自分が乗ってる自転車は、最近ガタガタと異音がしていた。

元々は父が自分の為に買ってくれたのだが、色が何かちょっと……と言ったら怒って暫く父が乗っていた。

後に非を謝ったら許してくれて自分が乗る事になり、それから数えるとひょっとしたら四半世紀近いかも知れない。なのでガタが来て当然だ。


とはいえ、ずーっとガタガタ音を立ててたら近所迷惑になるので、ある日少し遠くの自転車屋に持って行った。

話はズレるが、うちは元々、徒歩圏内にある自転車屋でメンテナンスして貰っていた。恐らく、この自転車はそこで買ったのではないだろうか。

だが、今年の始めにそこの店主がお亡くなりになり、後を継ぐ人が居ないのかずっと閉店している。

その為パンクなどになったら少し遠くの自転車屋に行くしかないのだが、どうもここは不安になる自転車屋だった。


昨年、自転車の鍵を落として乗れなくなり、この店に持ってってどうにか出来ないか相談した。だが、この店で買った物でないと無理との答えだった。

その時は「何て不親切な店だ」と思ったが、よく考えると防犯上出来ないのだろう。ほいほい自転車の鍵をどうにかしてたら、盗難自転車の鍵も開けてしまうから。だからこの件は仕方ないと思う。


ちなみに自転車の鍵は、お店がどうにかするというのは出来ないので、代わりにマイナスドライバーを渡された。これで自分で鍵を壊してね、という事らしい。その後近所の自転車屋さんで新しく鍵を付けてもらった。ひょっとしたら、これがこのお店を利用した最後だったかも知れない。


また、母に聞くと「あの店はどうろこうろ」らしい。「どうろこうろ」とは、「いい加減」と言えば良いだろうか。

この店は開店時間が昼からで、午前中は開いていない。それでいて夜になったらすぐ閉まる。まあ、田舎だしそれでも良いのかも知れないが、ある時母が乗っていた自転車がパンクしたのでこの店で直してもらおうとしたら、まだ午前中なので閉まっていてどうしようもなかったらしい。

それでパンクしたままの自転車に乗って帰ってきたらしいが、どうやら母はこの時の事を根に持ってるのかも知れない。


開店時間は店が決める事だし、それはタイミングが悪かったと思うのだが、自分もここは「どうろこうろ」だと思う。

長くなったが、それが今回の自転車の異音で分かったからだ。


この店の店主(と思う。他に人は見てないので)に「自転車から変な音がするんです」と言った。

店主はペダルを少し動かす。やはり異音がした。すると店主は「あー、これは駄目だ、直せない」と言った。

呆気にとられた自分が理由を聞くと、「この自転車は古いからかギア部分(ここはよく覚えていないが多分こんな事を言った)が壊れていて、破片? が中で動いてるかも」という風な事を言った。次いで、「直すには部品が無いし、結構お金も掛かる」とも。

お金はまだ何とかなるが、部品が無いのならどうしようもないと思い、諦めて帰った。勿論、異音はしたまま。


他に移動の足が無い為、近所には悪いが暫くそのままで自転車に乗った。当然異音はするが、ゆっくり漕げば音は少し小さくなった。また、時々全く異音がしなくなったりもした。暫くするとまた音が出るが、実際はどんな理由で音がしてたのだろう。


そんなこんなで暫く過ごしていたが、最近母の自転車がパンクしてしまった。

前述の通り近所の自転車屋さんは店主がお亡くなりになって以来閉店しており、他の自転車屋に行くしか無い。だが、母は前述の理由であの店に行きたくないらしく、他に自転車屋が無いか調べた。

すると、比較的近くにもう一軒自転車屋が在り、しかもこちらから行かなくても電話で修理の依頼が出来、自転車を持って行ってくれるという。

持って行って修理してくれるなら、と思い、自分の自転車も直せないか頼んでみた。その自転車屋さんは2台の自転車を持って行って修理してくれ、その日のうちに2台とも直って戻ってきた。


修理代はいくらだったか母に聞くと、以前あの自転車屋で聞いた値段より遥かに安かった。あの時は1台、今回は2台なのに、である。

となると、あの自転車屋が「どうろこうろ」だったか、この自転車屋さんが優秀なのかは判らないが、少なくとも自分の自転車は「直せない故障」ではなかったのだろう。

あの自転車屋はこの辺りでは結構大きいお店だ。だから少し横柄なのかも知れない。単に店主の性格かも知れないけど。

とはいえ、店が客を選べる様に、客にも店を選ぶ権利がある。今回の事で恐らくうちは修理してくれた自転車屋を贔屓にするだろう。

まあ、当たり前の事だけどね。