「呪物 其ノ二」

 

後に戦国最強とも謳われる大名のもと、

無数の戦働きに従軍した

傍流の一族郎党にもたらされた一振りの禍々しい呪物。

数百年の歴史の紐を解いて参ります。

(長文なのでご無理そうな方はどうぞスルーお願い致します)

戦国期におけるお館様の活動は、

秋田県に攻め込み、宮城県を圧迫したかと思えば、

何の罪もない石川県能登半島に侵攻。

福島・栃木・群馬・埼玉を蹂躙し、

長野の川中島というところで何度も戦を起こし、

しまいには

あの美しい小田原城下町を焼き討ちしてしまいます。

これは一族郎党に伝わる古文書だけではなく、

他家の古文書でも確認できるのでほぼ間違いはないでしょう。

しかもその間、落とした城や町や村を略奪し、

財産や米を奪い、美人をかっさらい、

元気な青年を農奴としていたそうです。

こんな非道な侵侵略を毎年のようにお祭りのように繰り返す。

被害に遭われた方々にとって戦国大名とは

侵略者であり、略奪者であり、なんらかの厄災以外の何者でもなく、

現代のテレビドラマに出てくる優しい顔をしたハンサムな男優演じる、

紳士的で物分かりの良い存在などでは全く無かったと想像します。

ちなみにこの話をしてくれたバアちゃん曰く

「うちの家には美人が多い。諸国からかっさらってきたからだ」

カカカと自慢していたのをよく覚えています。

美人をかっさらう???

ここまで書いてきてふっと思ったのですが、

なにやら戦国大名の本質とは案外広域暴走族のようにも見えてきます。

私の稚拙な例えで申し訳ありませんが、

映画「マッドマックス」や漫画「北斗の拳」のような、

ディストピアを描いた世界観でしょうか。

こう解釈すると文章も簡単です。

・川中島で武田君と何度もタイマン勝負して。

・手取川で信長君の舎弟の柴田君をボコボコにして。

・近隣の県を暴走して気晴らしをする。

・暴走途中に金品を略奪しつつ。

・可愛いギャルを見つけ次第かっさらう。

・たまに大親分(朝廷)に金品を貢いで箔をもらい。

・ひたすら自分たちのシマの拡大に人生を捧げる。

どうみても「マッドマックス」か「暴走族」にみえませんか^_^

さてそんな戦国武将たちにとって、

一番大切なモノとは何だったのでしょうか?

「それは笑い事にもならない事」です。

つまり臆病者と呼ばれ、恥をかかない事です。

己のメンツを守る為には、

一騎打ちも決闘でも復讐でも何でもやります。

最期には想いが叶わない場合、潔く腹を切りさえします。

これ程までに己のメンツを正に命がけで守り通す。

「一所懸命」

しかしそんな家に呪われた一振りがもたらされてしまいます。

言い伝えによればそれは、

「刀身を小刻みに震えさせながら」

「人の声で泣く」

のだそうです。

またそれがいつ起こるのか?

どんな時に起こるのか?

誰にも分からず、

長い間沈黙していたかと思えば、

唐突にいきなり泣き出すというものです。

しかし泣き出すくらいなら歴戦の強者たちですから、

気にも留めず蔵にでもしまい込んだと思います。

一番の問題は、

「所有者が必ず1年以内に亡くなってしまう」

というものでした。

さすがにこれはいくら豪胆な武将と言えども

相当な恐怖だったのだろうと想像します。

また別の言い伝えとして、

一族の誰かが戦国期に実際の刀を検分したところ、

「刀身に蛇のようにうねうねとした刃文」

が確認できたことから、

「オロチ」(蛇の意味)

と、いつの頃からかそう呼ばれるようになったそうです。

ちなみに私がこの話をバアちゃんから聞いたのは

確か昭和50年代の事です。(1970年代)

ですから現在のアニメ等には全く関係も無いです。

さて一族でも所持すれば亡くなる「オロチ」の処分に困ったそうです。

無理に溶かせば何の祟りがあるやもしれず、

しかし一族郎党の誰か個人に持たせれば亡くなってしまうのでそれは嫌だ。

(あれだけ近隣諸国を蹂躙したにもかかわらず一族には優しい)

そこで(言い伝えによれば)一族専用のお寺が2つほどあったので、

その一つのお寺に封印する事にしたのだそうです。

また封印したもう一つの理由として、

(前述したような武家の慣習の中で)

「たった一振りの刀を恐れている」等と他家に伝わってしまえば、

「臆病者」の烙印を押され、恥をかいてしまう。

これを恐れたとも言われています。

こうして何とかお寺に封印されたオロチではありますが、

その間

戦国の世は遂にその幕を閉じ、

天下泰平の「徳川幕府」「江戸時代」へと時代は流れて参ります。

(続く)