぁぁっ」


「悪いんは誰や?」


「・・・・・ワイ・・・・・せやけどぉっ」


バッシィィィィィンッ


「いったいぃぃぃぃぃぃぃぃっ(涙)」


「そう。悪いんは金ちゃん。せやから、お仕置きされなあかんのも金ちゃん。
せやのに、さっき謙也に『代わって』やなんて・・・」


白石はため息をついて言う。


「そ、それはぁっ・・・つ、ついっ・・・・」


バシィィンッ バシィィィンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ


「うぁぁぁぁっ」


「どれだけの人に心配かけて、迷惑かけた思う? 
金ちゃんの試合入ってたとこ、

代わりに財前に入ってもらったって小石川が言うとったやろ?
まぁ、俺も抜けてたから、そこは謙也が入ったらしいけど・・・。」


「そ、それのどこが悪いねん! 

財前も謙也も、いっぱい試合できてよかったやん!」


思わずそう言ってしまってから、さすがに金太郎は「しまった」と焦る。
首を曲げて見上げると、明らかに顔を引きつらせている白石の顔が目に入る。


「あ・・・・・」


「金ちゃん・・・・・よぉ分かったわ。

反省してへんってこと・・・反省する気もないってことがな!」


「ちょ、ちょぉ待って! ほんま、今のはつい・・・待ってってぇっ ぎゃぁぁぁっ」





本気で白石を怒らせた金太郎は、そこから軽く15分はお仕置きされ・・・・




「ぐすっ・・・ふぇっ・・・いたいぃっ~・・・」


白石が手を止めたころには、お尻は真っ赤になっていた。


「・・・金ちゃん。もう一度聞くで? 

行く前に、大丈夫やから迎えいらん、って言うたのは誰?」


「・・・ワイ。」


「せやな。それで、実際はどうやった? ちゃんと着けた?」


「・・・着けへんかった・・・・」


「そう。それでいろんな人に迷惑とか心配かけたやろ? 

悪かったのは誰や?」


「・・・・ワイ・・・」


「せやで。相手校はもちろん、財前にも、謙也にも。

他のレギュラーにもな?
まぁ、相手校にはもう俺が謝ったから、
金ちゃんは、明日みんなに謝るんやで?」


「・・・・分かったぁ・・・・」


「ほな、ごめんなさいは?」


「うぅ・・・・・・ごめんなさい・・・・」


「よし、そしたらあと三発で終わったるわ。いくで。」


「はぁ!? ちょ、ちょぉ待って! 今の流れ終わりと違うん!?」


いきなりの宣告に、金太郎は慌てだした。
しかし、白石はさして気にとめる様子もなく、


「誰もそんなこと言うてないやろ。」


と言って・・・


バシィィンッ バシィィンッ バッシィィィィィンッ


「んっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


「ん、もういいで。頑張ったなぁ~」


容赦なく三発を打ち込むと、

膝にのせていた金太郎を抱き起こして頭を撫でた。


「痛すぎるわぁ・・・・ 白石の馬鹿力・・・・」


「金ちゃんに言われたないわ・・・」


涙目でそう言われ、苦笑する白石。



それからしばらく

頭を撫でたり、濡れタオルでお尻を冷やしたりと白石は金太郎の介抱をした。



そして、やっと、お尻の腫れもひいて帰ろうか、となった頃・・・。

白石は、ふと思うことがあって金太郎に話しかけた。


「全く・・・これからしばらくは、練習試合はお迎え有りやな。」


「うぅ~~ 分かったぁ・・・」


「そういえば、金ちゃん、なんで俺に連絡するのにあんなに時間かかったん?
フツーに乗り間違えたら、もっと早よ気づくやろ?」


「・・・あ。」


その何気ない白石の問いに、ぎくっとわかりやすく動揺する金太郎。


「・・・なんや? 何かあったん?」


「いや・・・そのぉ~・・・・」


「何や? 言うてみ? あぁ、もう一度膝に・・・」


「ね・・・」

「ね?」


「寝坊してん・・・・・」


消え入るような金太郎の声。

でも、それをしっかり聞き取った白石は・・・。


「・・・・金ちゃん・・・・・・・もう一度膝に来ぃ!!!!!」


「いっ、イヤやぁぁっ 白石勘弁してやぁぁぁぁぁぁっ」