この日、私は間違いなくここ1ヶ月で一番の多忙を極めていた。耳鼻科への通院、成績証明書の発行からの面接、ライブ。これらの行動を一日に詰め込むのだ。バイト以外にやることのない平凡な日々と比べればその忙しさは歴然。別日に活動を満遍なく振り分けた方が良いとは思うが、それが叶えば苦労しない。前日より諦め気味に準備をし吶喊した。
 まず朝、まだ眠さに瞼が上がりきらない状態のまま私服に着替えて近所の耳鼻科へ向かう。そこで検診をし、薬局にて薬を処方される。ここまでで約一時間。まずまずの時間配分である。
 一度家に帰りスーツに着替える。そして今まで着ていた私服に加えてショルダーバッグをリュックサックに詰め込み、ビジネスバッグにはハンガーを忍ばせ、梅田へと出向いた。まずは私服やらが詰め込まれたリュックサックをアルバイト先のロッカーに預ける。警備員は私服からスーツへと衣替えする不審な存在を訝しまないだろうか。などと考えながらもこっそりとロッカールームを抜け出してから昼飯を食らう。そのまま梅田に存在するキャンパスにて成績証明書を発行し、面接へと赴いた。
 さて一時間ほどして面接も終わり、またロッカーに戻る。出発前と同じ警備員にスーツ姿で挨拶をし、今度はリュックサックに詰め込んだ私服に着替える。そして忍ばせたハンガーでロッカーにスーツを掛け、ショルダーバッグだけを取り出し、そこに最低限の貴重品を入れて準備は万端。これでクロークを使う手間と金が省ける。同じ警備員に今度は軽装で挨拶をして街へ出る。
 だが、ここでふと思い出す。そういえばアルバイト先で取り置いている本があったと。久しぶりに確保した梅田での貴重な自由時間である。今のうちに買わねば買う機会を逃してしまうかもしれない。慌ててアルバイト先で書籍を購入。しかしまたもふと気付く。今しがた本を購入したことで荷物が増えてしまったではないか。せっかくライブハウスでクロークなどに金を奪われないようにとアルバイト先を悪用した節約計画が頓挫しかねない。これ程までにロッカールームを行き来すれば何かしらのアリバイ工作を疑われ職務質問されるのではないかと不安にもなるが、背に腹はかえられぬ。この日何度目かの警備員とすれ違いロッカーに買ったばかりの本を預け、また警備員に挨拶をする。しかし、やはり疑われることはない。いよいよ警備員が名ばかりに思い始めたところで三度街へ繰り出した。
 そしてライブ終わり。就業時間を終えた労働者がぞろぞろとロッカーに戻る時間帯に、明らかなライブ帰りの格好でまたロッカーに戻る。まだ同じ警備員が立っていれば流石に顔も覚えられていそうではあるが、幸いにも警備員は交代していた。何食わぬ私服姿でロッカールームに潜入。持ち歩けば嵩張る上にシワがつくことを考慮してスーツを羽織り、私服をまたリュックサックに詰め込んで警備員と挨拶する。日を通して行われたロッカールームへの往復運動を知ってか知らないでか、何の疑いもなく寄せられた「お疲れ様です」の言葉が滑稽に聞こえる。
 かくして私の慌ただしい一日は幕を閉じた。さてここで問題。

①この日、私は警備員と何回すれ違った?
②この日、私は何回服を着替えた?
③この目紛しい着替えの連続に意味はあるのか?

 ちなみに正解者には何も贈与されない。その上、考えるのも億劫になってきたので答えは割愛する。