こんにちは、こんばんは、そしておはようございます。

今日も特筆するようなことはしていませんが、美味しいラーメンを食べに行きました。チャーシュー麺食べました。自覚があるのですが私は自分の体質的に合っていないものほど好きなんです。麺類やお肉、クリームやチーズ、チョコ。大好きです。小麦粉やお肉はそこまで肌荒れしたりはしないのですが、チョコレートは影響がてきめんに出ます。頭は痛くなるし、肌は荒れまくり。チョコレート大好きなので辛いです。昔は毎日のように食べていましたが頭痛の原因がチョコだとわかってからはあまり食べていません。食べないことに慣れてしまうと案外平気なもんです。

 

それはそうと今日の本題。ずっと読みたかった本、江戸川乱歩の「孤島の鬼」を読み終わりました!大学のミステリー小説論の教授が「江戸川乱歩にしては長編で成功した作品だ」と褒めていました。ちくま文庫の江戸川乱歩集のような本は読んだのですが確かに短編の方がイメージが強いですね。きっとまだ読んでいない短編たくさんあるのでしょうが、この短編集はとても読みやすかったのでおすすめです。

 

 

さて、あらすじをざっくりお話したいと思います。

主人公の蓑浦は職場先で初代という女性と恋に落ち、まだ若い自分たちにとって結婚は程遠いものだと思いながらも子供の指切りのように指輪を送る。初代はそれはそれは喜び、自分に何か返せるようなものはないかと思い悩む。そして彼女が蓑浦に預けたものは彼女の顔も知らぬ本当の親との唯一の繋がりである系図書きであった。そんな二人だけの婚姻の贈り物をした矢先、蓑浦では太刀打ちできないような立派な青年が、初代に熱心に求婚し始めます。その青年はなんとかつて蓑浦に恋愛感情の矛先を向けた諸戸道雄であった。かつて自分に報われない恋の言葉を囁いた彼が、どうして初代に求婚をするのだろうか。女性が嫌いでたまらないと言い自分を好いていた彼が。しかし初代は一見好青年の諸戸にはなびかず「気味の悪い老人を見かけた」と蓑浦に話すが、彼は真剣に取り合わなかったのである。それが永遠の後悔を生むとも知らずに。

 

 その日も蓑浦と初代は銀座で飲み歩き、お互いの帰路に着いた。しかし初代と彼女の母が住む家に何者かが忍び込み、初代は無残に殺されてしまう。蓑浦は激しい悲しみに陥るが、やがてその感情は犯人への復讐心に変わる。彼は知り合いの深山木に事件の経緯を話し、調査を依頼する。しかし、蓑浦が思考を巡らし自ら出向いて調べに行く先々には諸戸の姿が見え隠れする。しかし事の真相が掴めないまま深山木は不審死により二人目の犠牲者となってしまう。

  

 蓑浦はついに、諸戸に会いに行った。彼は蓑浦の訪問をひどく喜んだが、蓑浦は彼犯人だとする疑心が抑えきれずついには泣いて諸戸を責めるのであった。しかし諸戸は自分が犯人なのではなく、いわば探偵なのだと打ち明ける。聡明な諸戸の推理と、この事件に深く関係のある彼の身の上話を聞くうちに蓑浦はすっかり彼を疑うことなど忘れたのであった。そして、初代と深山木を殺した犯人を突き止め、初代から託された系図書きの秘密を明かすため数奇な関係で結ばれた諸戸の生まれ故郷に向かうのであった。

 

 もはやあらすじではなくなってしまいました。こうやってブログで書くときに難しさってどこまで説明すればいいかわからないとことなのですよね。一応読んでくれる人のことを意識しながら書いているのですが、これから自分の感想を詳しく語るときにあらすじがあまりにも少なすぎると何を言っているかわからなくなってしまいますよね。

 

 とりあえず、オチを説明するのがとても難しいのであらすじはこの辺りでやめておこうかと思います。最後まで読んで気づいたのですが、この「孤島の鬼」の要素を取り入れた映像作品を見たことがありました。その作品は諸戸と蓑浦が、諸戸の生まれた島に着いてからの後半部分の要素を取り入れて作っていました。

