何かについて自分でテーマを即興で決めて話を始めることは意外と難しい。

「私はあなたの話を否定しませんし強要もしません。好きに話してください」

もし、このようなテーマを面接の時などに課せられたら、あなたは何から切り出すか。この他愛もないスピーチで、本人の真相が容易に判断されると思う。

人との関わりがほとんどないので、改めて自己分析できている。今は興味の対象が沢山あって、それが集中の妨げになっている。例えば、歌詞について考えていたら気が逸れて、今度は運動をしたくなって、腕立てや腹筋を始める。読書をしていても、ふとスマートフォンを手に取って様々なアプリを立ち上げ始める。気付いた頃には日が暮れていて、洗濯物を取り入れる。

この切り出し方で当人が、音楽や運動、スマートフォンに興味があることがわかる。そこで更に運動を皮切りに、「僕は野球が好きで、バットやグラブを沢山持っていました」と続ける。

「しかし、こだわりのメーカーがあって、ほとんどのアイテムはミズノのものです」

ここでピンとくる方は相当な野球ファンだと思う。それも世界に誇る、あのスーパースターのファンだと察することができると思う。

「彼が毎日カレーやユンケルを口にしているように、僕は選ぶことが苦手です。優柔不断。つまらないことで悩んで時間を消費させたくないから最初から決めている」

かつてのアップルコンピーターの最高顧問のスティーブ・ジョブズさんは、同じ服を何着も所有していて、最新のiPhoneの発表の際もいつも同じような服を着て熱弁をふるっていた。

孤独から得られる自分らしさの中に、現状から抜け出すヒントが秘められていて、極限状態になると自分でもわからないほどの驚異的なパワーを発揮できる。そう信じている。というより、孤独がそうさせるのだ。

「記録を意識したことはありません。ひとつひとつ積み重ねた結果、気付いたらこんなところまで来ていた」とイチローさんは言う。

恐らく、イチローさんも周囲に振り回されたり気にするタイプではないのだろう。マイペースでひとつの物事を追求できる人間だ。

断捨離という言葉が広がってしばらく経つが、それは目に見えるモノに限った話ではないと思う。頭の中にある不必要なものも整理整頓し、極力捨てる必要がある。そうしないと頭の中がモノで溢れ、ショートしてしまう。

好きな人が頭の中に沢山いたとする。誰もが羨むほどの色男でも本命はひとりだろう。競馬の予想のように二重丸の本命をつけることが許可されているのは、たったひとり。「そんなことはない。同時に沢山の人を同じ分量で愛せる」と言える人がいたら教えて欲しい。

地元が神戸に近いこともあって、オリックスのファンでなくてもイチローさんが年間最多安打の記録を打ち立てると地元の銀行がイチロー預金を始め、おまけでイチローさんのサインがプリントされたボールがもらえた。母が僕の将来のことを思って定期預金を組んでくれたのだ。

父が神戸市内の会社に勤務している関係でグリーンスタジアム神戸(現ほっともっと神戸)での試合を何度か見に行くこともあった。ライトスタンドから湧き上がるイチローコールと母の気付き。

「あの人はクスリともしない。(エキサイティングの象徴である)頭から滑らない」とつまらなそうに母が愚痴をこぼしたこともあった。

いつもクールでポーカーフェイスのイチローさんのことを僕も子供ながら不思議に思っていた。いつしかその完璧な成績と独特なプレイスタイルを妬んでしまい、イチローさんの下敷きをエアガンの的にしてしまったこともある。

心の中で彼が大きなウエイトを占め続けていたからこそ、僕は野球を辞められなかった。ライバルが同級生となるといっそう野球で得られる快楽が大きくなる。スライディングをして出血する痛みなどより、フリーバッティングで特大のアーチを放つことの方が圧倒的に大きく、痛みが快楽になる。痛みや苦しみが快楽を得る為の報酬の元となるのだ。

やっとの思いで背番号をもらえても、公式戦に出る為のチャンスは得られなかった。今思えば、メンバー発表の時の緊張感は合格受験のそれより重々しかった。

いつも試合後には反省会があり、補欠も含めてそれぞれが意見を言わなければならなかった。

「今度は背番号をもらえるように頑張ります」

本音だ。

その帰り道、いつものメンバーで家路に就こうとしていたら、「あのミーティングのとき、きゃみー(当時の僕のあだ名)が話してるとき、顧問の先生、頷いてたぜ」と言われた。またしても心が揺れた。

公立ながら、野球部は強かった。他校の練習方法は知らないが、通常の守備練習にしてもケースバッティングやアメリカンノックなどに限らず、ソフトボールを使ってのキャッチボールやタイヤ引きやタイヤをベース代わりにしたスライディング練習もメニューのひとつにあった。練習メニューを部員に任せることもあった。

唯一、スライディングの練習で褒められたことがあったので驚いた。僕の場合、脚は普通かそれ以下でも、滑り込んでからその勢いで立ち上がることができる。つまり、スライディングしてそこで終わりにならず、状況によっては次の塁を狙える可能性が高くなる。

かつて読売ジャイアンツで代走のスペシャリストとして活躍した鈴木尚広さんは盗塁の数こそ彼より上回る選手がいても、盗塁の成功率(盗塁成功数÷盗塁企図数)は当時は彼が歴代1位で、代走起用時での盗塁数と成功率は今でも破られていない。

通算228盗塁のうち、失敗は47のみ。現役選手ではロッテの荻野貴司(153盗塁21盗塁死、成功率.879)、日ハムの西川遥輝(182盗塁30盗塁死、成功率.858)の両選手は200盗塁の未満ながら鈴木尚広さんの記録に迫る盗塁成功率を誇っている。

「口は災いの元」、「沈黙は金なり」という言葉があるように、何でも本音や心境を表に出せばいいというものではないが、自身を振り返る絶好の機会だと思う。日記やブログを書くことはあっても、読み返すことはあまりない。

鈴木から始まり、鈴木で終わる、ついでにカープの鈴木の話もしたいところで鈴木えみがデザインしたzippoで煙草に火をつけて終了。おあとがよろしいようで。