2020年3月9日、宇宙ベンチャー企業ICEYEは、自社のSAR衛星で撮像したリモートセンシング画像を活用して動画化する実証実験に成功したとプレスリリリースで報じた(https://www.iceye.com/press/press-releases/iceye-demonstrates-sar-video-capability-from-current-sar-satellite-constellation

 

 

実は、世界において小型レーダー衛星を手がける企業はまだそれほど多くはない。ICEYE以外にもCapella、XpressSAR、Umbra Labが挙げられる。日本でも、NEC、QPS研究所、Synspectiveが小型レーダー衛星を手掛けており、NEC、QPS研究所は、すでに自社衛星の打ち上げに成功している。この小型レーダー衛星の領域では、日本でも衛星開発やビジネス化に向けたスケジュールがそれほど遅れをとっていない領域の一つと言えるかもしれない。

この小型衛星は、100kg級の重量の衛星開発が各社の競争指標になっており、これくらい軽量でも、姿勢制御系がしっかりと制御され、画像の撮影にブレが生じないなどが各社の競争となっているようだ。

 

 

では、ICEYEをご存知だろうか。

フィンランドに拠点を置く、宇宙ベンチャー企業だ。2014年に設立されたAalto大学からスピンオフした合成開口レーダーを専門としている。現時点でアーリーステージのベンチャー企業で、総額約65億円の資金調達に成功しているようだ。Owlerというサイトによると既に1億円程度の売り上げにも成功しているようだ。

 

今回のニュースのポイントは何だろうか。

一度、ICEYEが発表しているYoutube動画をご覧いただきたい(https://www.youtube.com/watch?time_continue=66&v=0Asd7Wq91gM&feature=emb_title)。

リモートセンシング衛星は、LEOと呼ばれる低軌道を周回しており、もちろん軌道にも依存するが、例えば、おおよそ地球を約90分程度かけて回っている。また、地球から見ると、リモートセンシング衛星は、数分程度しか上空にはいない。つまり、すぐに通過してしまうので、地球上の定点を長時間撮影するのに適していないのだ。

 

しかし、すでにリモートセンシング衛星の光学衛星と呼ばれる分野では、動画化がすでに始まっている。例えば、以前Googleの参加であったSkybox Imagingが発表した衛星からの動画撮影は衝撃であった。Satellite Imagingは、Jilin-1 Smart Video Satellites という4K動画撮影衛星を打ち上げている。

 

今回のニュースは、SAR衛星という点がポイントなのだ。ICEYEは、現状10機以上のコンステレーションを計画しており、それを多くの衛星を連続的に活用して動画を作成するようだ。SAR衛星は、夜間でも天候でも地球を撮影することが可能となるので、リアルタイムで災害状況を動的に監視することが可能になる。しかも、光学では捉えられない夜間の物体の動きも同様となる。筆者がパッと思いつくだけでも、災害、軍事、安全保障等には非常に重宝されそうなサービスだ。

 

また新しい取り組みが始まった。これからSAR衛星動画サービスは、どのようなビジネス展開をするのか楽しみだ!

 

 

 

 (出典: ICEYE)