「風丘先生!(涙)」
「風丘先生!!」
「風丘!(怒)」
「風丘君!!」
現在、11月1日、4時間目終了間際。
昨日からの泊まりがけ出張終わりで遅れて出勤してきた風丘は、
担当授業が無く、職員室にいた女教師たちに
すごい剣幕で迫られるという、身に覚えのない事態に襲われていた。
「あ、あの・・・ なんでしょう?(汗)」
「あなたのクラスのあのどうしようもない5人組、
特に佐土原君以外のことです!!」
仁科が相変わらずのヒステリック気味に言う。
「あー・・・昨日・・・何かありました?」
風丘は、昨日1日出張で学校にいなかった。
昨日何が起こったのかを全く知らないのだ。
「風丘先生、聞いてください!」
「は、はい・・・」
次は水池が涙目で詰め寄ってくる。
「机の中にっ・・・かっ・・・カエルがっ・・・」
「カエル?(^_^;)」
「10匹も入ってたんですよ!?
しかも、開けた瞬間、3匹も私に向かって飛んできて!!
もうっ・・・もう、鳥肌がっ・・・」
「私は教室に入ろうとしたら上から黒板消しが落ちてきたわっ
しかもご丁寧にチョークの粉をこれでもかってくらいにつけて!!」
仁科もそれに続く。
(な、なんと古典的な・・・(苦笑))
「私は靴を下駄箱の中に瞬間接着剤で固定された。」
「私は車のフロントガラスに生卵が5個、投げつけられてたわねぇ・・・」
地田と金橋。
「ア、アハハ・・・ そ、それは災難で・・・」
「災難で済むか!!
お前がいないと、1秒たりともおとなしくできないのか、あいつらは!!」
「い、いやぁ・・・ それにしても、何で昨日に限って・・・」
そう言いながら、
風丘は、何か嫌な予感がして、自分のデスクの引き出しを開ける。
すると、そこには・・・
「あーあ、やられた・・・(苦笑)」
小学校の理科で作るスライムが、引き出し中にぶちまけられていた。
しかも、通常のスライムよりも少し水っぽく作られていたため、
まるで緑色の粘液が広がっているようだ。
そして、そのスライムにまみれた紙が一枚。
そこには、血に似せた赤い絵の具で、「Happy Halloween!」と書かれている。
「ハロウィンか・・・ハハハッ! なるほどねぇ・・・」
昨日は10月31日、ハロウィン。
それを口実にくだらない悪戯を、惣一たちは仕掛けまくったのだ。
おあつらえ向きに、風丘が一日出張だったこともあって。
あまりにもくだらなすぎて、風丘は笑ってしまう。
が、仕掛けられた女性陣はたまったものではなく。
「風丘君! 笑ってないで、あの子たちをちゃんと叱ってきて!
ハロウィンだかなんだかしらないけど、
私たちが昨日どれだけ大変だったか!」
「分かりました、分かりました。今から行ってきます。」
風丘は、勢いにやや気圧されつつ、職員室を出て行った。
昼休みといえば・・・ 風丘は、いつも5人がたまっている屋上に向かった。
「悪戯っ子たちみーっけ☆」
「げっ」
「うわっ」
「うわぁ」
「っ・・・」
「あっ・・・」
数分後。屋上で固まる5人の姿があった。
「これ、覚えがあるでしょ?」
そう言って、先ほどの紙を見せる。
「ってかないっていっても嘘だよね。これ、筆跡、吉野でしょ。」
「っ・・・」
図星を指され、声を詰まらせる夜須斗。
すると、惣一が慌てて言い出した。
「かっ・・・書いてあんだろ、ハロウィンだって!」
「うん。だから?」
「教師は菓子くれねぇんだから悪戯していいんだろ!!」
悪びれもせず、むしろ開き直って言った惣一に、風丘が苦笑。
「まぁ、確かにね。」
「でしょっ?」
一応同意をすると、つばめが誇らしげに胸を張る。
後ろでは、頭を抱えている夜須斗と、
俯いている仁絵と、オロオロしている洲矢。
様子を見ていると、どうやら言い出しっぺは惣一とつばめ。
予想通りの組み合わせ。
「それで・・・『Trick or Treat』って言ったの?」
「「え?」」
「いくらお菓子くれないって分かってても、
それを言わなかったらハロウィンのルールに反するでしょ?
