チケット入手
の続きです。

いよいよ7月10日コンサートの日がやってきました。

電車の遅延などが恐ろしくて、いつもより相当早めに
サントリーホールに到着。

当時は近くでお茶をするなんて発想もお金もなかったので
ホールの近くをウロウロ。

開場時の名物オルゴールの音も全く耳に入らず会場へ・・

入った途端、異常にものものしい雰囲気に気づきました。

何だか通路の1メートルおきくらいにSPのような
およそサントリーホールには似つかわしくない目つきの
鋭い男達が立っているのです。

バーンスタインだからってこんなに警備するのか?と
友人と耳打ちしあいました。

その理由は、開演と同時に分かりました。

バーンスタインが現れる前になぜか客席側にスポットライトが
あたり拍手がおきました。

そこで入場されたのが何と天皇皇后両陛下。

ものものしい警備はそのためだったのです。


そして、ついにバーンスタインが登場。

登場シーンはあまり覚えていませんが、思ったより
小柄だったという記憶があります。

前プロのブリテンはあまり知らない曲だし印象に
残っていません。

中プロはバーンスタイン自作自演の
ウエストサイド物語よりシンフォニックダンスの
予定でした。

ところが当日バーンスタインの体調不良の
ため代わりに大植英次が指揮するとのアナウンスが
ありました。

これはかなり残念でしたが、バーンスタイン自身が
かつて往年の名指揮者ブルーノ・ワルターの代役で
ニューヨーク・フィルを指揮し一躍有名になった
ことを知っているものとしては彼が決めたことなら
やむを得ないと思いました。

ところがそうは思わない観客もいたいようで
終演後一騒動あったようです。

私はその騒動は見ていませんが、次の日の社会面に
かなり大きく取り上げられていました。

さて、大植氏の演奏ですが、当時は全くの無名と
言ってよい存在でしたので、私もあまり期待は
していませんでした。

しかし、バーンスタインの代役だというプレッシャーなど
まったく感じさせない溌剌とした名演でした。

ご存知の通り大植さんは、その後、
ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の
首席指揮者、朝比奈隆氏の後任として大阪フィルハーモニー
交響楽団音楽監督と大活躍をします。

今思えば、その未来を予感させる演奏だったように
思います。

つづく


$ITコンサルタントが書いたクラシック音楽の楽しみ-バーンスタインサイン
昨年、六本木男声合唱団のサントリーホール公演時に
楽屋で撮影した私が行ったコンサート時のバーンスタインのサイン
(上はラファエル・クーベリック、右上はセルジュ・チェリビダッケ、右は小澤征爾さん)
マーラー 交響曲第1番「巨人」
ヴァレリー・ゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団


久しぶりに山野楽器銀座店に行き購入。
ちなみにお店は小澤征爾さんの75歳記念で小澤さんのCDが一杯でした。

さて、ゲルギエフのマーラーですが全体的に隙ない何となくの部分が
ない緻密演奏です。それでいて音楽の豊かさや流れが全く失われない
ところが彼とオケの非凡さを証明しています。

1楽章の出だしは弦楽器のフラジオで始まります。
フラジオは弦を指で押さえないで軽く触って音を出す奏法です。

ゲルギエフの演奏ではコントラバスの実音の音がはっきり聴こえます。

あれ?と思いスコアを見直してみると実はコントラバスは3声に
分かれていて上の2声はフラジオ、下の1声のみが実音のD音になっています。

しかも、フラジオのパートはすべてpppですが、実音のみppの指定。
さらにマーラーはご丁寧様に
 「指揮者への注意:この最も低いDはppだが非常にはっきり聞き
 とれなければならない」
との注釈があります。

ゲルギエフの演奏はそれを忠実に守っていたわけです。
ただ単に守っているだけでなく、それを説得力があるものにまで
昇華しているところがこの演奏のすばらしいところです。

この箇所も実音を豊かに響かせることによってフラジオの輝かしい
響きがよくいきてきますし、遠くに響くバンダのトランペットの音も
印象深いものになっています。


緻密な演奏の中にもロシア出身らしいロマンチックな箇所も顔を
出します。

2楽章のトリオのゆったりしたテンポや甘い歌わせ方は正に
それが現れています。
これはやりすぎると全体のバランスを失いかねませんが、
ロンドン交響楽団の透明感あるサウンドが絶妙にこのバランスを
維持しています。

3楽章はゲルギエフの構成力とロンドン交響楽団のアンサンブル能力が
見事に調和しています。

3楽章では、出だしからオーボエのメロディーがでる箇所まで
クレッシェンドをしないようにとマーラーは指示しています。

コントラバスのソロから始まって徐々に楽器が増えていくように
なっているのでこの指示は非常に難しいところですが、絶妙な
ハーモニーで曲が進行して行きます。

4楽章はロンドン交響楽団のブラスのよさが最大限に発揮されます。
もう少しドラマチックな演奏を予想していましたが、どちらかというと
それまでの楽章と同じく丁寧に音楽を創っていっている感じです。

ゲルギエフとロンドン交響楽団のうまさが堪能できる1枚です。


バーンスタイン来日の続きです。

無事大学に合格した春、いよいよ、バーンスタインの来日公演の
詳細が発表されました。

東京公演はサントリーホールとオーチャードホール他で
ロンドン交響楽団との曲目は、
 ブルックナー 交響曲第9番
のプログラムと
 ブリテン 4つの海の間奏曲
 バーンスタイン 「ウエストサイド物語」よりシンフォニック・ダンス
 ベートーヴェン 交響曲第7番
の二つ。

当時はあまりブルックナーのことがわからなかったし、バーンスタインの
自作自演が聴けるということで後半のプログラムを選ぶことに。

その頃、チケットの入手と言えばチケットぴあなどに電話するのが
一般的でした。

ポピュラーミュージックの世界では発売日には電話パンクし、
リダイヤル用のツールまで販売されていました。

クラシック音楽はそこまですごくなくても、数年前にカラヤンが
来日したときは同じような状況になり発売後、数分で完売したので
バーンスタインも同様のことが起きると予想されました。

かなり緊張しながら当日の販売時間を迎えました。

ラッキーなことに最初の数回のコールで繋がりました。

少し震えた声でS席2枚(もう1枚は高校からの友人の分)を
オペレーターに伝えたことを覚えています。

後から聴いた所によると、やはり数分で完売したようで、
私はかなり運がよかったようです。

ちなみに都市伝説として地方からの方がチケットぴあの
電話がつながりやすいというのがありました。

私は茨城からかけたので、もしかすると多少影響が
あったのかもしれません・・・

入手したチケットは、1990年7月10日のサントリーホール公演でした。