 

江戸川乱歩の作品で同性愛を取り扱うものはそう多くはないそうです。オチまで簡単に説明してしまうと、諸戸の父親は「片輪者(体の一部が欠損していたりする人。ここでは差別用語ではなくあくまで乱歩の表現方法に合わせています)」を実験や手術によって故意に生み出し、世の中を「片輪者」で支配しようとする歪んだ考えの持ち主でした。諸戸は父親に監禁されたりしつつもなんとか脱出し、蓑浦とともに系図書きの秘密を解き明かし己の出生の秘密も知ります。諸戸と父親にはなんの繋がりもなく、実の子供と同じくらいの年齢の男の子攫ってきただけだったのです。諸戸が育った島に幽閉されていた、実験でシャム双生児にされた美しい女性と蓑浦は結婚し系図書きに示されていた宝は真の相続者である彼女の手に渡ります。蓑浦と彼女はその宝で、諸戸の(元)父親が故意に生み出した片輪者の人たちが幸せに暮らせるような施設を作ります。隣には病院を作り、なるべく体を五体満足な姿に戻せるように、外科の知識がある諸戸の力を借りようとします。しかし、諸戸は実の両親を訪ねた先で死んでしまいます。最後まで蓑浦が書いた手紙を握りしめ、蓑浦の名前を何度も呼びながら。

 

 

 というラスト。えっっっっっっっ諸戸死んじゃうの??????死んじゃうんです。しかも割とあっさり。作中でも描写があるのですが、諸戸は非常に聡明で好青年なんですね。そんな諸戸が唯一手にできなかったものが愛なんですね…

蓑浦は諸戸の好意をはっきりと拒否したことはありません。それどころか聡明で容姿端麗(そこまでは言ってなかったかも)な男性が自分の世話を焼いてくれ、友人以上の気持ちを込めて手を握られることにある種の心地よさを感じていたほどです。諸戸の方も度々気持ちが抑えられなくなることはありつつも、自分の片思いで良いから友情の気持ちだけでも受け入れてくれと泣いて呟くほどです。自分の気持ちが報われないことも、箕浦が振り向いてくれる可能性がないことをわかっていていながら蓑浦の惚気話を聞く諸戸の気持ちは如何程か。

 

 蓑浦はずるいですね、ずるいと言うか小悪魔的な。深山木もそうであったように、自分は同性から気に入られるか好かれる魅力があることを自覚しています。それを振りかざして人を使ったりはしませんがそれがまた小悪魔的なのです。

 

 系図書きの秘密を解き明かし、宝を手にいれるため地下洞窟に二人は入るのですが来た道と出口がわからなくなってしまいます。何かにつけて諸戸の胸にすがりつくんですよ、蓑浦(描写から察するに諸戸はガタイが良さげ)。きっと諸戸は命の危機を感じながらも嬉しかったに違いありません。もう絶対出られないと諦めたとき(実際は助かるのですが)諸戸は「この別世界に君と二人きりにしてくれた神様がありがたい」と言います。それで半ば正気を失って蓑浦に襲いかかるわけですが、蓑浦はとても怖がってめちゃくちゃ拒絶するのですね。そういう志向がないので致し方ない反応ではありますが、あれだけ洞窟の中で頼って、抱きついて。諸戸が浮かばれない気もします。

 

最後諸戸は死んでしまいますが、最後の最後まで片思いですよね。ギリギリのところで蓑浦が駆けつけ「僕も好きですよ」と幸せな嘘で報われることもないのです。切ない。

 

余談ですが蓑浦は諸戸に対して敬語です。「孤島の鬼」は終始蓑浦の視点から語られた物語なのですが、自らの容姿について「私の滑らかな頬に少年の面影が失せなかったにしろ、私の筋肉が世の大人達のように発達せず、婦女子の如く艶やかであったにもしろ」と語っています。要するに線の細い美少年だった訳ですね。尊い。

 

そんなこんなで本編というより、諸戸の人生の切なさにフォーカスしてしまいましたが「孤島の鬼」長すぎずあっという間に読めました。後半の内容が少し重苦しいですがぜひ読んで見てください。