言ってないんだったら、ハロウィンも何も関係なく、ただの悪戯。
あ、ついでに言えば、俺が自分にされた悪戯発見したのは
たった今、11月1日だから、
どっちにしろ俺はハロウィンに関係なく悪戯されたってことだし。」
「げっ」「やばっ・・・」
明らかに動揺する2人。
単純すぎて吹き出しそうになるのを、風丘は何とかこらえる。
「それで?
吉野や柳宮寺が乗るなんて珍しいじゃない。こんな短絡的な悪戯。」
「いや・・・たまにはいいかって・・・ 鬼の居ぬ間に洗濯・・・的な?」
「そんな感じ・・・」
「ふーん? それで佐土原も巻き込んだと。
先生ごとに分担して悪戯仕掛けたの?」
「ま、まぁ・・・そんな感じ・・・」
風丘は、溜息をついて、その後5人にとっては恐怖の宣言。
「まーったく・・・みんな、お部屋に行こうか?(ニッコリ)」
抵抗した惣一とつばめは肩に担ぎ上げられ、
残り3人は仕方なくその後をついて行く形で、
おなじみの部屋まで連行された。
肩に乗せていた2人を床に下ろすと、風丘は5人に指示を出す。
「まぁ、今回はくだらない悪戯だし、優しめにしてあげる。
はい、5人ともそのソファーの前に1列に並んで。」
この部屋にある、必要以上に大きなソファ。
長さ的には大人1人が横になってもまだ余裕があるくらいの大きさ。
5人は、ノロノロとそこに並ぶ。
「はい、背もたれの方を向いて。
そう、そしたらズボンを下ろして座面に手をつく。」
「なぁっ!?」
「っ・・・」
「えぇ~」
「・・・」
「ぅ・・・」
「何? 下着は許してあげるんだから優しいでしょ?
それに、今日は20発とちょっと、って回数にしてあげるし。
はい、ほら、とっとと下ろす! それともやっぱりお尻丸出しのが良いの?」
こうまで言われれば、聞かないわけにはいかない。
洲矢が最初に素直に言われたとおりにし、
その後諦めたのか夜須斗が続いた。
つばめと惣一も、それを見てふて腐れながら姿勢を取る。
そして、転校直後の事件以降も、
ちょくちょくお仕置きを受けてはいたが、
まだまだ経験の少ない仁絵が最後に残った。
みんなそろってのお仕置きは初めてだし、しかも自分で下ろさなければならない。
仁絵にはハードルがかなり高い。
が、風丘は甘やかさなかった。
「柳宮寺。早くしなさい。特別扱いはしないよ。」
そう言われ、どうにか覚悟を決めたのか、やっと仁絵も言われた姿勢をとった。
仁絵が姿勢をとって、
向かって右から惣一、つばめ、夜須斗、仁絵、洲矢の順に、
5人がお尻を風丘の方に突き出して並んでいる状態になった。
傍から見ると間抜けな図だが、本人たちはそれどころではない。
「はい、みんな良くできました~
あ、暴れたら隣に迷惑かけるからおとなしくしてね。」
いくらソファが大きくても、5人も並べば、
隣とは肩が触れるか触れないくらいに接近している。
これでは思うように抵抗するどころか、身動きだってうまくできない。
地味に辛い状態だ。
そんなこんなでお仕置きの準備が整って。
風丘がやけに緩く開始の合図をした。
「まぁ、原因はただくだらないいたずらしたってそれだけだから、
特にお説教は無し!
