乳頭温泉
で、今日の宿を求めて1軒目の温泉旅館に飛び込んだ。
中からおやじが出てきて、「今日は宿泊は無理」と言った。
そういうことも、あるだろうと静かにその旅館を出た。
2軒目の温泉旅館に向かうと、今度は外におやじがいて
「大丈夫ですよ。中で受付して下さい。」との暖かい言葉。
ありがたい。
そこは、本当に落ち着ける山深い温泉宿らしい館内だった。
部屋に入って、落ち着いた。お茶を飲む。
しばらくして、少し違和感が。
そう、その旅館の部屋にはTVも冷蔵庫もないのだった。
ただ、川のせせらぎがいつまでも続いているだけ。
別にTVを見るために、ここに来たわけじゃないし、ゆっくり本が読める。
夕食前に、温泉を試す。全国に名だたる名湯はどんなものか。
赤茶色のにごった湯。混浴もある。
夕食。ビールを注文する。
これくらいの量で満腹するようになった。
もう若くは無いのだ、当たり前だ。
部屋に戻って、田沢湖で購入した秋田の地酒を飲みながら、本を読む。
翌朝、6時過ぎに起きて、温泉に直行した。
朝湯ほどいいものは他にない、と思わせてくれた。
至福とはこういうことか。
朝日が輝いている。
木の壁に水面で反射した光の布が
ゆらりゆらりと形を変えながら、一つ所に留まっていた。
今日は、のんびり各駅停車で秋田から青森まで行くつもりだった。
その道中で目の当たりにすることになる、
美しく、大きく、鮮やかな独立峰のコニーデのことなど、
まだ全く頭の中に存在していなかった。
