テニス部の練習風景を遠くから眺めるという日課を泣く泣く諦めてまで迷いに迷って選んだ緑色の包装紙に包まれたプレゼントを自分の机の上にポンと乗せる
騒がしいお昼休みの教室
お弁当も食べ終わり授業の合間の貴重な息抜き時間にまで息苦しい思いをしているのは私だけではないだろう
10月7日といえば青学テニス部ファンには常識の事実、手塚くんの誕生日だ
学年問わず人気だけれどヒシヒシと伝わるあの近寄り難い雰囲気のせいか机や下駄箱がプレゼントで溢れ返っている様子も呼び出しを受けている様子も無い
「それが逆に渡しにくいんだよね」
はぁ、と盛大にため息を吐けば正面に座る綾女ちゃんは私の用意したプレゼントを指先で弄りながら聞いてくる
「じゃあ真智は皆が渡せばそれに紛れて渡せるの?」
「渡す勇気無い」
「言うと思った」
呆れたような表情で綾女ちゃんに睨まれる
そんなこと言われたって勇気は欠片も湧いてこない
「私が代わりに渡してあげようか」
「それじゃあ意味ないもん」
恐らく無駄になるであろうこのプレゼント
机に突っ伏して手持ちぶさたにプレゼントをツンツンしてみる
こんなことならプレゼント買うの諦めてテニス部の練習見れば良かったかな
ツンツン、ツンツン
思いの外端に置いてしまっていたらしく私の些細な力でもどんどん動いてそのままポロッと床に落ちてしまった
「あ」
「あーあ、何してんの」
ポンポンと転がっていくプレゼントを拾おうと軽く腰を上げた瞬間
プレゼントはちょうど誰かの足にポテッとぶつかりその動きをピタリと止めた
そのままぶつかった足の主が身を屈めて拾ってくれる
「ありがと…う」
拾ってくれた人を確認しようと顔を見れば
「ちょっと、真智!」
正しいプレゼントの行き先、手塚くんだった
「これはお前のか?」
「う、うん。いや、私のだけども私のじゃなくて。今は私のと言うか」
「わけわからないから!」
ワタワタしている私を見兼ねてズバッと綾女ちゃんがツッコミを入れてくる
「とにかく返しっ、ん~!!」
「手塚!プレゼントよく見て!」
表面に書かれた小さな“手塚くんへ”という宛名を見られる前に返してと言おうとすれば綾女ちゃんにガバッと口を塞がれあろうことか手塚くんに見るように仕向けてしまった
手塚くんは不思議そうな顔をしながらも言われたとおりにクルクルとプレゼントを見ている
綾女ちゃんには“せっかく買ったんだからこのまま渡しなよ!”なんてことを耳元で囁かれる
抵抗虚しく、ん?という手塚くんの声が聞こえて私と綾女ちゃんの視線が自然と向いた
「これは…、俺が貰っても良いのか?」
「ダメ、…ではないけど良くないというかなんというか」
「だからどっちよ」
まさかの手塚くんの発言にしどろもどろになっているとまたしても綾女ちゃんがツッコミを入れてくれる
せっかく手塚くんが貰うと言ってくれたのに取り返すのも可笑しな話だし
無言で固まってしまった私に対して手塚くんは更に嬉しいことを言ってくれた
「今、すごく嬉しい」
「え?」
「お前から貰えるとは思っていなかった」
「手塚くん…!」
それって私からのプレゼントが欲しかったってこと?
ドキドキと期待してしまいそうなはやる気持ちを抑えてお礼を言おうとすればそれよりも先に
綾女ちゃんが私の両肩をグッと掴んで手塚くんにぶつかるように押してきた
「きゃっ」
「大丈夫か?」
「綾女ちゃん!」
「手塚、この機会にこの子も貰っちゃってよ!」
「は、えぇ!?」
「……」
何を言い出すんだと後ろを見ればグッと親指をつきだしてる
戸惑いながらも前を向けば予想以上に手塚くんが近くてドキドキと心臓がうるさい
「俺は構わないが」
「手塚、くん?」
「誕生日くらい我が儘を言ってはダメか?」
「わ、私も私なんかで良かったら貰って下さい!」
「あぁ」
迷いに迷ったプレゼントは無駄にならず
泣く泣く諦めたテニス部の練習もこれからは特等席で見れるようです
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今日は何日?
そう、10月10日!坂田銀時のお誕生日!!←
なのに今更国光のお祝いをするというね、細かい事はきにしなーい。
10月中に間に合えばいいんだという気持ちで本日アップしました。
最初お蔵入りにして来年にドーンとアップしようかとおもったんですがまぁさんにお名前の許可頂いておきながらスルーするのは失礼ですからね!
データ消失前の予定では4本ほど案があったのですがとっさに誕生日ネタとしてこれ書いたので後半投げやりモード←え?
いやいや、いつも全力投球で書いてます。
これは全国の国光好きにというかまぁさんに捧げます。
返品可ww
追記:自分の名前を友人として出すのはとても恥ずかしい事だと知りました(笑)しかもちゃん付けって・・・