面倒くさいし。。 じゃあ、いっくよ~ いーちっ」
お仕置きの緊張感は(風丘だけは)皆無の状態で、
1発目が右端の惣一のお尻に振り下ろされた。
バシィィィンッ
「いってぇぇっ」
が、その緩さとは裏腹に、平手は十分痛い。
下着の上だが、かなり痛い。
惣一が声を上げる。
そこから、つばめ、夜須斗、仁絵、洲矢の順に打たれていく。
バシィィィンッ
「いったぁぁぃっ」
バシィィィンッ
「うくっ・・・」
バシィィィンッ
「っ・・・・」
バシィィィンッ
「いたぁぃ・・・」
つばめはおなじみのオーバーリアクション。
夜須斗は悲鳴を押し殺し、
仁絵は相変わらず無言を貫き通す。
洲矢は、控えめながらも声を上げて耐えている。
五者五様の反応で、5人は何とか20発を受けきった。
「いてぇ・・・」
「いたぁぃっ・・・」
「はぁはぁ・・・」
「っ・・・」
「いたい・・・」
先頭の惣一を叩く前に、風丘がカウントをしていたため、
20発目が終わったことを知ると、終わったのかと5人は力を抜く。
が、これで終わりにしてくれないのが
風丘が「ドS」「鬼畜」なんて言われる所以で。
「水池先生の机にカエル入れたのは?」
「「「「「え?」」」」」
「だーれ?」
「お、俺・・・」
さすがにこの状況で黙っている勇気は無く、惣一が答える。
すると・・・
グイッ
「なっ・・・
バシィィンッ バシィィンッ バッシィィィンッ
「いってぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「「「「!!!!!」」」」
惣一が答えた瞬間、
風丘は惣一の下着を下ろすと、強烈な平手を3発打ち込んだのだ。
「はい、次。」
風丘は平然として続ける。
惣一は、驚きと痛みでお尻を押さえて口をぱくぱくしている。
「仁科先生に黒板消し落としたのは?」
「っ・・・僕・・・」
つばめが消え入りそうな声で答える。
もう、この後何が起こるのか目に見えてしまっているのだ、無理はない。
そして、予想通りの結果が待っていた。
グイッ
バシィィンッ バシィィンッ バッシィィィンッ
「いったぁぁぁぁぁぁぃっ!!!」
つばめは、涙目でうずくまる。
「地田先生の靴、接着剤でくっつけたのは?」
「僕・・・です・・・」
洲矢がこわごわと答える。
風丘は、同じように
グイッ
バシィィンッ バシィィンッ バッシィィィンッ
「~~~っ ごめんなさぃぃっ」
素直な洲矢は、自然と『ごめんなさい』が口から出ていた。
風丘は少し微笑むと、また続ける。
「金橋先生の車に生卵投げつけたのは?」
「っ・・・俺・・・」
心なしか声がうわずる仁絵。
そろそろ限界まで来ているのだろう。
プライドのみで保たせている様子だ。
だが、そんな仁絵にも容赦は無く。
グイッ
バシィィンッ バシィィンッ バッシィィィンッ
「っ~~~ってぇぇっ・・・」
最後は悲鳴を殺しきることはできなかった。
そして。
「で、俺のスライムは吉野?」
「うん・・・そう。」
グイッ
バシィィンッ バシィィンッ バッシィィィンッ
「うぁぁぁっ!!」
夜須斗にも同様に平手が振り下ろされた。
今度こそ終わりかと五人が思ったとき。
風丘が、口を開いた。
「よし、じゃあ洲矢君と夜須斗君と仁絵君はおしまいっ
そしてそこの首謀者2人組?」
「っ・・・」
「うぅ・・・」
「首謀者なのに部屋に来るのも抵抗して。きついの1発追加。」
バッチィィィィンッ
バッチィィィィンッ
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「いたぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
下着を下ろされたままだったため、
すでに赤く色づいた生のお尻に、
更に赤い色の手形がつくくらいの強烈な1発が炸裂。
2人はその場で悶絶する羽目になった。
『Trick or Treat』ではなく『Trick and Spanking』に
なってしまった5人のハロウィン。
でも、最後に風丘は5人を見送る際に、
クラスで配った出張土産のお菓子の余りを5人にプレゼントしたのだった。