ソウルの人々は疲れている。東京の人々も疲れているけれど、ソウルのそれとは少し違う。
ソウルで電車に乗ったことがある人がいればわかると思うんだけど、混雑時の1号線はカオスだ。
オバチャン勢が異常にパワフルで、日本で言う、ステレオタイプの中の大阪のオバチャンとの比ではない。
韓国のオバチャンには最強説がある。
ソウルの電車内といえば、オバちゃんらが圧倒的存在感を放つ。
オバチャン同士の激しいぶつかり合いや、時にケミストリーをも間近で見られるパワースポットだ。
とはいっても、日本人はそのパワーにひるみ、逆にエナジーを吸い取られてしまうような錯覚を覚えるだろう。
本数の少ない時間であっても10分に1回はやってくる1号線であるが、戦いは待機時からすでに始まっている。
乗降ゲートの前にピッタリと張り付いて並ぶ人並をかき分けて、オバチャンたちは前へ前へと前進してくる。
気がつくと、最後にやってきたはずのオバチャン2人が一番前で待っている人の、さらに前に割り込んで、電車を待っていた。
電車が到着し扉が開く。
と、カバンの空中浮遊を見た。
さきほどのオバちゃんが場所取りのために、湘北のスリーポイントシューター三井のような見事なシュートを持参カバンでキメたのだ。
驚きとドン引きの微妙な空気で溢れ、周りがまごついている間に、ササッと席につき、涼しい顔をしているさきほどのオバちゃん。
一方、もう1人は信じられないほどのプレッシャーをかけ、その殺気から座っていた若者を立たせた。
メデュサーもビックリの眼力である。
確かに1号線は、最初から最後まで乗ろうとすれば、立っているのが辛いと理解できるほど長い路線だけど、この光景にはかなりのカルチャーショックを受けた。
ところで、韓国には3つの性があると言われている。
「男と女と、アジュンマと。」なんて言われているらしい。
アジュンマは韓国語でオバチャンの意味であるが、既婚女性は基本全員アジュンマと呼ばれようになってしまう。
しかし、ここでいうアジュンマは若い経験不足のアジュンマではなく、芳醇な漢方とキムチの香りを放つ大の大人で、人生の先輩方のことだ。
彼女らはどんなに若くてもおおよそ50代であり、強者になると、70代であっても全然衰えを見せず、キレッキレな動きを見せてくれる。
一号線の電車内は、そんな韓国至上最強アジュンマたちの巣窟だ。
1号線に乗ることがあるならば、気をつけて行かれよ。
・・・ご武運をお祈りいたします。
※あくまで個人の経験談です
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