「小池氏、新党も市場も「アウフヘーベン」 それって何?」 | The Wuchang's blog

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ドイツ語、些かたしなむので・・・記事にしようと思ったら、「朝日新聞デジタルニュース」に解説?でていたので、転載します。

 

 

田玉恵美

2017年9月27日03時01分:

 小池百合子・東京都知事は最近、「アウフヘーベン」という言葉を多用する。衆院選に向けた新党結成でも、築地か豊洲かで揺れた市場移転問題でも「アウフヘーベン」しているらしい。それって何?

 

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 「希望の党」結成と代表就任を発表した25日の記者会見。若狭勝氏や細野豪志氏ら複数の国会議員が動く中、今後、小池氏自ら新党をめぐる調整や交渉に乗り出すのか問われると、「アウフヘーベンする。辞書で調べてください」。

 

 築地か、豊洲か、市場移転で知事の判断に注目が集まった6月にも、「文芸春秋」7月号で、「築地市場の改修案も市場問題PT(プロジェクトチーム)から出され、百花繚乱(ひゃっかりょうらん)の様相を呈しているが、ここはアウフヘーベンすることだ」。この直後の会見で、アウフヘーベンを使った意図や意味を問われると、「いったん立ち止まって、より上の次元にという、日本語で『止揚』という言葉で表現されます」と説明。市場移転をめぐる様々な調査や報告書が出たことを挙げ、「全部含めてどう判断するか、そのための『アウフヘーベン』が必要だということを申し上げた」。

 

 アウフヘーベンはドイツ語らしい。ドイツ大使館にローベルト・フォン・リムシャ公使を訪ねた。公使によると、「小池氏は哲学者ヘーゲルが提唱した『止揚』の意味で使ったのだと思うが、そうした使い方は一般のドイツ人はあまりしない」のだという。

 

 ログイン前の続きドイツ語の一般的な意味は「持ち上げる」。「それ取って」と言う時に、「アウフヘーベンして」と、ドイツ人なら日常的に使う言葉だという。小池氏がアウフヘーベンを使ったことは、大使館の幹部会議でも話題になったといい、リムシャ公使は「日本人が使うドイツ語といえば、『リュックサック』くらいかと思っていた。日本の著名な政治家にドイツ語を使って頂き、光栄です」。

 

 小池氏のように、政治判断を迫られた政治家が似たような場面で使うのか聞くと、リムシャ公使は「あまりに月並みな言葉なので、印象にも残らないのです」。

 

 移転問題は結局、「築地は守る、豊洲を活(い)かす」で決着した。「アウフヘーベン」の結果といえるのか。ヘーゲルに詳しい大河内泰樹・一橋大教授(哲学)は「違和感がある」という。

 

 アウフヘーベンは、1812年の主著「大論理学」でヘーゲルが使った概念で、否定によって高い段階に進むが、否定されたものが取り込まれて残っている状態のことを指すという。大河内教授は「花が枯れて種ができる。花だった時の姿は否定されているが、結果的に種の中に花の要素がとどまっているというイメージ」。だが、小池氏の場合、「築地や豊洲を否定した形跡がなく、いわば足して2で割っただけ。政治的に複雑な問題をあいまいにするために、難しい専門用語を使っているのではないでしょうか」。

 

 小池氏は、ほかにも「ワイズ・スペンディング(賢い支出)」「パラダイム・シフト(社会規範や価値観が変わること)」「ホイッスルブロワー(公益通報者)」「メルクマール(指標)」「スプリングボード(踏み切り板)」などのカタカナ言葉をよく使う。

 

 アウフヘーベンやメルクマールは、かつて旧制高校や旧帝大に通っていたエリート意識の高い若者たちが好んで使った典型的な言葉だ、と江利川春雄・和歌山大教授(英語教育史)は指摘する。「小池氏は高尚なイメージを演出する戦略なのだろう。だが国政政党を率いる以上、地方の有権者も視野に入れ、誰にでもわかる言葉で語らなければならない局面に入っていくのではないか」(田玉恵美)