「ちいさいおうち」は、家をつくろう!の原点ともいえます。
この絵本は家をつくるうえで大切なことを伝えていると思うことと同時に、私自身幼稚園のころに親しんだことのある絵本でもあります。余談ですが、アメリカで発行された1942年※から63年も経た現在、最も読まれている絵本ではないでしょうか。
※日本では1954年に発表されています。
だれでも知っているお話なのですが、とても奥深く描かれているのですよ。
いまのまちの風景が変わっていると気づくことがある方もいるでしょう。
このようにまちの風景が変わってゆくことが、
本当によいことなのでしょうか。ちょっと難しいですね。
でも、にんげんが暮らす中で、たぶん一番大切なものは何か?
ということを考えるきっかけになる本ではないでしょうか。
私自身そんなことは思わず、まちが変わって、おうちが楽しそうに自然と会話しているなあ、と思うだけだったかもしれません。
はじめて読んだ(読んでもらった)時には意識していませんでしたが、絵本としては話が長いにもかかわらず、絵の雰囲気や場面を子どもが直感的にわかるような作風はさすがです。
太陽に顔があるのもこの絵本で初めて出会ったのではないでしょうか。
太陽が昇り沈むまでの太陽の顔の変化、月の満ち欠けによる1カ月の長さ、季節によって風景の変化する1年の表現は時間を感じさせていました。その時間はもっと長く表現されてゆきますが、風景の中の人の営みと変化を静止画で興味深くさせます。
「いえつく」では、住まいの季節や、住まう場所などの条件が、どのように住まいに関わっているのかを学び考えることをしますが、家の一生を考えることも取り入れたいですね。
※追記2020/2
ボストンのちいさな港町グロスターにはケープアン美術館があり、ヴァージニア・リー・バートンのコーナーがあります。
ちいさいおうちが実際に中に入れるようにつくられているようです。
ちいさいおうち
The LittleHouse:1942年
Virginia Lee Burton:1909-1968
石井桃子(いしいももこ):1907-2008
ヴァージニア・リー・バートンさんは、絵画教室からフォリーコーブ・デザイナーズを立ち上げ、暮らしの中にデザインをくわえる活動を行いました。彼女の作品は「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」や「ちいさいケーブルカーのメーベル」など、一度は見たことがある人は多くいるのではないでしょうか。
石井桃子さんは、埼玉県北足立郡浦和町(後の浦和市、現:さいたま市)常盤生まれ。日本女子大学を卒業してから文芸春秋社、新潮社などの出版社へ勤めながら翻訳や出版をしました。仕事で知り合った犬養健(犬養毅の三男)と親しくなり、信濃町の犬養家の書庫整理に従事犬養家でクリスマスイブに「プー横丁にたった家」の原書"The House at Pooh Corner"(西園寺公一から犬養の子どもたち、道子と康彦へのプレゼントでした)と出会い、感銘を受け、道子や康彦や病床の※小里文子のために少しずつ訳し始めました。食糧難から宮城県栗原郡鶯沢村(現在の栗原市)で友人と共に開墾し、農業・酪農を始めますが、酪農組合の資金難により断念して上京し、岩波書店で「岩波少年文庫」の企画編集に携わります。「ノンちゃん雲に乗る」が第1回芸術選奨文部大臣賞を受け、ベストセラーとなり、映画化にもなりました。荻窪の自宅の一室に児童図書室「かつら文庫」を開き、現在の図書館の児童書コーナーや地域文庫などの普及のきっかけをつくり、東京子ども図書館を設立しています。
※おり ふみこ。石井の大学時代の先輩で文藝春秋社の元同僚。
#けんちくキッズ